かくれんぼ恋愛
あなたは知らない人
だけどわたしの好きな人
春は出逢いの季節。
周りはどんどんと新しい恋を始めて、そして付き合って、そして幸せそうで…。
大学生活を満喫中の私に足りないものは恋だった。
この大学にもう2年も通っているのに、私はまだ良いなぁと思う人に出逢えていない。
いつになったら出逢えるんだろう。
むしろ恋をしている人たちはどうやってその人と出逢っているんだろう。
同じ学部?同じサークル?同じバイト先?
それとも、一目惚れ?
「きらら~!これー忘れてったでしょー!」
「あーどうりで時間わかんなかったわけだ!」
「本当にきららってどこか抜けてるよね~」
「抜けてないよ~ちょっと忘れっぽいだけですー」
「それを抜けてるって言うのー、姉ちゃんを見習いなさい」
「そんなにえばったって、姉ちゃんとか言ったって、説得力ないんだからーぁ」
私の名前はきらら。そして私のお姉ちゃんの名前はうらら。うららにきらら。
お姉ちゃんには「うらちゃん」って呼び名があるけど、私にはそんな呼び名はない。
だからちょっぴりうらちゃんがうらやましい。
「うらちゃんー!次5階だよー!階段がっつり上るよー!急いでー!」
「はーぁい!」
「俊ちゃんまた格好良くなったー?」
「俊ちゃんはいつでも格好良いですーぅ」
俊ちゃんはうらちゃんの彼氏。
高校2年生の頃から付き合ってるからもう付き合って4年になる。
「じゃぁね!時計、なくすんじゃないよ?」
「なくさないし、もう忘れないよ!」
うらちゃんは笑いながら俊ちゃんのところへ行った。
うらちゃんと俊ちゃんは仲良しで、そしてお似合いで、私はそんな二人に憧れていた。
私もいつか、あんな風な恋人同士になりたいなぁ…って。
「あっ!きららこんなとこに居たのー?」
「あ、明日香~」
「早くしないと2講目始まるよー?」
「ごめんごめん、急ごっ!」
見慣れた大学の景色。
一方的に知っている誰か、と、一方的に知られている誰か。
そんな曖昧な関係の場所に私は2年通っている。
「そういえば、さっきチラっと見えたけど、あれが例のうらちゃん?」
「そー!うらちゃん!」
「本当にそっくりなんだねぇ!」
「そりゃぁ、一卵性だもの」
「でも彼氏はうらちゃんの勝ちだね」
「それは禁句でしょー!!」
そう、私とうらちゃんは一卵性の双子。
うらちゃんの方が私よりも10分お姉さん。
小さい頃からうらちゃんはしっかり者で、私はだらだら怠け者。
同じ顔で同じ背丈で同じような人間なのに、性格はまるっきり正反対かのように違った。
「うらちゃんはしっかり者なのに、どうしてきららちゃんはこんなに怠け者なのかしらぁ」
お母さんは口癖のようにこの言葉を吐き続けた。
別になんとも思わなかったけど、私が怠け者になったきっかけの一つはお母さんのこの口癖のせいだったのかもしれない。
しっかり者のうらちゃんは人気者でモテモテで、4年も付き合っている彼氏がいて、今でもラブラブで仲良しで…。
だけど怠け者の私はバカ扱いされて、彼氏なんて全然できなくて、むしろ好きな人なんかもいなくて、告白なんかもされないし、仲の良い男子もたいしていないし…。
どうしてこんなにも、うらちゃんと私は違うんだろうか?
「あ!ねぇ聞いてー!この間言ってたサークルの先輩のアド、ゲットしちゃったさー!」
「本当にー!?うっそ、すごいじゃん!」
「でしょー!めっちゃ嬉しいー!」
「いいなぁ…私も恋したいなぁー」
「大学なんて格好良い人ごろごろ居るじゃん」
「違うのー!なんかこう、私にぴったりの人っていうか、私のすきなタイプぴったいの人が現れてくれないとねぇ」
「いるんじゃない?大学なんてたくさん男いるんだし」
「そうだよねぇ…なんで見つかんないんだろうねぇ」
「もっと周り観察しなくちゃねぇ」
「そうだねぇ」
明日香は同じサークルの2つ上の先輩に恋をしている。
もうそのサークルに入って2年も経つのに、その先輩に恋をしたのはつい最近で、なんだかそういう人とのつながりとか、人間の感情の変化ってなんだかやっぱり不思議だなって思った。