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046.「」


 要塞ギルド、ガレイア。


 魔王軍との衝突が続くこの地区では現在、ある一人のポーション屋が大きく話題を集めている。


「はーい! たいへん長らくお待たせしましたー! 本日も開店します! 品数は充分、取り揃えてありますので、どうか皆さん落ち着いて、並んで……」


 店主であり、看板娘としても評判のアルメリア・リーフレット。


 毎朝きっかり同じ時間、彼女によるそんな明るい声がけとともに店はオープンを迎えるわけだが。


 ちなみに――。

 聞いたところによると此処ガレイアでは一時、ポーション不足がかなり深刻化していたらしい。


 本数こそ足りてはいたものの、品質があまりよろしくなく……。

 早い話、アタリハズレがあったそうだ。


 ハズレを引くと効いてもマズかったり、中には副作用付きの代物も出回っていたとか。


 わりとロシアンルーレット状態だった。


 そんなだから冒険者たちも必死だ。

 少しでもマシな品を獲得しようと押し合いへし合い、我先にと乗り出す。


 色合いや透明度、振った際の泡立ち具合から、少しでも安全マトモそうな商品を見極めようとして。


 そんな時代の名残りだろうか。

 アルメリアの懸命なアナウンスも届かず、開店と同時に冒険者たちがドッチャと押し寄せる。


 ポーション屋は他にいくらでもあるのだ。

 少しまえ、ライナルト・ガレイアの要請により、付近の街や王都から幾人かの調合師たちが派遣されたから。


 おかげでポーション不足は解消したし、全体的な品質レベルもグッと引き上げられた。


「これでひとまずは安心か……」


 恒例化しているポーションの獲得競争も、ジキに収まるだろうと見越したのだが。


 現状はコレである。

 冒険者たちはこぞってアルメリアのポーション店に押し寄せ、殺到。

 結局また争奪戦となっていた。


 きっかけは数日まえの騒動。

 森に毒蟲たちが溢れ、多くの負傷者が出たことにある。


 どのポーションも効き目はなく、まるで太刀打ちできなかった。

 しかし唯一、抜群の効き目を示したのがアルメリアのポーション。


「なぁ聞いたか? あそこのポーション……」


「あぁ、すげぇよく効くんだってな。しかも味もちゃんと旨いって」


「そうなんだ。見た目もキレイでちゃんと透き通ってるのに、値段もその辺のポーションとさして変わらないんだよ。何なら安いくらいだ」


「へえ。つーかさあの店主の子、よく見たら結構かわいくね?」


「分かるぜ。とくにエプロン姿がいい。嫁入りしたての新妻感があるっていうか、とにかくめちゃくちゃ似合ってる」


「そうか? どっちかってーと俺は、あの妹っぽさの方が好きだけどな」


「ちょっとはかなげな雰囲気もあるのにさ。言うときはハッキリものを言うんだよ、これが。物怖じしないでビシっとね。こないだジト目をくれたときなんかもう……危うくヘンな扉が開きかけちまったなぁ」


 アルメリア当人もつゆ知らぬところで、そんな噂が口コミで広がっていく。


 で、気づけばこんなことになっていた。

 今やアルメリアのポーション店は、ガレイアでぶっちぎりの人気を誇っている。


 単純にポーションを求めてやってくる者もいれば、半ばアイドル状態と化しているアルメリア目当ての輩も少なからず。


「こらーっ! ちゃんと並んで、並ぶのーっ! 順番守れない人にはあげないよー!? ああっ、そこの人いま抜かしたでしょ!? 戻って! そっちの人たちもケンカしない!」


「よくもまぁここまで……! アルメリアさん、これではとても収拾なんてつきませんわ! せめて価格設定だけでも、一度見直されたほうが宜しいのではありませんこと……!?」


 見かねたギルダとスーランが列の整理を手伝ってくれてはいるものの、それでも押すな押すなの大騒ぎだ。


 実力行使して良ければ楽なのだが、人前ではそうもいかず。


 そんなわけで。


「……わぁ」


 この日もアルメリアは、エサをねだるペンギンに囲まれる飼育員さながらの有様となっていた。



 そして――。


 その様子を遠巻きから、ある銀髪の青年が静かに見据えている。


 まるで理解など遠く及ばないものをみ、さげすむように。


「魔女め……」


 その眼差しは氷のごとき冷たさと、鋭い敵意に満ちていた。

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