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041.「」


 それから何がどうなったのか。

 どのようにして逃げおおせたのだったか、アルメリアは確かなことを何も覚えていない。


 ただ1つだけ、ハッキリしているのは――。


(失敗、しちゃった……)


 イズンの助力を得ることは、もはや望むべくもなくなったということ。


『オマエ、このアタシに傷を……。よくも……よくもおおおおおッ!!!』


 傷を負わせてしまった。

 自衛のために仕方なかったとはいえ、怒り狂う彼女の姿だけは鮮明に覚えていたから。


 とにかくこれで、レドックスに対抗できたかもしれない唯一の可能性はついえてしまったわけだ。


 明日もまた、彼は意気揚々とやってくるだろう。

 未だに自分が手を抜いていると思い込み、今度こそ本気で相手をしてもらえると息を巻いて……。


 もうどんな言い訳も通じない。

 バレてしまう。


 自分が本当は奥の手どころか、対抗する術すら持ち合わせていないことが。


「どう、したら……」


 逃げようにも逃げられない。


(だってそんなことをしたら、みんなが……)


 焦燥が募り、思考が絡まる。

 出口も見えなくなって。


(私が何とかしなくちゃならないのに……)


 さらに悪いのは、アルメリア自身も無傷では済まなかったことだ。


 今だってそう。

 蛇のようにまとわりつく細いつたが全身を這い、シュルシュルと魔力を吸いながら成長を続けている。


(さっき全部取ったはずなのに、また……)


 かなりたちの悪い、ドレイン系の苗木でも植え付けられたか。

 しつこかった。


 そのうえ体もひどく重い。

 頭痛がして、熱っぽさまである。


(そういえは、あのとき……)


 逃げる寸前にイズンがなにか鱗粉りんぷんのようなものを撒き散らし、大きく吸い込んでしまったのを思い出した。


(たぶん、アレのせいかな……)


 ともかく息を切らし、体を引きずるようにしながら。

 アルメリアがなんとか帰り着いたのは、森のみんなに建てるのを手伝ってもらったロッジハウスだ。


 庭で育てている花たちや周りの木々から案ずる声も寄せられたが。


「大丈夫、心配しないで」


 短くそれだけ伝えて、ヨロヨロと帰宅する。

 草花や生糸でしつらえたベッド、その上にほとんど倒れ込むようにして身を横たえて。


「…………」


 天井を見上げながら。

 考えなければならないことが山ほどあった。


 でもダメだ。

 今日は疲れきってしまって、考えが上手くまとめられない。


 意識が朦朧もうろうとしていく。


(今日はもう、眠ろう……)


 そうしてアルメリアはまぶたを下ろし、泥のような眠りに沈んでいくのだった。

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