032.「」
刺突の勢いで飛び込み、衝突の只中へと割って入った第四の影。
それがライナルトだと分かったとき、もっとも意表を突かれたのはジルクリフだ。
「なっ、ライナルト……!?」
猛毒に侵され、昨日から床に臥していたはずの兄。
命すら危ぶまれていた彼が、なぜ此処にいるのかと。
そもそもこの状況自体、もとはライナルトを救おうとしての結果だ。
それだから、ちょっと肩透かしな感じにもなってしまう。
「おまえ……平気なのか……?」
「いや、さすがにまったく平気ってこともないんだが……まぁ大丈夫だ。差し当たって問題はない。済まんな、心配をかけて。……レドも」
「してねぇよ。なにハナからくれてやる気もねぇモンの礼だけ先に寄越してんだ。遠回しにクレつってんのか? ヤンねぇよ。アコギか? カツアゲすんな」
「ひどい言われようだな。そんなに噛みつかなくたっていいじゃないか。実際のところ、危なかったんだぞ?」
「実際がどうとか知んねーよ。結果がゼンブだろうが、こーいうのは。チマチマすんな、ケチくせぇ」
「まったく、おまえってやつは……」
「金タマがよ」
「その呼び方だけはやめてくれ、頼むから」
そこに続けられたレドックスの憎まれ口はさておきとしても。
顔色は決して良くないが、容体としてはひとまず持ち直してはいる様子。
「……チッ、シラけちまったじゃねーか。どうすんだ、この空気」
「都合のいいときだけ空気とか言うな、おまえは」
「せっかくノってきたとこだったのによォ」
興醒めとも言いたげな文句垂れ垂れにしろ。
ブォンとひと振りしてから、肩で担ぐようにして剣を引くレドックスだった。
それでいったん、ジルクリフとしても矛を収めることにはしたが。
でもだからといって、それで幕引きとできるわけもない。
「待て、レドックス! おまえにはまだ聞きたいことが山ほどあるぞ!」
追求しようとした。
以前から疑惑はあり、ライナルトとも共有はしてあったことだが。
「何故こんな奴とつるんでいる!?」
ずっと同じ位置にちょこんと立ち、いまの騒乱を見守っていた少女――アルメリア・リーフレットを指さして。
「……こんなヤツ?」
聞き捨てならないとアルメリアはジト目を向けたが。
思いもよらずそれを制したのがライナルトだ。
「いいんだ、ジル。まずは礼を言わせてくれ。ありがとうな。ルミから聞いたよ、俺のために動こうとしてくれてたって。でも大丈夫だ。俺はこの通りだし、たぶんもう心配も要らない。あの子は敵じゃないよ」
「なに……!?」
いったい何の根拠があって……!?
そう食ってかかりかけたジルクリフに、ライナルトは続ける。
「彼女なんだ。昨日眠っていた俺に、解毒ポーションを含ませてくれたのは」




