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転生王女様の王国解体宣言~王女ですが、内部から王国を壊して作り直します〜  作者: 顔のない人間


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第11話 敵襲

 矢が二本、三本と馬車に突き刺さった。


 木片が散り、馬が怯えたように嘶く。  車輪が泥を噛み、馬車が大きく揺れた。


 「――止まれ!」


 フィオナが叫ぶ。  護衛兵が馬を抑え、必死に周囲を警戒する。


 森の中から、黒い影がじわじわと現れた。  布で顔を隠した賊たち。


 弓、短剣、剣。  その数は十数人。


 その場の空気が、殺意で重く沈んだ。


 フィオナが歯を食いしばる。


 「殿下……!」


 馬車の中。  エルミナは膝を抱えた。


 揺れに耐えるように背を丸め、髪が乱れ、指先が震えている。  その姿は――王女ではなく、ただの少女だった。


 「……フィオナ」


 声は弱々しい。


 「……お願い」  「全部、任せるわ……」


 フィオナの目が見開かれる。


 だが次の瞬間、その瞳に火が灯った。


 「……はい、殿下」


 ノエルは無言で馬車の扉を開け、外へ降りた。  小型剣を抜く。


 剣は短い。  だがその分、動きが速い。


 「……来る」


 ノエルの低い声。


 賊の一人が笑った。


 「なんだぁ? ガキが二人かよ」  「王女は馬車で泣いてんのか?」


 別の男が舌打ちする。


 「殺せ。首だけ持って帰りゃ報酬は出る」


 その言葉が終わる前に、フィオナが前へ出た。


 鎧が鳴る。  地面を踏みしめる音が、重い。


 「……王女殿下に触れるな」


 賊が肩をすくめる。


 「触れねぇよ。殺すだけだ」


 フィオナは剣を抜いた。


 銀の刃が、曇天の光を受けて鈍く光る。


 次の瞬間。


 賊たちが一斉に走った。


 森の影が雪崩のように押し寄せる。


 フィオナは――動いた。


 「はあああっ!!」


 踏み込み。  剣を振り抜く。


 最初の男の喉元が裂け、血が噴き出した。


 「ぐっ――!」


 倒れる間もなく、次の男が短剣を突き出す。


 フィオナは腕で弾き、盾のように肩を押し付ける。


 ゴン、と鈍い音。


 男の身体が木に叩きつけられ、崩れ落ちた。


 「……っ!」


 矢が飛ぶ。


 フィオナは反射的に身体を捻り、矢を避ける。  矢は鎧の縁を掠め、火花が散った。


 その隙に、三人が左右から挟み込む。


 剣、短剣、棍棒。


 フィオナは息を吐いた。


 「遅い」


 剣を逆手に持ち替え、下から斬り上げる。


 腹が裂け、男が呻いた瞬間――


 フィオナはそのまま回転し、二人目の首筋を刃で叩き割るように斬った。


 骨が鳴る。


 血が飛ぶ。


 三人目が棍棒を振り下ろす。


 フィオナはわざと受けた。


 ガンッ、と鎧に衝撃。


 だが鎧は砕けない。


 フィオナはそのまま男の胸倉を掴み、引き寄せた。


 「……私の殿下を」


 剣が突き刺さる。


 男の目が、驚きで大きく見開かれた。


 「殺そうとするな」


 ズブリ、と刃が深く沈む。


 男は力を失い、崩れ落ちた。


 その一連の動きは、重く、速く、無駄がなかった。  鎧を纏った騎士が、獣のように暴れている。


 賊たちが怯み始める。


 「なんだこいつ……!」  「女騎士だぞ!? こんな……!」


 フィオナは血を浴びながら、息を整えた。


 そして笑った。


 「私は護衛騎士だ」  「殿下を守るためなら、何でもする」


 賊の一人が叫ぶ。


 「数で押せ! 囲め!」


 その声に応えるように、賊たちがさらに迫る。


 だが――その背後。


 ノエルが滑り込むように動いた。


 小型剣が閃く。


 喉元。  腱。  手首。


 狙うのは急所だけ。


 「……っぐ!」


 賊の一人が悲鳴を上げるより早く、ノエルはもう次へ移っていた。


 短剣を持つ男が突き出す。


 ノエルは一歩退き、刃を受け流し、反対の手で男の肘を押す。


 体勢が崩れた瞬間。


 ノエルの剣が、男の脇腹に吸い込まれた。


 「……静かに死んで」


 淡々とした声。


 男は泡を吹き、崩れた。


 ノエルは血を払うこともなく、次の敵へ向く。  視線は冷たい。  まるで、感情がない。


 馬車の中。


 エルミナは、さらに深く縮こまっていた。


 耳を塞ぎ、膝を抱え、肩を震わせている。


 外から聞こえるのは悲鳴。  剣が肉を裂く音。  骨が砕ける音。


 エルミナは――目を閉じた。


 (嫌だ)  (嫌だ嫌だ嫌だ)


 (血の匂い)  (叫び声)  (死の気配)


 それは前世で、何度も嗅いだ匂いだった。


 議会の裏側。  暗殺計画。  裏切り。  汚れた握手。


 そして最後は――銃声。


 エルミナは歯を食いしばる。


 (私は……死んだ)  (あの瞬間、確かに)


 (また、殺されるの?)


 馬車が揺れる。  誰かがぶつかったのだろう。


 エルミナは思わず声を漏らした。


 「……うぇ」


 その小さな悲鳴を聞いて、フィオナの怒りが爆発した。


 「――殿下を怖がらせたなァ!!」


 フィオナが踏み込む。


 剣を振り下ろす。


 賊の肩口から腰まで、斜めに裂いた。


 血が噴き上がり、地面を赤く染める。


 賊が倒れる。


 フィオナは止まらない。


 次の賊の剣を弾き、鎧ごと体当たりし、相手を地面に叩き伏せる。


 「ぐっ……!」


 賊が呻く。


 フィオナは剣を突き立てた。


 「死ね」


 躊躇がない。  騎士の顔ではない。


 獣の顔だった。


 賊たちは、ついに明確に恐怖を見せ始めた。


 「おい、やばいぞ!」  「撤退――!」


 その声が上がった瞬間。


 森の奥から、笛の音が鳴った。


 ピーッ――という高い音。


 賊たちの動きが、一瞬止まる。


 フィオナの眉が動く。


 「合図……?」


 ノエルが呟く。


 「……増援が来る」


 次の瞬間、森の影がさらに揺れた。


 新しい賊たちが、枝を踏み砕きながら現れる。  数は、さらに十。


 フィオナが息を呑む。


 「……まだいるの!?」


 ノエルは小型剣を握り直した。


 「多い」


 馬車の中で、エルミナは震えたままだった。


 だがその唇が、かすかに歪む。


 (……馬鹿ね)  (これだけの数を動かすには金がいる)


 (つまり、背後に貴族がいる)


 エルミナは膝を抱えたまま、目を細めた。


 恐怖に震える少女の姿で。  誰にも見えない場所で。


 静かに、心の中だけで笑った。


 (いいわ)  (全部、繋がった)


 外では、賊たちが再び剣を構える。


 フィオナが叫んだ。


 「ノエル! 馬車を守れ!」  「殿下は絶対に出すな!」


 ノエルが頷く。


 「了解」


 賊たちが、一斉に襲いかかった。


 森が、血と鉄の匂いに満ちていく。


 そして戦いは――さらに激しさを増していった。

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