026.「」
銀髪を一括りに結わえ、鋭い切れ長の瞳を光らせる男――ジルクリフ・ガレイア。
彼は、ガレイア三兄弟の次男坊である。
寛容にして大らかな長兄、ライナルト。
粗暴で荒々しい末弟、レドックス。
その両極に挟まれて育った彼は、自然と律儀で厳粛さを尊ぶしっかり者へと成長した。
規律を重んじ、秩序を乱す者は粛清する。
そして、力なき弱者を剣で守る。
その騎士道こそがジルクリフが掲げる、揺るぎなき信念である。
彼にとって「魔」とは、あまねく討滅すべき存在にほかならない。
たとえどれほど人の姿を装おうとも、言葉を尽くして理解を乞おうとも。
魔は魔だ。
情けや慈悲を与える余地は微塵もない。
だからこそ今、ジルクリフは全霊の殺意をアルメリアに突き付けていた。
『さっきから何を言っているのかよく分かりませんね。マンドラゴラ……? そんなもの此処に生えてるわけないじゃないですか。とにかく帰ってください。ここはもう私の――魔女の住処ですので。金輪際、立ち入り禁止です。悪しからず』
その正体が、かつて為す術もなく敗北を喫した"あの魔女"だということは、もはや疑いようもなかったから。
『もう分かっただろう、ジル。俺たちじゃ、あの女の子には太刀打ちできない。ここはレドに任せるんだ』
『任せろだと……!? ふざけるな、そんなこと認められるものか! だったら……だったら俺は何のために……!』
『ジル、気持ちは分かる……。だがここは、受け入れてくれ』
結局そのまま、魔女のことはレドックスに引き継がれることになって。
バカげている。
無用な血はできるだけ流さずに済ませたい――そんな甘い考えのために、魔女を説得しようなどと言い出したライナルトの発想も。
(すでに魔王軍の息がかかっているかも分からないんだぞ……!?)
よりによってその任が、弟のレドックスに回されたことも。
故にこの数週間、ジルクリフは悔しさを噛み殺しながら日々を過ごしてきた。半分は己の力不足を呪うものだったが、もう半分は。
(奴さえ居なければ……!)
魔女への激しい憎悪、怨嗟となって費やされる。
だがそれも――今、この瞬間までだ。
高々と剣を抜く。
すでに魔女の正体と断定した少女、アルメリア・リーフレットにその切先を向けて。
「今この場で、おまえを斬り捨てる」
刀身が千鳥の唸りをあげて帯電し、雷槍が突き放たれる。
「……そ、ご立派ですこと」
同時にボコンと地を砕く轟音。
無関心そうなジト目を送り、佇むアルメリアの足元からビキビキと地割れが走る。
地下より無数の木の根が噴出し、荒々しく這い上がった。




