063.「」
(もはや疑いようもない! アルメリア・リーフレット……! やはり奴は、裏で魔王軍と結託して……!)
状況が状況だったがために、それは一時的にジルクリフがしてしまった勘違いである。
なにせあまりに出来すぎていたからだ。
怪しいと睨んでいたアルメリアの後を付けたら、その先で力を溜めていたらしいグランダムといきなり遭遇だ。
アルメリアは最後までシラを切り通そうとしていたが。
(そんな偶然があってたまるか……!)
もはや言い逃れが効かなくなり、痺れを切らしたグランダムがアルメリアの助太刀に入った。
そう解釈するほうが、はるかに自然で道理に適っているだろう。
現に今、グランダムはアルメリアに見向きすらしていないではないか。歯噛みする。だからあれほど言ったのだと。
「何が手を取り合えるだ……!? これが答えだ、ライナルト!」
いよいよアルメリアを敵と断じ、その身を雷霆と化すジルクリフだった。
ライトニング・ライン――戦鎚の乱舞を切り裂く一条の閃光となりて、目にも止まらぬ速度で戦場に白刃の軌跡を描く。
グランダムとの決着を早々に付け、今度こそアルメリアも始末する。
そのつもりで背後に回り込み、うなじに向けて巨大な雷撃を撃ち落としたのだが。
「……フン、効かぬぞ」
「なに!?」
「貴様の全力とはそんなものかあああッ!!?」
どういうわけか、グランダムはかなりパワーアップしているようで苦戦を強いられたし。
「ライナルト・ガレイアは死んだ!」
「……っ?」
グランダムの発言には節々、それだと辻褄の合わないところも散見された。思えばアルメリアも、どうしてさっきから動かず、同じところにジッと座っているのか。
見やれば、"もうどうぞ勝手にやってください"とも言いたげな呆れ混じりの知らん顔ではないか。
(まさか結託している訳ではないのか……? これは本当にただの偶然……?)
疑念が生じる。
しかしだったら何故、さっき……というか今もグランダムはアルメリアに見向きさえしないのか。
(どうなっている……!?)
まさか気付いてないなんてことあるわけもなし。
いよいよ関係性が見えなくなっていたのだが。
しかし、そう――。
真相はそのまさかである。
グランダムはこのとき、アルメリアの存在に露ほども気づいてはいなかった。
進化の琥珀。
彼が本来の刻を待たず、その眠りから醒めてしまった要因はただひとつ。
一度手合わせをし、宿命の敵と見定めたジルクリフ・ガレイア。
その魔力を至近に感じ取ったからに他ならない。
何故ジルクリフがこの場所を知り得たのか、グランダムには皆目見当もつかなかったが。
(そうか、ジルクリフ・ガレイアよ……。汝もまた我との決着を望むというのだな……。良かろう! いまだ完全ならずとも、立ち会ったからには全力で応ずるが武士の務め、矜持というものよ! その意気やよし! 我も相応の覚悟をもって報いようではないかッ!)
ビシビシガキンと琥珀を打ち砕き。
「いざ尋常に、勝負うううーッ!!!」
そのままよそ見もせずただまっすぐ、ジルクリフのもとへ突貫したのだった。
だから今、とても想定外なことになっている。
直前までグランダムの昂ぶりは最高潮にあったのだ。
たとえ自分で考えた訳でなくとも、お披露目の機会を取っておいたネタバラシとは痛快なもの。真の狙いはここにあったのだと豪語し、これでもかと大ドンデン返しの全容を明かしてやった。
そのうえで。
「これから自滅の一途を辿るのだあああッ!!!」
完膚なきまでの勝利宣言まで、高らかに言い放ったのだが。
(……なんだ、この揺れは)
その変調を先に気取ったのはジルクリフ。
彼がよそ見をしていたもので。
「……む?」
グランダムも遅れて気づく。
遠くにもう一人、見知らぬ赤毛の少女が佇んでいることに。
いや――。
「あの者は……」
よく見れば知っていた。
そして何やら、負のオーラを放っている。
スカートの裾をギュッと握りしめ、肩を震わせながらプルプルと。
怒気を募らせているその様からは、ヒシヒシとただならぬ怨情が感じ取れて。
「自滅したのが、どちらか……!」
やがてはゴゴゴゴと、不審な岩窟の揺れはだんだん大きくなり――。
「いま、思い知らせてあげるんだからッ……!」
バゴンと堅い岩盤を地下から物々しく粉砕。
妖華の触腕がワラワラと溢れ出すのだった。




