第一話 「サクラという『災厄?』は、突然やってくる」
今日、告白した。
生まれて初めて女の子に告白をした。
そして……振られた。
いとも、あっさりと。
人生なんてそんなもんだ。
女の子に告白して振られた夜、一人、部屋で「みじめ」 に枕を濡らしていた。
「人生はうまくいかないもの」
そんなのわかってる。
でも、初めての告白くらい「成功」してもいいじゃんか。
なんだよ……。
ふん!
グスッ。
なぜ……受験を控えた高三の春に、「女の子に告白」という「血迷い事」をしてしまったんだろう。「血迷い」にも程がある。僕の「血」は「人生の選択」を「迷う」程、そんなに混乱していたのだろうか?
自分の取った行動(告白)を、「血」のせいにし始めた僕は、いよいよドツボな自己否定へと陥っていた。そんな、「人生の不条理」をこの身で知った夜に……そんな夜にその「声」は聞こえてきた。
――午前二時
(ねえ……)
「ん?」
(ねえってば!)
「何か……今、声が……気のせい?」
(『木の精』じゃないよ、ボクは!)
「い……いや、僕は『気のせい』と言ったんだけど」
(んなーんだ、間違えちゃった。テヘッ)
「…………………………なんだ、今のは?!」
(だーかーらー、君、ボクの声、聞こえてるでしょ?)
「え? あ、いや……はい」
(そっ。なら、いいの。でね、いきなりだけど提案がありまーす!)
「や……やけにノリが軽いな」
実際、周囲には誰もいないはずなのに「声」がはっきりと聞こえ、しかも僕に語りかけてくるという「異常な状況」で
あったのだが…………何と言うか、この「声」の「軽いノリ」の「おかげ?」で僕は特に怖がることもなく、普通に受け入れられ、話をすることができた。
(もし、君がボクの『願い』を叶えてくれるなら、君にとって『良い事』をしてあげるけど……どうだい?)
「『良い事』?」
(そっ。『良い事』)
「はあ……何かわからないですけど、別にいいですよ。どうせ、今日は女の子に告白して振られちゃったし、ボクなんて、しょせん、どうしようもない男ですから。こんなミジメなボクでも、君の役に立つのなら良いですよ」
(ホント? わーい、ありがとう! んじゃ、いくね!)
「ん?……いく?」
すると、僕の目の前に、白く光った『光の珠』が現れた。ソレは、ユラユラと動き、だんだん、カタチが変わっていった。そして、それが僕と同じくらいの大きさになり、「人」のカタチをした物体へと変化していった。
すると……その時!
その物体は、僕めがけて「入り込んで」きた。
「う……うわ!」
ドサッ!
僕は、気を失った。
(おーい)
「んー……」
(おーいってば!)
「んん……何……リカか? 兄ちゃん、今日はちょっと、『人生の不条理』に『絶賛、打ちのめされ中』だから学校休みますので……もうちょっと……寝か……せて」
(リカじゃない! 起きろー!! テンガンユウター!!)
「!!」
僕は、飛び起きた! まさに、跳ねるがごとく!
それは……妹のリカの声とは、明らかに違う「女の子の声」だったからだ。その「声」は、僕の目の前……よりもちょっと「上」あたりのところに……つまり「浮いていた」……目の前に女の子が浮いていた。
「あ……あの……あ……あ…………」
僕は、酔っ払ってなどいないが(当たり前だが)、ロレツが回っていなかった。当然だ。
(やあ、やあ! はじめまして、テンガンユウタ君。ボクの名前はサクラ。れっきとした『女の子』だよ)
「……て言うよりも……あの……君…………何?」
(何って…………見ての通りの『幽霊』さっ!)
「ゆ……幽霊!!」
(とにかく、昨日はありがとう。おかげでボクは君のおかげで『願い』が叶ってうれしいよ。本当にありがとう)
「昨日?…………あっ!」
そう言えば……確か昨日、振られてベッドでへこんでいたときに、何か「変な声」が聞こえて「頼まれ事」をされたんだっけ?
「あ……あのう、いろいろと聞きたいことがいっぱいあるんですけど……」
(うん、いいよ。何でも聞いて)
「あの、まずは……君は『浮いてる』みたいだけど……何?」
(え?! 浮いてる?! そうかな~、そんな奇抜なファッションしているつもりはないけど?)
と、サクラという子は、自分の服(服? でいいのかな、この場合……まあ、いいか)をキョロキョロと前や後ろを見ながら言った。ちなみに、その格好は、スカートが赤のチェック柄の……て言うか、それはウチの学校の女子の「制服」だった。ウチの学校の卒業生だったのか?
ただ、まあ…………「透けてる」んだけどね。
あ、ここで注意しておくが「透けてる」というのは、制服が透けて「裸体が見える」というわけではなく、「この子自体」が透けているという意味だ。つまり、「透明」ということだ。暴走な妄想をしないように。
「い……いや、そういう意味じゃなくて……どうして君、宙に浮いてるの? てゆうか……何?!」
(だ~か~ら~……幽霊って言ってんじゃん!)
「ま……まさか~…………本当に?……幽霊?」
(そっ。幽霊。うらめしや~)
全然、怖くなかった……というより何だ? 何が起きてる? そうか、夢か! 夢なんだな。僕はまだ寝ていて夢を見ているんだ。
(あっ! ちなみに今、君は夢なんか見ていないからね。れっきと今、夢から目覚めてボクと会話しているんだよ)
現実逃避の理由を……先手必勝でつぶされた。
「ま……まさか。幽霊だなんて……冗談きつい……」
(じゃあ、どうしてボクが、宙に浮いていたり、身体が透明だったりしていると?)
「……」
まったくもって、答えられなかった。
(というわけで、ボクが幽霊だってこと、ようやく理解できた?)
「は……はあ、まあ、概ね」
(よろしい)
「ということは……あなたは僕の『守護霊』か何かなんですか?」
(いや、違うよ)
「え? 違うの?」
(うん、違う。どっちかというと『自縛霊』かな)
「自縛霊?!……自縛霊って……つまり、この世に未練が
残っている幽霊ってこと?」
(うん、そうなるね)
「ど……どうして『守護霊』でもない『自縛霊』のサクラさんが僕のところにいるんですか?」
(それはね……そこのところを、ボクは君に説明しなくちゃいけないので、こうやって目の前に現れたんだよ)
そういうと、サクラさんは僕に顔を近づけ、満面の笑みで笑った。けっこう………………「かわいい顔」をしている。
(そして、それは君にとって……昨日も言ったけど、とても『良い事』なんだ)
「『良い事』?」
(そっ。それはね……君は、このままでは『過酷な人生のルート』を歩むことになる。そして、ボクはそれを阻止するために来たんだよ)
「えっ?」
昨日、好きな子に告白して振られた僕が、一夜、明けると、「自縛霊」の「サクラ」という女の子から、そんな「告白」を受けることとなった。
つづく
はじめまして。
いろいろ試したいと思い、投稿しました。
がんばって連載を続ければと思います(今度こそ)
よろしくお願いします。
m(__)m