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廃神様と女神様Lv1  作者: 井口亮
第2部『二つの太陽編』
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みんなの肉便器ちゃん6歳待ったなし

 「おい、肉便器」

 「お願いです、マスター、本当にお願いです。どうか、どうかそれだけは」


 最早戦女神とかそんな何もかもを投げ捨てて土下座するチュートリア大先生が俺を寝させてくれません。

 夜通し防衛戦やって朝方にちょろっと寝ようと思って宿屋の一室を借りたらこの始末ですよ。

 このゲーム、ファミルラの頃からそうなのだが長時間プレイしていると明らかにIRIAのスペックが落ちてくる。

 直接操作をしていれば問題は無いのだがMPの最大値が目に見えて減っていくので適度な休憩を取らせなければならない。

 俺が検証した結果で公にはしてない公然の非公然で実は、きちんと休息をとらせないと状態異常耐性も減ってしまうから大変。

 まあ、後者は色々と対策を講じれる訳ですが。

 それはともかくとして睡魔には当然のように襲われる訳で、しっかり睡眠を取ろうとして宿屋にやってきた訳です。

 マビノギだとかだと変身して腹満たしたり、夜通し放置したりしてたけどよっくよく考えてみると自分の身に置き換えるとブラック企業が裸足で逃げ出す所業だよね。

 レベリングや色んな意味で睡眠やきちんとした生活リズムは大事なので俺はそそくさと寝ようとしたんですよ。

 だけどね、もう、ね。

 この子が非常に五月蠅い。


 「いや、寝るっつってんだろ肉便器。話は後にしろよ」

 「いやぁぁ!それだけはいやぁぁ!!お願い!マスター!せめて別の名前!別の名前にしてー!」

 「俺が一度決めたこと変えたことある?しかも、こんな面白そうなこと」

 「ですよねー!ですよねー!だけど――ぎゃだぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ぎゃー、といやだー、が一緒になって酷い珍獣の叫びと化している。


 ――珍獣肉便器ちゃん6歳の産声である。


 俺がそんな感傷を胸に抱きながら寝ようとした。

 昼過ぎには起きて色々とやることがある。


 「マスター言ってましたよね?この機会に必ず成功させるって!」

 「ああ、言ったような気がするね。だけど今眠い」

 「マスターにその気が全く無いじゃないですかーっ!何で私の名前を弄ることになった途端にやる気なくしちゃうんですかーっ!危ない思いして空を飛んできた意味が無いじゃないですかーっ!」

 「いや、俺がいくらやる気を出しても本当にやる気を出さなきゃいけない肉便器がやる気ださないわけでね?もう面倒だからいいかなって。リネームチケットあとで買っておかな」

 「一度決めたこと簡単にやめちゃってるじゃないですかーっ!」

 「それはそれ、これはこれ」


 大きな欠伸をかみ殺し、ケツをぼりぼりと掻きながら俺は背中を向ける。


 「が、がんばりますっ!がんばりますからっ!」

 「がんばるっつってそれ、昨日も言ったやん?がんばれなかった訳で俺は一体君の何を信じてあげればいいのん?いつかはできる?それっていつー?俺の世界に『明日から頑張る』って名言あるんねやけど、それを言ってる奴って冗談が八割の残り二割は明日から頑張れない人達やで。頑張る人達は現在進行形で頑張ってる訳ですしおすし」

 「あう……あうあう……」


 言葉を無くして座り込み絶望に染まったチュートリアが首を左右に振る。


 「でも……でも……」

 「ああ、ちなみにな?肉便器ちゃん6歳って名前に変えて、次の防衛戦でもダメだったら全裸な?人間以下の畜生にお洋服なんてもったいないだろ?さらに次の防衛戦でもダメだったら『一回1万ジル』の看板背負わせるから。一万ジルって一マン汁って読むと凄い卑猥よね?」

 「そんな!そんな看板掲げて全裸で歩き回ってたら変態じゃないですかっ!」

 「ええやん。俺の世界じゃほめ言葉やで。まあ、この場合、変態っていうよりゴミだな。生ゴミ。正直、俺も近寄りたくないから気安く話しかけるなよ」

 「いやぁぁぁあああああっ!」


 発狂間近なチュートリア。

 割と褒めて伸ばすタイプな俺としては珍しいが自発性の無い子にゃこれが一番。

 まあ、ぶっちゃけ俺が全裸になったり看板掲げる訳じゃないからどうでもいいんですが。


 「絶対っ!絶対にそれだけはいやぁぁっ!――どうすれば――そう、石を拾えばいいんですよねっ!?よねっ!?石を拾ってもポイントになるからっ!」

 「まあ、ぶっちゃけると赤い竜が居る時点で結構お察しな状況ではあるがぬ」

 「赤い竜さんが居るとダメなんですかっ!?」

 「だって、あいつ敵叩いて1位とっちゃうだろ?シルフィリスだってそのあたり躊躇しねえだろうし。俺が3位譲ってやったとしても石拾いオンリーだとちょっと難しいんじゃねえか?」

