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第25話 新章 都市のその先へ

勝利の余韻は、長くは続かなかった。


エルドラの朝は相変わらず賑やかだ。

市場には人が溢れ、河川輸送は安定し、銀行も完全に信頼を取り戻している。


だが――


「静かすぎるな」


俺――アルクは広場を見渡しながら呟いた。


リナが隣で首をかしげる。


「え?すごい人だよ?」


「そういう意味じゃない」


セリナが代わりに答える。


「“外”が静かすぎるって話だ」


ロイドも頷く。


「バルザードが引いた」


「だが何もしてこないのは不自然だ」


その通りだ。


あのミレイアが、あれで終わるわけがない。


なら何かを――


「溜めてる」


俺はそう結論づけた。


―――


その日の昼。


エルドラ西門。


見慣れない旗が翻っていた。


金と青の紋章。


整列した兵士。


重厚な鎧。


そして中央に立つ一人の男。


「……王国軍か」


セリナが低く言う。


リナが少し緊張する。


「また王国?」


「いや、今回は違う」


エリシアが前に出る。


表情がわずかに引き締まっている。


「正規軍よ」


空気が変わる。


単なる使者じゃない。


“力”そのものだ。


男が一歩前に出る。


「エルドラ都市主、アルク」


低く響く声。


「王国第三軍団長、レオニスだ」


ただ名乗っただけで分かる。


強い。


空気が違う。


戦場をくぐってきた人間のそれだ。


「用件は?」


俺が聞く。


レオニスは周囲を見渡す。


街。

人。

活気。


そして言った。


「確認だ」


「この都市が“制御可能か”」


沈黙。


言葉の意味は明確だった。


「制御できないと判断したら?」


俺が聞くと、レオニスは即答した。


「排除する」


空気が凍る。


リナの手が強くなる。


セリナの目が細くなる。


ロイドは無言。


だが。


俺は動じない。


「なら見ていけ」


一歩前に出る。


「この街が何か」


―――


案内が始まる。


市場。


河川輸送。


銀行。


教育施設。


レオニスは一切口を挟まない。


ただ見る。


観察する。


評価する。


その視線は鋭い。


だが途中で、ほんのわずかに変わった。


「……無駄がない」


小さな呟き。


ロイドが気づく。


「効率化してるからな」


さらに進む。


工房。


生産ライン。


錬金設備。


レオニスの足が止まる。


「これは……」


初めて、明確に反応した。


「錬金術か」


「そうだ」


「ここまで使うか」


一拍。


「兵站に使えば……」


言いかけて止まる。


考えている。


軍人として。


この街の価値を。


―――


その時だった。


「遅いわね」


軽い声。


振り向く。


ミレイアだ。


また来た。


しかも普通に。


リナが即反応。


「なんでいるの!?」


ミレイアは肩をすくめる。


「招待されたから」


「は?」


レオニスが口を開く。


「情報顧問だ」


空気が一瞬止まる。


「……なるほど」


セリナが笑う。


「そう来たか」


ミレイアは俺を見る。


楽しそうに。


「また会ったわね」


距離が近い。


かなり近い。


リナがすぐに割り込む。


「近い!」


「警戒心強いわね」


「当然!」


分かりやすい。


レオニスがその様子を見て、少しだけ笑った。


「人間関係は複雑だな」


「否定しない」


俺は短く答える。


―――


視察が終わる頃。


夕方。


レオニスが立ち止まる。


「結論だ」


全員が静かになる。


「エルドラは――」


一拍。


「排除対象ではない」


リナがほっと息を吐く。


だが続きがあった。


「だが」


「放置もできない」


その言葉に、再び空気が引き締まる。


「提案だ」


俺を見る。


「王国と軍事協力を結べ」


沈黙。


スケールが一気に変わった。


「断ったら?」


俺が聞く。


レオニスは即答した。


「様子見を続ける」


つまり。


完全な敵にはならないが――


「監視対象」


そういうことだ。


俺は少しだけ考える。


そして言った。


「条件次第だ」


レオニスが頷く。


「いい答えだ」


―――


夜。


温泉。


今日はいつもより静かだった。


リナが隣に座る。


そして、すぐに寄ってくる。


「……アルク」


「ん?」


「今日さ」


少しだけ間。


「なんか遠く感じた」


「そうか?」


「うん」


そのまま、少しだけ強く寄りかかってくる。


柔らかい感触。


温もり。


「……でも」


小さな声。


「ちゃんといる」


その言葉に、少しだけ笑った。


「いるよ」


その時。


ツルッ。


「きゃ!」


もう様式美だな。


抱き寄せる。


距離ゼロ。


密着。


リナの顔が近い。


「……アルク」


「はい」


「さっきの続き」


一拍。


「ちゃんと聞いて」


真っ直ぐな目。


その距離のまま。


「好き」


今度は、はっきりと。


逃げない言葉。


少しだけ間。


俺は答えようとして――


バシャッ!!


「混ざれ」


セリナだ。


「やめろおお!!」


空気クラッシャーすぎる。


セリナが笑う。


「いいとこだったのにな」


リナが真っ赤になっている。


でも。


今度は、視線を逸らさなかった。


―――


エルドラは。


都市を超えた。


次は――


国家だ。


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