060.「」
途中まではまぁ、黙って見ていられたのだ。
「なっ、グランダムだと……!? どういうことだ、なぜキサマがここに……ッ!?」
「ほう、それはまた珍妙なことを聞くものだ! 我も今まさに、同じ問いを投げかけようとしていたところだというのにな! されど、そうか……! 知らずして此処へ至ったというならば、やはり我らは戦いの宿命にあるということ! この邂逅にして巡り合わせ! 戦神エルディアの加護と導きに、深く……! 我が魂より深く感謝を捧ぐッ! ――さぁ銀剣、ジルクリフ・ガレイアよ! 今度こそ我と心ゆくまで戦おう! 存分に打ち合おうではないかああッ!!!」
ガギギギギゴン!
効果音でいうとそんな感じの轟音とともに、戦いの火蓋が切って落とされる。
地下の岩窟、その最奥で凄絶な打ち合いが幕を開けて。
「何事……?」
ちょっとしばらく、置いてけぼりのポカーン状態だったアルメリアだが。
(そういえばレドが言ってたっけ……?)
思い出す。
(ムシウルが来てたとき、あの人はグランダムに足止めされてて駆けつけられなかった……とか、そんな話だったような……)
気がする。
(つまり2人が会うのはこれが初めてじゃない……? あー、だから預けた勝負がどうとか言ってたのね)
察するに。
たぶんジルクリフが足止めされたとき、その幕引き――去り際のタイミングで"この勝負は預けた"的なセリフをグランダムが口走ったのではなかろうか。
だから再会した今、こんな待ったなしの展開になっているわけで。
合点がいき 、ポン。
パーのうえにグーを落とすアルメリアだった。
そうこうしている間にも争いはますます苛烈さを極め、激化していくばかりだ。
嵐のように荒ぶり、ブォンブォンと回転しながら縦横無尽に入り乱れる戦鎚の乱舞。その中を一条の稲妻――白雷と化したジルクリフが閃光の軌跡となって貫き、反撃の機を窺っている。
(レドのお兄さんって、本気を出すとあんなに速かったんだ……)
常人ではまず、捉えきれないだろう速さで虚空を駆け抜ける光の残影。
次々と、目にも止まらぬスピードで描き出されるレイライン。
「すごい……!」
そこには思わず目を奪われるほどの煌めきがある。
同時にズオオンと一際強く轟いた雷鳴には、体が芯から震わせられるほどの力強さがあって。
――されど、やはり優勢なのはグランダムだ。
大地の力をその身に宿して借り受ける彼とジルクリフではそもそもの相性が悪い。
それも大きく要因だろうが。
「だとしても……」
アルメリアとしても些か不可解に思った。
なぜこうもグランダムの魔力が高まっているのかと。
いや答えだけなら明白だ。
こうなる直前までグランダムが籠っていた琥珀の繭。
(あの中で力を溜めていた。きっとそういうことなんだと思うけど……)
気になるのは……。
そんなにたくさんの魔力を、いったいどこから補充したのかということ。
(ここが地下だから……? グランダムだけが受けられる特別な恩恵でもあるのかな。それともすごく強い地脈がこの近くに通ってるとか……?)
試しにしゃがんで地面に触れたり、直接耳を当てたりもしてみる。
(とくにそんな感じもしないけれど……)
マンドラゴラ由来のセンサーにも引っかからないのだから、そこは間違いないと断言してもいい。
維新もかけよう、マンドラゴラの。
(でも、だったら何で……?)
ちょっとくらい考えてはみたけれど。
すぐにどうでもよくなってポイした。
知ったことではないからだ。
グランダムがどうやって魔力を補充したにせよ、今のところそれがこっちに向く様子もない。
もう座った。
(なんかよく分からないけど、二人ともタイマン勝負がしたいみたいだし。もう知ーらない。ほっとこ)
にしても。
「こういう状況、レドがいたらすごく喜びそー」
すると声高らかに、グランダムのカミングアウトが始まったのがそのとき。
「ムシウルの策には、二つの大いなる目論見があったのだ!!!」




