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9.体育祭 ジャンプ

ミチとの打ち合わせ通り、日葵は箱に手を突っ込んだものの中身の紙は引かなかった。

先に引いた人達はミチのマイクパフォーマンスによって既にお題が発表されて、人なりモノなり借りる事で声が飛び交い盛り上がっている。


「はぁい、皆さん!注目下さい!!」

一段と声が大きくなったミチは、皆の注目を浴びるまで時間を使った。


「ここで、出ましたぁ!実行委員プレゼンツのお題です!!こちらの3つのお題、全てクリア出来れば、名乗り出てくれた人のクラスにボーナスポイントが入りまぁす!!」


〝うぉぉぉぉー〟と一段と歓声が上がり、そして静かにお題に注目する。

日葵は横からチラリとお題が書かれた紙を見て、諦め顔でそっと皆にわかる位大きく首を横に振った。

(こんなの全て当てはまる人居るはずない…)


「まずは…今日持ってきているタオルの色が青い」

うわぁ~と声が漏れ、青くない人はキョロキョロと周りを見回し、青いタオルを持っている人はその場で掲げる。


「次に…家族か本人の名前にワタクシと同じ〝ミチ〟の言葉が入っている人。これはお父さんのミチオさんでもお母さんのミチヨさん、弟のトモミチさん等、一緒に住んでいる人なら誰でもオッケーです」

さすがに、これで人数は相当減ったかもしくは該当者は居なくなったかもしれない。


「最後に…」

〝まだあるの~?〟と声が上がる。たしかに限定し過ぎて半ばみんなすでに自分には関係ない、と個々に話をし出している。


「今日誕生日の人!!」


一瞬静まりかえり笑いが起こる。

もう笑うしかないのだ。

〝居るわけないよ~〟〝無理、無理、無理〟と声も上がる。

日葵もそう思う。

“今日誕生日”のお題だけでも、該当者が居るかどうかだし、日葵が観客席に居たらきっと皆と同じ反応をしていたはずだ。


ザワザワしている中、〝はい〟とそっと手を上げて恥ずかしそうに前に一歩出てきた人が居た。

日葵は息が止まりそうになる。

彼は、同じ図書委員の後輩【松本通成】クンではないか…?

そういえば、競技中にちょいちょい聞こえたアドバイスの声が、彼の声に似ている事に気が付く。

(まさか彼が私のこの特殊能力に関わる人…?)

今まで松本クンと何かしらで関わったことは無い。

ただ委員会が同じで、名前を知っている程度だ。


日葵が身動き出来ずに居ると、後ろから

「オレ、オレ!」

と声が聞こえた。

「三宅…?」

「えっ?」

ミチと顔を見合わせる。

観衆は主役が2人出た、と大盛りあがりだ。


「今日誕生日なの?」

「あぁ、さっき言いそびれたけどさ。斎藤と1日違いだけなんだ」

三宅の肩には青いタオルがかかっている。

ミチが、松本クンを呼び寄せマイクを持ち直した。

松本クンは、自分のタオルを取ってもらい、ミチの横に並ぶ。


「皆さん!この限定されたお題になんと奇跡的に2人も手を挙げてくれました。念の為答え合わせをしていきますよ。2人とも、タオルは青色ですね」

2人がタオルを分かりやすいように見せる。


「はい。松本クンは自分の名前にミチが入ってるんだね。三宅クンは、どなたにミチが入ってますか?」

マイクを向けられた三宅は、

「オレの母上の名前はミチエだぁぁ~」

と叫んだ。

「で、2人とも今日が誕生日と言うことで間違いないですか?」

2人はそれぞれ首を縦にふったり、手で丸を作ったりして認めた。


「では、このお2人に盛大な拍手を〜!お誕生日もおめでとう!」

ミチの誘導で、3人揃ってゆっくりと走り出し半周回りゴールテープを切った。

まさかこんなお題に2人も該当者が居るなんて。

そしてこの2人が本当にご縁がある人なのかしら…?

日葵には、なんだか不思議な腑に落ちない思いだけが残る。





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