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第四話  「『ルート』――――今生の世界線」


「『今生の世界線』?」


「うん。ボクも含めて、君たち人間はこの世界で人生を送っているけど、それは…………おそらく、これからの話すボクの話は、受け入れにくく、とても信じられないことかもしれないけど、実はボクら人間は……『ある理由』で創られ、生かされているそうなんだ」

「えっ?」


 サクラちゃんは、さっきも、にわかには信じられない「トンデモ話」をしていたけど、この「ルート」の話は、それより、さらに上を行った。


「どういう……こと?」

「ボ……ボクもよくは知らない。でも、これは君の『守護霊』……『ガイドさん』が言っていたことなんだ。だから、ボクも詳しくはわからない。でも、わかっていることは、n人間は、『ある理由』で創られ、生かされているということらしいんだ」

「『ある理由』……?」

「うん。そして……さらにボクもまだ信じられないけど、ボクらの人生の『始まり』と『結末』は、『すでに決められている』ということらしい」

「な……そんな!……まさか……」

「ボクも……幽霊になったボクでさえも、それはいまだに信じられないし、その『ある理由』についても『理由の根本』はボクにもわからない。でも、『ガイドさん』の言っていたことは、根拠はないけど、確実的に言えるのは『ウソ』『偽り』ではないということなんだ」

「そんな……ど、どうしてサクラちゃんは、そのボクの……その『守護霊』……『ガイドさん』の言葉を『ウソ』『偽り』じゃないと言い切れるんだよ?」

「わからない……わからないけど、でも、わかるんだ。『ガイドさん』が『ウソ』『偽り』を言っていないということだけは。ボクら、人間で言うところの言葉で言うなら……『根拠の無い、でも確定的な直感』とでも言おうか、『科学的根拠はないけど、でも、結果が生じるもの』……とでも言おうか……そんな感じ」

「か……『確定的な直感』? 『科学的根拠はないけど、でも、結果が生じるもの』?」


 僕は、彼女が何を言っているのか、まるで理解できなかった。


「とりあえず、ボクから言えることは、その……何と言うか、この世には『宇宙の法則』というようなものがあって、ボクら人間だけじゃなく、その他の存在もすべて、この『宇宙の法則』に則って、人生を生きているということ」

「そして、存在するものすべての『寿命』は『すでに決められている』ということ。それを『ルート』と言うみたいなんだ」

「でも、人生は『すでに決められている』のではあるんだけど、でも、ボクらには『選択』という『自由意志』が設けられている、ということらしい」

「『自由意志』……『すでに決められている人生の中の自由意志』…………どういうこと?」

「つまり、こういうことなんだ……ボクらの人生は『すでに決められている』ということなんだけど、実はその『すでに決められている人生』というのは、あまりにも膨大なため、実際に生きている人間にとっては、それがすべて『すでに決められている』とはわからない……というより『認識』できない」

「どれだけ膨大かと言うと……それは、この世に生まれ出てくる瞬間から、次の瞬間に『オギャーと泣くのか、泣かないのか?』『呼吸をするのか、しないのか?』……そんなボクらが意識していないところまですべてが『すでに決められている』ということらしいんだ」

「ま……まさか!」

「そして、それは言い方を変えれば、ボクらは日々、瞬間、瞬間を、膨大に用意されている『すでに決められた人生』……『ルート』を『選択』して生きているということらしいんだけど……って、理解できてる?」

「ま、まあ。最初は、あまりにも突拍子過ぎて呆気に取られたけど、言っていること自体には、それなりに『理解』はしている……でも、根拠が無い以上、理解はできても、受け入れるには、ちょっと……」

「まあ、そうだろうね。実は、こうやって、さも理解しているようにしゃべっているボクだけど、実は、悠太と同じように、いまだ『受け入れ』はできていないんだ」

「幽霊なのに?」

「うん、幽霊なのに」


 と、サクラちゃんはニコッと笑って答えたが、どこか影のある笑顔だったように見えた…………気のせいか?