 「な、なんで難しいんですかっ!?き、昨日は石を拾えば大丈夫だって……」

 「各襲撃フェーズに現れる敵の数って決まってんだよ。その敵を全部倒したら次の襲撃フェーズに移行してぱっぱっぱっぱと終わっちまう。赤い竜がガッツガツ敵を倒しちまうと石を拾ってる時間ってのが少なくなるんだ。当然、石を拾う時間が少なくなれば少なくなるほど石で稼げるポイントは減るわな。そうなると石拾いのリザルトランクインってのが極端に難しくなっちまう」

 「なら、誰かが敵をトレインして――あ、だからマスターは……」


 ここに来てようやく俺の意図を理解してくれたようですが、時は最早既に遅し。

 チュートリアちゃんは全てを察して、そして、顔を真っ青にする。


 「じゃあ赤い竜さんが居る限り私のランクインって絶望的!?」

 「だから言ったろうに……あーだこうだと足掻くくらいならグッスリ寝てゲームを楽しんだ方が幾分マシだと。隣寝るか?えっちい悪戯しちゃるぞ?肉便器」


 俺がぽんぽんとベッドを叩いて誘ってあげるとチュートリアちゃんはへなへなとその場に崩れ落ちる。

 まあ、気持ちはわからんでもない。

 どう足掻いても絶望的な状況というのは現実でもゲームでも結構あったりする。


 「あぅ……あうあう……あうあああ……」


 そういう場合は諦めてさっさと次に繋げるのが精神的に安定です。

 俺は大きな欠伸を噛み殺し、起き上がるとジャケットに袖を通してのろのろとグリーヴをはく。

 なんだかここに居てもチュートリアがやかましくて眠れそうに無い。

 それっくらいなら外で竜車を出してそこで寝た方が幾分マシかというもの。


 ――流石に強行軍から今日まで深夜営業で体が疲れた。


 スタミナの低下と共に疲労を感じるこの仕様には大分慣れてしまったとはいえどこか自分の体の感覚を忘れてしまいそうで怖い。

 俺はのろのろと部屋を出ようとすると背後でチュートリアが俺のシャツを掴んだ。


 「……マスター……私に教えて下さい」


 どこか底冷えする声でチュートリアが俺に尋ねた。


 「なにを」

 「……この状況で、私が……リザルトボードに名を刻む方法を」


 どこか覚悟の決まった瞳で俺を見上げるチュートリアに俺はふむ、と頷く。

 どうやらここにきて覚悟が定まったようだ。


 「ふむ、なら教えようか」


 俺は淡々と告げてやった。


 「俺のようにやれることを全てやれ――そして、石を愛せ」


 ◇◆◇◆◇◆


 チュートリアのにっき


 れいせきれいせきれいせきぃぃぃぃぃぁぁあああああああああああああん!

 あぁあああっ!ああ!あっあっー!あぁあああああああ!!いしいしいしぃぃぃぃわぁぁぁあああ!

 とぅるとるー!とるっとるー!ぴっかぴかだよぉぉぉ!こしこし!

 はぁぁああ!はぁぁ!みずいろのれいせきたんにこしこししたいにょー!

 まちがえた!とぅるとぅるしたいお!こしこし!こしこし!いしいしとぅるっとるー!きゅきゅきゅんきゅるるぃぃぃ!

 くんかくんか!くんかくんか!すーはーすーはー!まちがえた!はすはす!はすはす!

 いしいしいしいしいし!あぁぁぁ!あああ!とどけ!わたしのあい!あすとらにあるせいれいせきへとどけー!

 いしがひろえるよよかったねわたし!ぼーえいせんでいしがおちてるよ!いっぱい?いっぱいおちてるよぉぉぉ!

 いしでごはんがたべられる!ぱん10こはたべられる!いしでむねのおくがきゅんきゅんしちゃうのー!

 はぁはぁ!はぁはぁぁぁぁ!はぁああああんああぁん!

 いま、わたしさいっこーにいしひろいん!ぺろぺろ☆


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