#9
キーケースから自転車の鍵を外して、私は勢い良くペダルを踏んだ。勢い良く走り出す自転車は軽快なスピードで坂を下って行く。
白いワンピースがパタパタと風になびく感覚がなんだか照れくさかった。
坂を下りてすぐのコンビニにも立ち寄らずに、街を駆け抜けて駅へ向かう。
昨日はあんなにゆっくり進んだ道を今日は急いで進んで行った。
街が私から離れて行っているのか、私が街から離れて行っているのか分からなくなるくらいのスピードで、額に湿る汗を拭いながら私を乗せた自転車は走っていた。
自転車のカゴの中で暴れるキーケースと財布が急げって私に叫んでいた。ような気がした。
駅に着いて、私は自転車の鍵も掛けずに切符を買って改札をくぐり抜けた。
ホームには出勤中のサラリーマンや学生とかたくさん居たような気がしたけど、私はそんなことも気にせずにホームから線路に顔を乗り出しながらなかなか来ない電車を待っていた。
どんな気持ちが私にこんなことをさせているのか、私には分からなかったけど、このときはただ、ミカちゃんのあの言葉や、そうちゃんのいつものノリで言うあの言葉が頭から離れなかった。
やっと来た電車に子供のように一番乗りで乗車した。
目的の駅に着いたら、すぐに降りられるように私はその駅で開くドアの前に立っていた。
流れる街並みを目で追っていると、薄らと明るく透明な窓に写る自分の姿が見えた。
額には汗をかいていて、髪の毛もぺったりとしていた。
そんな化粧もしていない私の顔は、なんだか化粧をしているときよりも可愛く見えて、少し笑いそうになった。
二つの駅を越えて、私は電車を飛び出して改札を抜けた。