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#5


朝、トイレの前で会った以来、気になる彼には会わずに放課後になった。


どうしてるんだろう。

私のこと、気づいたりしてるのかな?

でもなんとなく見られてる気がするし、なんとなく笑いかけてくれているような気もする。

これが噂の自意識過剰ってやつなのかな。


どうしてこんなにも会いたくなって、どうしてこんなにも胸がもどかしくなるんだろう。

これが私の恋の感覚なのかな。これが私にとっての素敵な恋なのかな。


「また明日ね」

「またね、バイトがんばって」

「ありがと」


明日香と別れてから、わたしはバイトへと向かう。

うらちゃんのバイト先は大学から歩いてすぐの駅から電車に乗って5分くらいのところにあるファミレス。

ここの制服は可愛いから結構すきだったりする。



「おはようございまーす」

「おはよー」


一つ年上の先輩の佳苗さん。金髪のギャルお姉さん。


「ねぇねぇ、この間新しく入った波多野くんってなんだか可愛いよねぇ」

「波多野くん?」

「ほらーうらちゃんと同じ大学のー」

「…?」

「あ、今日うらちゃんじゃなくてきららちゃんの方でしょー!」

「よくわかりましたね!」

「そりゃぁわかるよー会話についてこれてない感じとか!」

「私とうらちゃんってやっぱり似てないですよね?」

「いやいや全然似てるから!似すぎててわかんないくらい!」


やっぱり、私とうらちゃんは似ているらしい。

私がうらちゃんじゃないとバレるのは、私とうらちゃんが似ていないからじゃなくて、私がただ、この場所に慣れていないからみたいだ。


「でも、うらちゃんと同じ大学なら、きららちゃんとも同じ大学になるのか」

「誰がですか?」

「さっき言った波多野くんって人!」

「波多野くんですか…」

「うらちゃん、結構かっこいいって言ってたから、きららちゃんもすきなタイプなんじゃない?」

「絶対すきなタイプだと思います」

「あははっ、でしょー!」


波多野くん…どんな人なんだろうか。うらちゃんのかっこいいは信用できるから恐ろしい。

もし気になる彼よりもかっこよかったらどうしよう。しかもここのファミレスの男子の制服もかっこいいから、さらにかっこよく見えちゃったらどうしよう。


「佳苗さん、いま休憩中ですか?」

「そうだよー」

「じゃぁ私急いでホール行ってきますね」

「お願いします!」


波多野くんがどんな人だかは知らないけど、かっこいいなら見てみたい。

だけど私の中をいっぱいにしているのは波多野くんじゃない。


名前も学部も年齢も趣味も住所も誕生日も何も知らない彼を、私はこんなにもすきになってしまった。

勝手な想像で彼の性格を作り上げて、私は彼に恋をしている。

もしかしたら想像とは正反対の人かもしれないし、もしかしたら最低な奴かもしれない。

だけど、それでも許せちゃいそうな気がする。


「どうしても意識しちゃうって言うか、どうしても嫌いになれないし、どうしても許しちゃうし、どうしても良いなって思っちゃう感じかなぁ?」


不意に明日香の言葉を思い出す。私も、こんな気持ちを味わうことができたよ。これが恋なんだって思えるようになったよ。

明日香の勘は大当たりです。明日なにかおごってあげようかな…。


「おはようございまーす」


キッチンの人とホールの人にあいさつをする。久しぶりに会う人たち。

知り合い以上友達未満のそんな関係の人たち。


「おはよう」

「おはようございま…」


知り合い以上でもない人が私の目の前にいる。


「波多野…くん?」

「そうだよ?もう名前忘れたの?波多野慶介だよ」

「波多野…慶介」


ドキドキが止まらなかった。かっこよかった。

うらちゃんの言うことは本当だった。彼はとってもかっこいい。


本当にとってもかっこいい。



私は2回目の恋をした。



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