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018.「」


 4連勝。

 5連勝。

 6連勝。

 7連勝。


 それからも結局、毎日のようにレドックスはやってきたもので。

 日を追うごとにアルメリアの連勝記録は伸びていく。


 早いもので、もう1週間だ。


「今日で私の8連勝目。8勝0敗……いえ、あなたからすると0勝8敗なわけだけど」


「おうコラ、いまの言い直しどう考えても要らなかったろーがよ。わざわざイラッとくる方に変えてんじゃねぇぞ。やっぱドエスか、オメェ」


「ねぇ、いつになったら諦めてくれるの? あなた」


 あいも変わらない口の悪さには触れず。

 アルメリアは疲れたように、溜息まじりにそっと問いかけた。


 ちょこんとしゃがみ、だんだん転がし方のコツが掴めてきたレドックス。

 今日も芝の上で大の字となっている彼を、確保した安全圏内から見下ろしながら。


 そう、今日でもう丸1週間だ。

 曜日がぐるっと一巡した昨日でキリもよかったので、そろそろ諦めてくれるのではと淡い期待も寄せていたが。


(甘かったかぁ……)


 今こんな感じである。

 5日目あたりに現れたときは思わずジョウロをポムんと取り落としてしまったものだが。


(ここまでくると……)


 10日目、14日目。

 この先にいくつかありそうなマイルストーンを超えたところで、この男が諦めるとも思えない。


(下手したらこのまま1カ月……いや、もしかしたらそれ以上……!?)


 恐ろしくなって尋ねてみれば、案の定。


「諦めるだァ? はっ、笑わせんじゃねぇ。どの口がほざいてやがる。こんだけコケにされてオメオメ引き下がれっかよ。言ってんだろうが、勝ち逃げなんざ許さねぇ。どんなユズっても百発はブチ込んでやる。覚悟しとけや」


 勝ち誇ったかのようにヘンと牙をかれた。


「ひっくり返りながらよくそこまで大口叩けるわね、あなた……」


 呆れを通り越して感心させられるやら。


(やっぱりそうなんだぁあ……)


 予想通りすぎて、みええんと悲しくなるやらだった。



 ――1つだけある。

 このエンドレス状態を終わらせるために、何より手っ取り早くて確実な手法が1つだけ。


 再三に渡って警告はした。

 次に来たらもう容赦しないとも、もう何日もまえから宣告してあったことだ。


 でも結局、アルメリアは踏み切れていない。

 これは6日目のことだが。


『俺をヤルって手もあんだぜぇ?』


 レドックスから挑発的にあおられ、首に木の根をグルリと巻きつけるところまでは実演したけれど。


『……ねぇ、本当にいいの?』

『構わねぇつってんだろーが。さっさとやれや』

『い、今ならまだ特別に……許してあげなくもないかも、ですけど?』

『なァに今さらビビってんだァ? オメェがやるつったんだろうが。きっちりシめろ』


 そこ止まりだった。

 見境なく襲ってくるような魔獣とかならまだしも。


 人をあやめた経験なんて、アルメリアにはない。

 口ではいろいろ言ったけど、あんなの全部ハッタリだ。


『なにショボくれてやがる。らしプレイか?』

『……うるさい』


 できなかった。



 それで今、こんな感じだ。

 気付けばズルズルと一週間。

 もはや日課のように、しつこいリベンジに付き合わされている。


 コケ脅したって今さら効かないだろう。

 あのときの炊き直しになるだけだ。


 そんなこんなで、なかなか煮え切らないことになっていて。

 我ながら不甲斐ないやら、情けないやら。


「はぁ」


 ため息を零すアルメリアだった。


「なんでオメェがため息ついてんだよ。そうしてぇのはこっちだぜ」

「……なんでよ」


 そうして迎えた十日目。

 ついにレドックスは十連敗目を喫して。


(本当に、いつまで続けるつもりなのかしら……)


 辟易へきえきもしたのだが。

 ――ところがだ。


「……?」


 11日目。

 いつもの時間になってもレドックスは現れなかった。

 

 次の日も、その次の日も。

 いくら待っても彼はやってこない。


「いやべつに、待ってないけど……」


 刷り込みって怖いな……とか思いつつ。

 とはいえ。


「どうしたのかしら……?」


 気になる。


「いやいや」


 …………気に、なった。

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