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第24話 仕掛けた罠と、選ばれる側の覚悟

決戦は、静かに始まった。


エルドラの朝は、いつも通りに見える。


市場は開き、

商人の声が響き、

銀行には人が並ぶ。


だが、その裏では――


すべてが“仕組まれていた”。


「配置は?」


俺――アルクは広場を見渡しながら問う。


ロイドが答える。


「予定通りだ」


「河川輸送は通常通り動かしている」


「帳簿も“偽装”済み」


セリナが笑う。


「完璧だな」


「だな」


今回の狙いは一つ。


――ミレイアを“確信させること”。


エルドラが崩れると。


そして。


「そこを叩く」


―――


同時刻。


バルザード。


「今です」


部下の声。


ミレイアは窓の外を見ながら、静かに頷いた。


「動くわ」


机の上には報告書。


――河川輸送、停止間近

――銀行、資金流出傾向

――内部結束低下


すべてが揃っている。


「……本当に?」


一瞬だけ、思考が止まる。


違和感はある。


だが。


「ここで動かなければ、負ける」


その判断は正しい。


だからこそ――


「全商会、動員」


一拍。


「一気に奪う」


戦いが、動いた。


―――


エルドラ。


昼。


市場。


突然、空気が変わる。


「なんだあれ……!」


「商人の列……!?」


西門から、大量の商人がなだれ込んできた。


バルザード側の商人。


一斉に動いてきた。


ロイドが低く言う。


「来たな」


セリナが笑う。


「分かりやすい」


リナが少し緊張した声で言う。


「アルク……」


俺は小さく頷いた。


「予定通りだ」


―――


バルザード側の商人が、一斉に条件を提示する。


「今なら三倍出す!」


「住居も保証する!」


「移るなら今だ!」


ざわめきが広がる。


人の視線が揺れる。


だが――


誰も動かない。


沈黙。


その沈黙が、すべてだった。


「……なぜだ?」


バルザード側の男が困惑する。


「条件は上だぞ!?」


それでも、誰も動かない。


その時。


俺は一歩前に出た。


「もう終わってるからだ」


沈黙。


「何を言って――」


「情報、全部流してた」


一拍。


「わざとな」


空気が凍る。


「……は?」


ロイドが帳簿を掲げる。


「偽装だ」


エリシアが続く。


「王国監察済み」


セリナが笑う。


「全部“見せてた”だけだ」


完全に理解が追いつかない顔。


その時。


後ろから拍手が聞こえた。


パチ、パチ、とゆっくり。


振り向く。


ミレイアだった。


「……なるほど」


その目は、悔しさではなく――


純粋な興味。


「完全にやられたわ」


一歩前に出る。


「最初から全部、読んでたのね」


「半分くらいな」


「残り半分は勘だ」


ミレイアが笑う。


「それでここまでやる?」


「やる」


短い答え。


そのやり取りを見ていた商人たちは、完全に理解した。


どちらが上か。


流れがどこにあるか。


そして。


「戻るぞ!」


「エルドラの方が安全だ!」


「こっちだ!」


完全に決着だった。


流れは、完全に固定された。


―――


ミレイアはしばらく黙っていた。


そして。


「……負けね」


あっさり言った。


だがその目は死んでいない。


むしろ。


「楽しかった」


少しだけ笑う。


「アルク」


「何だ」


「あなた」


一歩、近づく。


かなり近い。


「欲しいわ」


リナが即反応する。


「ダメ!」


早い。


ミレイアが楽しそうに言う。


「冗談よ」


でもその目は冗談じゃない。


「でも」


一拍。


「また来る」


「敵として?」


「それとも――」


少しだけ間。


「別の形で」


意味深なまま、去っていく。


―――


夜。


温泉。


今日は静かだった。


戦いが終わったからか、空気が柔らかい。


リナが隣に座る。


すぐに寄ってくる。


「……アルク」


「ん?」


「終わったね」


「一応な」


完全ではない。


でも、大きな山は越えた。


その時。


リナが少しだけ顔を上げる。


「……約束」


「何の?」


「話すって言った」


ああ。


そのことか。


リナが少しだけ緊張した顔になる。


距離が近い。


かなり近い。


そのまま、小さく言う。


「私ね」


一拍。


「アルクのこと――」


その瞬間。


ツルッ。


「きゃ!」


タイミング最悪だな。


抱き寄せる。


距離ゼロ。


完全に密着。


息が止まる。


リナの顔がすぐ近く。


「……アルク」


「はい」


「これ」


一拍。


「もうわざとでいいよ」


「違う」


でも。


離れない。


そのまま、少しだけ時間が止まる。


「……好き」


小さな声。


でも、はっきり聞こえた。


その瞬間。


バシャッ!!!


「混ざれ」


セリナだ。


「やめろおお!!」


全部ぶち壊しだ。


セリナが笑う。


「いいとこだったのにな」


リナが真っ赤になっている。


でも。


今度は離れなかった。


―――


エルドラは、勝った。


情報戦。

物流戦。

人の戦い。


すべてを制した。


そして物語は。


次の段階へ進む。


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