#6
「明日香ー!!!!」
「なしたのー?バイト終わったのー?」
「終わった終わった!終わったよー!」
「やけに機嫌いいねぇ、どうしたの」
「例の気になる彼の名前わかったよー!」
「うっそ、なんて言うの!?」
「波多野慶介!」
私は彼に2回も恋をした。
最初は私が勝手に作り上げた想像の中の彼。
2回目は、実際に会って話をした現実の彼。
―――
「この間、見ました。リグレットの恋人の話をしてた…」
「あ、あれやっぱりうらちゃんだったの?」
「うらちゃんじゃないです!」
「え?」
「あれは妹のきららです」
「妹?え?妹?」
「妹…」
「え、もしかしてうらちゃんって双子なの?」
「双子だし、私はうらちゃんじゃないです。うらちゃんの代わりに来た、妹のきららです」
「……ごめん、頭の中整理してた…うっそー!すっげー!すごい似てるんだね」
「似てないですよー!うらちゃんはリグレットの恋人なんか聴かないし…」
「そうなの?リグレットの恋人めっちゃ良いのにね」
「ですよね!私バンドの中で彼らが1番すきです」
「俺も俺も!まさかこんな近くに分かりあえる人がいたとは…!」
「びっくりですよね」
「本当にびっくりだよね!きららちゃんかー、よろしくね」
波多野くんの笑顔は私の想像していた通りの笑顔で、波多野くんの声は私の想像とは少し違っていて、波多野くんのしゃべり方は私の想像とは大分違っていて、だけどそんなことも許せちゃう気がした。
だって、私は彼がすきだから。
名前も知らなかった彼。
だけどもう知らない彼じゃない。
波多野慶介
私と同じ大学の3年生
学部は経済学部
意外とおしゃべりで声も少し高め
シンプルな服装がすきなお洒落さん
そして
彼は私の、すきな人。