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043.「」


「――脱げ」


 いきなりそうと命ぜられた。


 川に流されてぷかぷか揺れること小一時間。

 こんなもんかと引き上げられ、熱を確かめられる。


「よし、しっかりサめたな。やんぞ」


 ……そう言われても。

 服はぐっしょり、ビチョビチョのずぶ濡れだ。

 水もポタポタ垂れている。


「とりあえず着替えたいんだけど……」


 なのでそう申し出たところ。

 返されたのが冒頭の一句だった。


(いや、期待なんてこれっぽっちもしてなかったけど……)


 あまりに予想通りすぎて参ってしまう。


「あのね……私いま、下着まで全部濡れてるんだけど」


「それがどうした。だから脱いじまえつってんだろーが」


「あなたと今からここで素っ裸でケンカしろっていうの?」


「俺は気にしねぇ」


「私が気にしてるんでしょ。そうでなくとも、服だって破れてるし……」


「それこそ脱ぎゃ一緒だろうが。さっさと脱げ」


「イヤよ。おかしなこと言ってないで、いいから一度帰らせて。いいでしょう、それくらい。ここで待ってて。着替えたらちゃんと戻ってくるから」


「……しゃあねぇな」


 ほっとしたのも束の間だった。


「だったら俺も脱いでやる。互いにマッパならビョードーだろーが。ソイツでトントンだ」


「大事件よ……」


 らちが明かないまま、服をグイと引っ張られる。


「脱がねぇならヒンくぞ? ぎとんぞ? さっさとしろ」


 逃がすかよとも言いたげにギラつく視線。

 ぞくりと背筋に走る悪寒。


「ちょ、ちょっと待ってよ……。冗談でしょ……?」


 野獣じみた獰猛な気配が間近に迫り、思わずアルメリアはヒシと自分の体を抱きしめていた。




 さすがにそのままヒン剥かれる、なんてことにはならなかったけれど。


「どーしても帰りてえってんなら勝手にしろ。ただし俺もベッタリついてくぜ」


 協議の末、そこが落とし所となった。


(デリカシー、なんて……)


 いまさらこの男にそんなものを求めたところでムダだろう。

 なんならワードすら知らず「テレパシーなら知ってんぜ」とか平気で言ってきそうだ。


「なに人の顔ジロジロ見てやがる。くぞ」


 あるいはこのままだと本当に剥かれかねない。

 仕方なく、そのまま自宅まで案内する運びとなった。とはいえ。


(しんどい……)


 体力的にきつく、歩みはとてもノロノロ。

 たぶんそろそろ何か言われるだろうなぁと後ろから負のイライラオーラは感じつつ、開き直ってゆっくり進んでいたところ。


「え、ちょ……っ!」


 途中でこれまたレドックスから荷物よろしく小脇に抱えあげられる。


「遅ぇ。どっちだ。トロトロすんな。剥くぞ」

「……っ?」

「なに黙りこくってやがる。どっちだって聞いてんだろーが」

「……こっち。まっすぐ」


 なんかもう、どうにでもなれだった。

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