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062.「」


「貴様らの命綱たるポーションを粉砕し、その一滴余さずを我が兵糧ひょうろうに……ッ! 力と進化の源泉とするためだったのだああああッ!!!」


「…………はいっ??」



 思わず声が出た。

 ズガンズガンズゴンと戦鎚を振り回し、岩窟全体を揺らしながら。

 勝ち誇ったようにグランダムは、その詳細についてを高らかに語っていく。


「不思議には思わなかったか!? なぜ我がこれほどまでに短い期間で、かくも力を増したのか! 明かしてやろう! その答えこそ、貴様らが無作為に増員したポーション屋どもにあったのよ!!!」


「…………」


「ムシウルの毒に抗するため、苦肉の備えであったのだろうが……まこと容易たやすかった! ひとたび冒険者たちのなかに紛れ込んでしまえば、まさしく我の独壇場どくだんじょうよ!」


「…………」


「貴様らは気付きもしなかっただろうがな! 堅牢なるフルメイルに身を隠し、我は密かにそれらを破壊して回っていたのだ! だけではないッ!!! 上質なものはじかに飲み干し、我が力の糧としてやったのよおおおッ!!!」


「フル、メイル……?」



 そのとき電撃的に繋がる記憶があった。

 少しまえデップリ体系に全身武装の、とても無骨な冒険者が店に来たのだ。



『この店にあるポーションは、これで全てか。まだ在るのならあまねく我に献上けんじょうせよ。隠し立ては身のためにならんと知れ』



 そのときはギルダが追い払ってくれたが。

 それからも毎日のように、そのフルメイルはやってきた。



『まったくもう、なんですのっ!? こちらは大忙しだといいますのに! 代金こそ支払う気はあるようですが、新手の冷やかしでしょうか!?』


『なんだろうね? あっ、ひょっとして転売目的とかかな? アルのポーション、よく効くから』


『なんだって構わないですけど、いい迷惑ですわ! こうなったら……!』



 ついには衛兵に通報され、出禁処分となる。



(じゃあ、まさか……!)



『た、頼む! 我にこの店のポーションを売ってくれ! 対価ならば惜しまぬ! それほどまでに此処の品は美味! と一線を画す! 格別に旨いのだぁあああッ!!!』


『ご冗談でしょう!? アルメリアさんのポーションはジュースではありませんわッ!!』



(まさかあれの中身が、グランダムだったってことーっ!?)



 ガビーんとなる。

 それを裏付けるように。



「中でも一軒、群を抜いて旨い店があった! あれはまっこと格別であったぞ!!!」


 グランダムがそんなことを……。


(あれ、ちょっと待って……! そういえばその直後くらいに……!)


「しかし途中から、売れと求めても応じぬでな! 最後は夜ごと秘蔵のくらへと忍び込み、そこに納められていたポーションをありったけ盗み出してやったものよ!」



 そう、盗まれ……。



「して、そのすべてを飲み干してやったわあああッ!!!」


「……なんですって?」



 アルメリアの時が、そこで止まる。

 たちまちワナワナと震え出す。



「なん……ですって……ッ!?」



 だってあのあと……。

 どれだけ大変だったと思っているのか。


 まずもってあのポーションは、毎日少しずつ残業して、コツコツ作り置きしてあったものだ。


 あまりの忙しさに見かねてだろう。

 提案してくれたのがギルダだった。



『あれ? でもポーションの作り置きってダメなんじゃなかったっけ? 作ったその日か、遅くても次の日までに使わないと、あんまり効果がなくなっちゃうって』


『まぁそうなんですけど。アルメリアさんのポーションはたいへん品質がよろしいですから、数日くらいならまず問題ないですわ。なのでアルメリアさん、今夜から少しずつでも頑張りましょう! もちろん微力ながら、わたくしもお手伝いさせていただきますから!』


『あっ、それなら私も私も! ポーション造りのこととかは正直、よく分かんないけど……。それでも私にだってできることもありそうだもんね! なんでも言ってね、アル!』


『二人とも……!』



(ギルダやスーランも手伝ってくれて……!)



 それがある朝、すべてもぬけの殻だ。

 ポーションはありったけ盗まれ、ストックの空き瓶もすべて割られている様には膝から崩れ落ちた。


 荒らされ、壊滅的被害を受けた納屋なやの掃除から始まり、それでもまた2人は嫌な顔一つせず手伝ってくれて……。


(またイチから全部、3人でやり直して……)



「よく、も……っ!」



 今なお夢中でズガンズガンやってるせいでグランダムはまったく気付いていないだろう。


 グラグラと岩窟がんくつを揺るがす、とめどない地響き。

 それがもはや自身がそれそれそれぃと景気よく、モグラ叩きよろしく振り回している戦槌せんついのものだけではなくなっていることに。


 そして――。


「ポーションを破壊し、尚且つ我に力を与えること! それがムシウルの第二の狙いだったのだッ! 結果として我は"進化の琥珀"を形成させるに至った! 何もかもが今、我が友の目論み通りよおおおッ!!!」



 ……へぇ。

 へぇえ~、そう……?

 そうだったんだあ……。

 あなたが……。あなた、たちが……。



「許、さない……!」



 ジルクリフしか眼中にないあまり、実はさっきスルーしたことにも気づいていないそのポーション屋の店主が今、シューシューと禍々しい怨気おんきを放ちながらプチプチと青筋を浮き立たせていることにも。



「とくと知れ! すべては我が友、"蠱毒のムシウル"の策謀さくぼうであると! 貴様らは自らの手で滅びを引き寄せた! そしてこれから自滅の一途を辿るのだあああッ!!!」



 自滅したのが、どちらか……!



「いま、思い知らせてあげるんだからッ……!」

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