054.「」
――戦鎚のグランダム。
彼がガレイア攻防戦――すなわちマンドラゴラをめぐる争いに加わることになったのは、数週間前に開かれた会合でのことだ。
「なに? グリムガルドが死んだだと……?」
「ええ、そうなのよ」
グランダムが思わず聞き返すと、神妙な面持ちで頷いたのが同志、"夢喰いのセレビネラ"だ。
「やられたって、どういうことだ?」
共に呼び戻された"蠱毒のムシウル"も、訝しげに問いを重ねる。
もともとマンドラゴラを最初に見つけたのは、こちら側だった。
いや。
正確に言えば「見つけた」のではなく、およその所在を割り出したにすぎなかったが。
「それでも見つかるのは時間の問題だったはずだろ?」
「うむ。此方が既に、あと一歩のところまで迫っている。それを悟らせぬために我等が方々に散り、敵を広く欺き、揺さぶる。その認識でいたが?」
「……へぇ、驚いたぞグランダム。ちゃんと作戦が頭に入ってたのか」
「フン、侮るなよムシウル。この程度、我にとっては児戯も同然。造作もないことだ」
「そうかよ。ならこれからの作戦は全部、オマエが立てるか?」
「…………バカを言うな。ち、知略よりも武勇こそが我が本分。武将たる者、力をもって己を示すものなりと……コ心得よ!」
「オマエいま少し噛んだだろ。――まぁいい、話を戻すぞ」
ムシウルがおさらいする。
「いまグランダムが言った通り、僕たちが陽動。オマエたちがマンドラゴラを回収する手筈だったはずだ。もっと言えばセレビネラ、オマエが金剣ライナルト・ガレイアを足止めすれば、グリムガルドは完全フリーになれるはずだろ。それがどうして、誰にやられるんだよ?」
「それが、ちょっとイレギュラーがあって。3つ」
「ほう、そりゃまた随分多いな。言ってみろ」
「まず1つは敵が増えたことよ。今までは金剣のライナルトだけだったけど」
「ははん、なるほどな。読めたぞ。さては残る"銀"と"銅"、次男坊と三男坊も来たな?」
「ええ、そう。あなたの言う通りよ、ムシウル」
「む……? 2人とも何の話だ、金銀銅とは」
「なんだオマエ、まさか知らないのか? 金剣ルミナリス、銀剣アルシャジオ、銅剣シャンバラ。3本もある厄介な魔剣が、ある三兄弟をそのまま使い手に選んだんだ」
「そう。一番上が金、真ん中が銀、末っ子が銅ってね」
「ではつまり、その"銀"と"銅"の使い手も新たに戦局に加わったと……?」
「まぁいずれは来ると思ってたけどね……」
「むぅ……されど恐れるには及ぶまい。我らは四人。敵勢も増えたとて、所詮は"金"に次ぐ"銀"と"銅"に過ぎぬのだからな」
「バーカ。そんな単純な戦力計算じゃ済まないんだよ。確かに金・銀・銅なんて呼ばれちゃいるが……一番ヤバイのは銅剣シャンバラさ。これは聞いた話だが、3本の魔剣にはそれぞれ意思が宿ってるらしい」
「意思……?」
「僕もそこまで詳しいわけじゃない。ただとにかく、魔剣が使い手を操ることがあるんだとさ。あとついでにグリムガルドがもういないんだから4人じゃなくて3人だろうが」
「…………そうであった。しかし如何なることだ? 魔剣が使い手を操るとは」
「本来、剣は持ち主が戦うために振るうものでしょ? でもその3本は違う、そうじゃない。剣が戦うために持ち主を操作することがある……らしいわ」
「バカな、そんなことが……」
「アタシも最初は信じられなかったけど……。少なくとも金剣の坊やには思い当たる節がある。――まぁあれじゃ操られているというより、持ち主の方が剣に振り回されてるって言ったほうが近いような有様だったけど」
「剣にもそれぞれ性格があるって説が有力だそうだ。一説によると金は調和、銀は従順、そして銅は――支配」
「支配?」
「それこそさっき、セレビネラが言ってた通りの意味合いじゃないか? 剣が持ち主の意識を完全に乗っ取り、コントロールするんだろ。自分が戦いたいように戦うために」
「……つまりその"銅"の使い手は、すでに魔剣に意識を侵蝕され、乗っ取られていると?」
「さぁな。そこまでは知らないし、興味もないが。いいかとにかく、これだけは押さえておけ」
一つ目のイレギュラー。
その締めくくりとして、ムシウルは告げる。
「金・銀・銅ってのは単に強さの序列じゃない。せいぜい持ち主にとって、使いやすさの目安ってとこだろう。そして中でも、もっとも警戒すべきは確実に銅剣シャンバラとその使い手だ」
今さらですがパート5はちょっと細切れだったりしますがお付き合いいただけたら嬉しいです(⌒-⌒; )




