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048.「」


 ともかく昨日の件で不幸中の幸いは、解毒が中途半端だったおかげで最後、ライナルトが倒れてくれたことに尽きる。


 おかげでその場ではお咎めなし。

 いろいろとウヤムヤの先延ばしとなり、アルメリアはもとの日常に戻れているわけだから。


 ちなみにあの後は、途中までレドックスと帰り道が一緒だった。


「なんか色々、バレちゃったなー」


 組み合わせた手を、茜色の空にグッと伸ばしつつ。


「とりあえず、お兄さんたちに伝えておいてくれる? 蠱毒のムシウルさんは私がやっつけておきましたって」


「あァ、ムシウル? 何だそれ、誰だ?」


「あなたね……」


 そういえば以前、セレビネラのことも知らなかったのを思い出す。


「いい? もともとこの辺りには敵の幹部格が4人いたのね」


「そーなのか?」


「そーなのよ。夢喰ゆめくいのセレビネラ、戦鎚せんついのグランダム、蠱毒こどくのムシウル。で、最後の1人が」


「あーソイツはさすがにわかんぜ。つっても名前は忘れたけどな。たしかアレだ、グリムなんたらだ」


狂哭きょうこくのグリムガルド、でしょ」


「ソイツだ」


「もう、どこまで無関心なのよ」


「ちゃんと覚えてたろーが」


「覚えてるうちに入らないわよ」


 たぶんレドックスは人の名前を覚えるのが苦手だ。

 だからかアルメリアも妙な呼び名をさんざん付けられている。


(ナメコとかヘチマとかボケナスビとか……)


 覚えられないから変な呼び方をしているのか、はたまた変な呼び方をしているから覚えられないのかは定かでないが、さておき。


「まぁいいわ。とにかく4人いて、グリムガルドはまえにあなたとジルクリフさんで倒したんでしょ?」


「あぁ、ぶっ殺してやったぜ。あの犬っころ」


「セレビネラもあなたがやっつけた。で、一昨日おとといかな。私が倒したのがムシウルね」


「そういやオメェ、殺しはしねぇってタチじゃなかったのかよ?」


「ええ、無用な殺生はいたしませんよ。でも仕方ないでしょ、向こうから襲ってきたんだから」


「鬼畜か?」


「なんでよ。ちゃんと最終警告だってしてあげたんだから、あれは完全に私の正当防衛です。そうでなくとも前に一度、見逃してあげたことだってあるんだから」


「カッ、テメェのやった死骸のまえでセーギヅラかよ。ホモグリフみてぇだな。いくらクチ先で飾ろうが、残るモンは残るってのによォ」


「じゃあレドが私の立場だったらどうするのよ」


「ぶっ殺すに決まってんだろうが」


「なんかもう……。とりあえず噛みつきたいだけなのね、あなた……」


 話が進まないが、とにかく。


「だから残るはあと1人、グランダムだけってこと」


「……あァなんだ、そういうことか。ようやく分かったぜ。要はボッチ、ハンマー、ビラビラ、イヌ……だろ? そこにキンタマ、エログリフ、俺、オメェも加えて元は8人だったってことか」


「それでもいいわ。で、残るはハンマーね」


「はっ、最初からそー言えや。どいつもこいつも名前がまどろっこしいんだよ。分かりづらいったらねー」


 短くしたり、お得意のお下劣変換をかけると覚えやすいのかもしれない。

 ボッチとビラビラとキンタマはいくらなんでも気の毒な気もするけど。(エログリフはもうそれでいいと思う。)


「ところでレド、今さらだけど」

「あァ?」


(さっき乱入してきたのは、レドなりに私を助けようとしてくれてた……とかだったりするのかしら?)


「なに人の顔ジロジロ見てやがる。言いかけてから黙りこくってんじゃねぇぞ。思わせぶりか?」


(あるいは単純に混ざりたかっただけかな……。うん、ふつーにそっちな気がする)


「ううん、やっぱり何でもない」


「んだそりゃあ、言いかけたんなら最後まで言えや」


「私の思い過ごしだったので、気にしなくて大丈夫ですー」


 そういうことにして難を逃れる。


「じゃあ今日はここでバイバイするけど。とにかくお兄さんたちにちゃんと伝えておいてね。ムシウルのこと」


「いや、オメェから伝えりゃいいだろ。どーせもうバレてんだからよ」


「…………」


 それもそうかもしれなかった。

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