#1
出逢いは簡単だった。マンガやドラマや小説によくあるパターン。
でもちょっと違うのが、私は彼が大嫌いだったってこと。
だけどいつの間にか好きになってて、いつの間にか夢中になっていた。
悔しいけど、私は彼がいないと嫌だと思う。暇つぶし以上の気持ちを私は彼に抱いている。
彼は人気だし、不安になることはいつまでも絶えないけど、それでもなんとか大丈夫だった。
なんとか、大丈夫だった。
授業中、彼の細長くて骨張った綺麗な指に持たれたチョークが、彼には似合わない可愛らしく綺麗な文字を生む。
私はその瞬間をただずっと見つめていた。
目が合うと恥ずかしくなるから、彼がこちらを振り向くと同時に私は教科書を見る。
こんなにドキドキとワクワクが混ざった恋愛は初めてで、私はこの感情に溺れそうになる。
溺れそうになる。
授業が終わると、すぐに奏恵がこっちへ向かってきた。
「ね~!さっきの続き!彼氏って誰よ~!」
「奏恵の知らない人だよ」
「そうなの~?」
「うん、年上だし」
「まじ?美佳大人~」
「ははっ、大人じゃないよ」
私は大人なんかじゃない。きっと子供でもない、ただの17歳でしかないんだ。
制服のポケットからバイブの振動とともに携帯の着信が私を呼んだ。送信者は小林将平。
〔今日会える?〕
シンプルなその文章に私は何度も恋をした。必要とされている気がした。愛されている気がした。
〔いいよ〕
そんな彼のシンプルな文章に私もシンプルな文章で返事をする。
こんなシンプルな関係がとても心地好かった。
「メール、彼氏~?」
「うん」
「いーなーいーなーいーなー!あたしも彼氏欲しいー!」
「麻衣子でも誘って合コンすればいいじゃん?」
「だって麻衣子合コンだと超キャラ変わって男みーんな盗られちゃうもん!」
「ははっ、麻衣子は魔女だもんね」
「そー!本当に魔女~!」
麻衣子は魔女だ。
落とせない男はいないくらい、麻衣子は魅力に溢れている。