#7
「いってきま~す」
「いってらっしゃい」
恭介は今日は雑誌の取材の日。
私は恭介を見送った後に近くの本屋さんへ向かった。
晴れわたる空とあたたかい太陽。
春色のチュニックにショートパンツを履いて出かける。
「いい天気だなぁ」
今日の天気みたいに、私の心の中のもやもやも晴れわたれば良いのになぁ。
本屋さんまでの道をゆっくりと歩く。
街は出勤や通学の人で溢れかえっている。
24歳の私は、ちゃんとした職もなく、アルバイトの生活。
同棲を始めたとき、恭介は「無理に働かなくてもいいよ。俺が頑張って幸せにするから」って言ってくれた。
それはプロポーズの言葉みたいで、そのときの私は彼からの本気のプロポーズを夢見ていた。
だけどそれは私のただの妄想にすぎなくて、恭介はそれ以来、何も言わなくなった。
「すきだよ」とも「あいしてるよ」とも言わない。
「幸せにするよ」って言葉も、もう忘れちゃったのかな?
たくさんの本が並ぶ本屋の中で、私は音楽コーナーへと向かった。
たくさんのジャンルの音楽雑誌が並んでいる中、リグレットの恋人のインタビューが載っている雑誌を買い占める。
これが私の月1の習慣である。
中くらいの紙袋に4冊の音楽雑誌を詰め込んで、私は家へと戻る。
雑誌というのは結構重たいもので、寄り道しようなんて気もなくなってきてしまう。