#7
「美佳~」
「何?きのう魔女にフられたのまだ悲しんでんの?」
「違う~」
「じゃあどうしたのさ、もじもじして」
「………好きな人ができた」
奏恵は小さい声でそう言った。
好きな人ができた、と。
「えぇ!誰!?」
「年上なんだけどね~…」
奏恵は昨日、魔女にフられてもめげずに、違う学校の友達を誘って合コンに行ったらしい。
そこで出会ったのが大学生である小金井颯太だったらしい。
「そうちゃんって言うの!」
奏恵はキラキラしていた。可愛かった。そして安心した。
奏恵はあの男に、小林将平に興味がないということに。
「あっ、予鈴…席戻るね!」
「うん」
奏恵はキラキラした表情で席へ戻っていった。次は英語の授業だ。
英語の授業中に、私のポケットの中を携帯が揺らす。小林将平からだった。
〔今日も会える?〕
予想外だった。2日続けて会うことは今まで1度もなかったから。
私は急いで返事をした。
〔いいよ〕
シンプルなメールにシンプルな返事。
だけど私の心は、ドキドキとワクワクが混ざっていてシンプルではなかった。
放課後が待ち遠しくて、私は授業をまじめに聞くことができなかった。
「美佳!でね!さっきの続きでね~…」
奏恵が嬉しそうに好きな人の話をする。
奏恵のこと、私はだいすきだから、奏恵に好きな人ができてすごく嬉しい。
だけどごめんね。
今はそれも耳に入らない。
私は放課後を待ちに待った。