017.「」
たしかに最初に彼を打ち負かしたとき、アルメリアはこう告げている。
『これに懲りたなら、もう此処へは来ないことね。分かった? ちゃんと約束できるなら、今日のところは見逃してあげてもいいけど?』
たしかにそのような文言だった。
だけど、それは。
「もう、そんな意味のわけないでしょう!?」
腰に手を当てがいプンスカ、ビッシと叱り飛ばす。
それは昨日と同じく、御用としてやった謀反人に向けての一喝だった。
レドックス・ガレイア。
まさか本当に、昨日の今日で再挑戦してくるとは思わなかった不調法者への。
(なにかおかしいと思ったら、そういうことだっだのね……!?)
昨日のことだが。
『はっ、ソイツぁいい』
言い渡した途端、レドックスはそう勝ち誇ったように笑っていたし。
『二言はねぇな?』
『……? ないけど?』
言質を取るなり、そのままやけに素直に引き下がったから。
ひとまず問答無用といきなり申し込まれ、食ってかかられたリベンジ・マッチについてはすでに勝負も付いている。初戦とほぼ同じ展開を辿り、何とか打ち負かしてやったところになるが。
「あァ、何が違ぇってんだ? 俺はキッチリ約束守ってやってんだろーが。イチャモンつけてんじゃねぇぞ」
今回は吊し上げではなく、お縄に付かされながら。
当の本人と来たらまったく、悪びれる様子すらないものだからたまったものじゃない。
プチっ……!
プチプチプチん!
「イチャモンじゃないし……! ちっとも守ってなーい!!!」
怒り心頭、くらーとなった。
「そんなのただの屁理屈じゃない! 分かる!? へ・り・く・つ!!」
「ガミガミうっせぇな。説教タレんなよ。頭ごなしの母ちゃんか、オメェ」
「あなたねぇ……!」
言いたい文句はまだ山とあったが。
「とにかくっ!」
これ以上は時間のムダと、グッと我慢。
飲み込んでから、アルメリアはピシャリと言い放つ。
「此処にはもう二度と近づかないで! いい? 懲りたとか懲りてないとか関係ないからね! 次来たらもう、本当に容赦しません! 命だってないんだから!」
「はっ、寝ぼけたこと言ってんじゃねぇ。んな言い分、まかり通るわけ」
何か言いかけてたみたいだけど、取り合わない。
「通ります。通します。こういうのは勝った側がルールですから」
グルンと体に巻き付かせた木の根で簀巻きとする。
口までバッチリ塞ぎ、モゴモゴ暴れる様子はあるも時すでに遅し。
そのままグググッと目一杯にしならせて。
「さよなら」
カタパルトしてあげた。
人里のある方角に向かってピカーんと空に消えるお星さまだ。
(着地は……まぁなんとかなるよね。元気そうだったし)
「まいっか。かーえろっと」
良き空の旅を祈りつつ。
足をポンと放り出すようにして帰路についたのだった。
これでアルメリアの2連勝。
もう来ないことを心から願っていたのだが。
残念。
その更に翌朝からしていた、何となくのイヤな予感は的中してしまう。
性懲りもなく。
「来てやったぜ」
木刀をブォン。
「……今日はどんな屁理屈を考えてきたの?」
「すっトボけてんじゃねぇよ。オメェの言ったこったろうが」
レドックスの言い分はこうだった。
『二言はねぇな?』
『……? ないけど?』
一度そのやり取りを介したのだから。
「今さらチャブ台返そうたってそうはいかねぇ……!」
今さら覆せない。
言い分の変更は認めないと。
つまり――。
「こっちがへこまねぇ限り、何べんだろーが再挑戦は受け付ける」
「…………」
「そういうこったろうがぁああッ!!?」
「……そんなわけないでしょ」
3連勝。




