#2
「おはよ、講義もう終わったよ?」
「うそぉ!」
にっこりと、くすくすと笑う俊ちゃんの表情に、私は思わず顔がゆるむ。
俊ちゃんのこと、愛してるって思える。
私のことをもっと愛してほしいと思う。
「俊ちゃん」
「なに?」
「…なんでもないや~」
「なんだそれ~!」
俊ちゃんは持っていた去年の大学祭のうちわで私の顔を思い切りあおいだ。
大きな風が吹いてきて、私の長い髪の毛がなびいた。
俊ちゃんは大きな口を開けて笑っていた。
私も、一緒になって笑った。
今日の講義はこれで最後で、私たちはいつものように手をつながないで歩いた。
私の隣には俊ちゃん。
俊ちゃんの隣には私。
手なんかつながなくたって、隣に好きな人がいる。
ただそれだけで十分なくらい、私たちの付き合いは落ち着いていた。
きっと年を重ねるたびに恋人たちは皆そうなっていくんだと思う。
なんてったって、私たちはもう付き合って4年も経つんだ。
誰もが通る、付き合いたてのカップルみたいに、自分たちの幸せを他の人に分けてあげたい!なんて思ってしまうほどの初々しい道を私たちはもう、とうの昔に歩き終えてしまった。
「タケル~待ってってばぁ!」
「お前歩くの遅すぎだから~」
「うるさいなぁもうっ!」
私たちの前をベタベタくっつきながら歩く高校生のカップルを見ても、私たちは「若いね~」なんて言って終わるだけ。
彼らに対抗して手をつなごうか、とか、ちゅーしようか、なんてことは言わない。
落ち着いた私たちの付き合い。
落ち着いてしまった私たちの気持ち。