#10
南の方向へ走って行く私は、昨日見たドラマのヒロインのようだった。
なんとなく一緒に居る意味がわからなくなって、お互い別にお互いを必要としてないんじゃないか、なんて思ったら止まらなくなって、別れよって言ったらうんいいよって言われて、やっぱり必要ないんだなんて確信して、でも心は満たされるどころが空っぽになっていった。
たった1日の私の別れに私はさよならしたかった。
私は前田遼平のことがとてもすきみたいだ。
住宅街を駆け抜けて、なかよし公園の前で私は足を止めた。
そこにはゴロゴロ懐くブルーをしゃがみながら撫でている、くしゃくしゃのパーマがかかった髪の毛にひょろっとした身体の前田遼平の姿があった。
息を切らしながら、私は前田遼平に近付いて行った。
心臓が死んでしまいそうなくらいの早さで動いていて、それは走ってきたせいなのか、前田遼平のせいなのか、分からないくらいだった。
ゴロゴロと前田遼平に懐いていたブルーが、私に気付いてこちらへ歩み寄ってきた。
後ろを振り向く前田遼平は当たり前だけど前田遼平そのもので、私はこの心臓の高鳴りは前田遼平のせいだなと確信した。
前田遼平は何か言いたげだったけど、前田遼平が口を開く前に、私は口を開いた。
「やっぱり、寂しかった」
少し間をあけてから、前田遼平はいつもの笑顔で私を手招きした。
私は、そんな前田遼平のことがとてもすきみたいだ。