「でも、やっぱりそれは『確実な真実』であり、いわば『真理』のようなもので、それだけは間違いない。つまり、ボクらは日々を実は意識していないだけで、つねに『ルート』を『選択』して生きているということ……それは、まるで、毎日が迷路の中にいるようなもので、いくつもの『ゴールへと続く通路』が瞬間、瞬間、毎瞬、毎瞬と用意されているということ……そして、それがこの世の『真理』であり、『法則』ということらしいんだ」

「『法則』……か」

「そう。そして、実際にその『ルート』は存在する。ボクもまだ信じてはいない。でも、それは『法則』として確実に存在するんだ」

「それは、『根拠の無い、でも確定的な直感』ってやつ?」

「うん。そして『自殺』の原因まではまだ思い出せないけど、でも、ボクがこうして幽霊として彷徨っている理由は『自殺』によるものだった……ということだけを『ガイドさん』に『気づかされた』んだ」

「『気づかされた』……?」

「うん。わかりやすくいうと、ボクがまだ観ていない映画を、すでに映画を観た人から『ラスト』だけを教えられたような……そんな感じかな」

「あ……ああ、なるほど」


 何となく、それは理解できる。


 まあ、実際にそんなことをされたら腹が立つものだけど……でも、自分の「死の原因」「死因」であれば、それはありがたい情報だったんだろうな、と僕は何となく理解した。


「だから……それだったら、やっぱり『物語のラスト』までの『過程』も知りたいと思うじゃない?」

「まあ……そうだよな」


 そりゃ、そうだ。


 蛇の生殺しだ。


「だからボクは君の『ガイドさん』の依頼を引き受けたってわけ」

「……わかった。とりあえず納得はしていないけど、概ね、理解はしました。ということは、ボクの、その……『すでに決められている人生』『過酷な人生のルート』をサクラちゃんは『変えよう』と……『回避させよう』としているということでいいのかな?」

「そっ。そういうこと!」


 どうやら、その認識で合っているようだった。サクラちゃんは『通じた!』というような感激した表情を顔いっぱいに浮かべていた。


「じゃあ、ここで整理するね。ボクは、悠太の『過酷な人生のルート』を『回避』するために依頼されてここに来た、OK?」

「お……OK」

「うん。それで、その『ルート』を『回避』するためには、これから残りの『高校生活』の中で共に行動し、君に近づき、『助けを乞う者』から君を関わらせないようにするのがボクの仕事。だから、ボクはこれから君の家でホームステイというカタチで一緒に高校を通って、何事もなく君の『高校生活』を終わらせることが、この『ミッション』の目標ということ! つまり、そういうことー! 説明おわり!」


 と、「やっと説明が終わったー」という達成感を感じたようで、サクラはとても晴れ晴れとした満足気な笑顔でそう言い放った。しかし……、


「あの~すみません、サクラさん……」

「ん~?」


 サクラは、ニコニコしながら顔をこちらに向けた。


「……正直、まだ『外枠』しか説明できてませんけど……て言うか、今、言った中に『新しいワード』も出てきたんですが……」

「えっ? そうだっけ?」

「……」


 うーん、サクラちゃんってどこか『抜けてる』んだよな~。


「そうです。そもそも、僕がこれからどうやって『高校生活』を送ればいいのか……という話もちゃんと話していないし、わからないことだらけです」

「え~~~~~~~~無~~理~~!! ボク、もうお腹ペコペコだよ~」

「い、いやいや……これだけの説明じゃあわかりませんよ。例えば、さっき出てきた新しいワード……『助けを乞うもの』とかって何々ですか?……てゆうか、幽霊にくせに『お腹』なんて空くの?」

「空くよ~~~~! だって『実体化』したら自分の『肉体』を維持するための『栄養補給』が必要になっちゃうんだから~。人間は植物みたいに『光合成』なんてできないんだから、外からエネルギーを摂取しなきゃいけないでしょ?」

「ま、まあ……確かに」


 と、その時。


 一階から母が「朝ごはんできましたよー。サクラちゃん、悠太、早く下に降りてきなさ~い」と、サクラちゃんにとっては『絶妙のタイミング』の呼びかけが入った。


「やった~! 悠太、とりあえず『続き』は学校行く時にでも話すからさ、はやく下に降りて朝ごはん食べよ!」


 と、サクラちゃんは僕の右手を強引に掴み、駆け足で一緒に一階へ降りていった。




 説明はちゃんと終わっていないし、ほとんどわかっていないことだらけだけど、今は、そのしっかりと掴まれている『右手』にサクラちゃんのぬくもりを感じ、僕は内心ドキドキしつつ、この『小さな幸福』を今は噛みしめて楽しもう、と昨日の『フラれた傷』や『カコクな人生』の話は置いといて『いま』を目一杯味わおうと思った。


 なんとも『現金』なものだが、そこが……そんな『切り替えの早さ』が僕の良いところでもある。



 まあ、まだ「話」は、始まったばかりだ。






ご拝読ありがとうございました。


更新は不定期ではありますが、一ヶ月に2~3回投稿できればと思ってます。


今後とも、よろしくお願いいたします。


m(__)m

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