#9
小林将平は黙っていた。
バレたとかヤバイとかマズイとか、そんなことをとっさに感じた表情すらしていなかった。
「26位だから何?」
「……え?」
「お前、うちの学校に女子生徒なんにん居ると思ってんの?そん中の26位なんてめっちゃ良い方だろ?しかも、今日なんでお前のこと誘ったかわかるか?」
「……どうして…?」
「順位が上がったんだよ、お前の順位が」
私はすぐさま座席のポケットに入っている名簿を開いた。
「13位…?」
「そう、13位」
「…なんで?」
「最高だったから、お前の体」
小林将平は最低な男だった。
「昨日お前と初めてしたけどさぁ、お前の体最高だったわ」
小林将平は私に覆いかぶさったまま話をすすめた。
「何がいいって、喘ぎ声だよ。お前の喘ぎ声で何度でもイけるわ」
小林将平の目はギラギラしていた。
怖かった。私の知らない彼だった。
「13位だよ13位!26位でもすごいのに、さらに13位だぜ?すごいことだろ?」
確かに、とは思わなかった。嬉しくもなかった。誇りに思おうとも思わなかった。
私は小林将平の1番になりたかっただけだったのに。
「また今日も良い声で鳴けよ」
私は黒い車の中で小林将平に抱かれた。これはきっと愛ではない。
ただの暇つぶしに過ぎない。
私は彼の、小林将平の13番目の暇つぶし人形。
ただ、それだけの存在だった。
「美佳…もっと声聞かせて」
出したくない声が出る。
食い縛った唇から抜け出ていく声を殺してやりたかった。