#9
久しぶりに会った美紀と別れて、私は家に帰る。
「ただいま~」
しんとした部屋。なんだか切なくなる。
買ってきた雑誌を広げて、リグレットの恋人の記事だけをじっくり読む。
恭介がどんな態度で、どんな口調で、どんな姿でインタビューに答えているのかがなんとなく想像できる。
私はそれくらい恭介のそばにいる。
できればこれからも恭介のそばにいたいなー…。
「ただいま~」
たくさんの音楽雑誌を広げたまま、私は夕焼け色に染まる部屋で眠ってしまっていたみたいだった。
「あきほ?これ全部買ったの?」
「え?あ…うん…」
「こんなに買わなくてもいいのに」
「買いたかったの…」
「ふぅん」
いつもの恭介。
いつもの姿。
いつものしぐさ。
だけど、それが切ない。
「恭介…私と付き合ってて楽しい?」
「え?」
「私と付き合ってて嬉しい?私と付き合ってて助かった?」
「あきほ、どうしたのさ?」
「私と付き合ってたこと…後悔してない?」
少しだけうつむく恭介の顔が涙でゆがんだ。
どんな答えが返ってくるのか、不安だった。
こんな風に自分の気持ちを恭介にぶつけたことは初めてだったから、なんだか恥ずかしくて、怖くて、不安で、言わなきゃよかったって後悔した。
私は恭介がすき。
恭介の変化に気づいてあげられないかもしれないけど、恭介のこと支えてあげられないかもしれないけど、だけど私は恭介がすき。
恭介に気づかれないように小さく心の中で叫んだ。
うつむいていた恭介の顔が私の方を向く。
「後悔してないよ」