表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

5.誕生日特典…?

いつもの時間に家を出たのに、早く学校に着いた。

遡れば、なぜか最寄りの駅に早く着いて、いつも乗る電車の一本前の電車がちょうど着いてすぐに電車に乗れた。

そして、下駄箱に着いて靴を履き替えて、ちょうど購買前で三宅くんに会った所だ。


「おはよ、斎藤」

「おはよう、三宅」

爽やかイケメンは、サッカーの朝練が終わった所らしい。まだ汗が残る前髪をタオルで拭きながら、隣に並んだ。

早い時間だから、近くに他の人はいない。


「今日誕生日だよな?」

「うん、昨日はミチを通してありがとう」

「お祝いにジュース奢るよ。何がいい?」

「ホントにいいの?」

「おぅ」

「じゃあ、このレモンのジュース!」

「コレ、美味いよな。オレもそれにしよ」


自然に2人並んで教室に向かうことになる。

日葵には、なんでこうなったんだろ…?と考える暇もない。


「今日はもう予行練習だけで終わればいいのにな」

「流れの確認だけなのに1限目は普通に小テストだしね」

「うそっ!」


クラスの扉を開ける。

「おはよ~」

数人がすでに居て、それぞれ過ごしている。


そのまま並んで窓際の後ろの席に座る。

「テスト範囲どこ?」

「今度の中間テストの範囲の手前まで。まとめたノート見る?」

「見る、見る。助かる!」


日葵はすでに復習済なので、テストも自信がある。

2年のこの時期に体育祭で1日つぶれるのだから、進学校のこの学校も学力を維持させようと必死なんだろう。

隣の席でブツブツ言いながら、必死に詰込む三宅の横顔をチラリと見る。

運動部員特有の集中力で乗り切れるタイプで、決して成績が悪いイメージはない。

段々とみんな登校してきても、三宅はいつもの様にみんなとふざける事もなく、集中している。


「あぁ~!!」

急な声にビックリして顔を上げる。

「レモン売り切れだったのは、お前らのせいか!」

叫んでいるのは、三宅といつも一緒のサッカー部、祐二だ。

「三宅、お前はオレがこのレモンを飲むのを楽しみに朝練を頑張ってるの知ってるよな…」

祐二は泣きそうな顔になりながら話す。

「斎藤も斎藤だ。今日に限ってなんで飲んでるの?」

「あっ、ごめん」

日葵は素直に謝る。


「斎藤は謝る必要はない。コ・イ・ツが!運が無かっただけだ」

三宅が差した指を思いっきり、祐二が掴む。

「この指さえ憎たらしい!」

曲がらない方向へ曲げて、

「痛い!痛い!」

と三宅からタップが入る。

日葵はそんな2人を見ながら、微笑む。



「斉藤ありがとう」

一通り読み終わった三宅から、ノートを返してもらう。

「めちゃ見やすかった」

「お役に立てて良かった」

日葵は受け取ったノートを机の中に戻す。


「看護師になるんだっけ?」

三宅の言葉に頷く。

「うん。なる為の大学に行くつもり」

三宅はニコリと笑った。

「斉藤に合ってるよ」

「そう?」

日葵も微笑みを返す。


やっぱり爽やかイケメンはいつでも爽やかだ。

胸が躍るが、現実的じゃない。

会えるアイドルに会ってるみたいだ。


アイドルといえば、この前申し込んだライブのチケットどうなったんだろ…?

まぁ、ダメ元で申し込んだから当選は難しいけど…、とそれでも早めに確認しようと頭に留めておく。

チャイムが鳴って担任が入ってきて、テストの体勢に入った。


テストは予想通りの問題で、ヤマを張った所がかなり当たっていた。これなら小テストの自己最高点が取れるかもしれない、と手応えを感じる。

隣の三宅からも、シャーペンを動かす音が途切れないから順調なんだろう。

充分に見直しまでして、試験を終えた。


2時限目から、着替えてグランドに出る。

準備体操から始まって、当日の流れに沿って進行役のアナウンスが入る。

図書委員の日葵は、自分の役割もプログラムを見て確認する。


「あっ、ミチ!太いマジックない?」

本部で他の役員と話をしていた実行委員のミチに声をかける。


「それが、さっき誰かも探してたんだけど見つからなくて…絶対2本位持ってきたんだけど」

「借り物競争のお題を今のうちに決めておくんだって」 

日葵は道具入れの中を探った。

「あっ、あるよ!借りてくよ!」

颯爽と去る日葵の後ろ姿を、不思議な気持ちでミチは見送る。


「あれ?さっきひっくり返して見たけど、無かったよね?」

「あっ、ついさっき誰か返しに来てたよ」

「そうなんだ…」

ミチは、再び日葵の背中を見送る。


しばらくして、再び日葵が本部に来てミチに話しかけた。

「ミチ、ビブスない?リレーのアンカーに着せるんだって」

「それが、ビブスが…」

ミチが話始めた途端に、サッカー部顧問が現れた。

「実行委員、リレーの時に使って」

手にしてたのはビブスだ。


「先生、ナイスタイミング!」

日葵が早速受け取る。

「ミチ、ありがと」

日葵はまたバタバタと急ぎ足で去る。

そのまま見ていると、アンカーに配りながら三宅と話をしているのが見えた。


「日葵、あんたさぁ…」

「ん?」

練習が終わり、借り物競争のお題を預けに来た日葵はミチに呼び止められた。

「何か変わった事ない?」

「昨日の続きぃ?それが何もないの。ミチを思い浮かべて未来や過去を念じても…ほら、何も浮かばない。もちろん時間も止まらない。ただ、今日は誕生日特典なのかちょいちょいいい事が重なる位かな」

「そう…」

ミチには、引っかかる事があるがまだ確信が持てない。


「実行委員お疲れ様」

保健体育の本田先生が、“はいっ、はいっ”とジュースを配り始めた。

「本番も頼むね〜」

そのまま、近くにいた日葵にも渡す。

「先生、私は実行委員じゃありません」

「いいよ、いいよ。どうせ余るから斎藤にもあげる。ラッキーだったな」

日葵はニッコリ笑った。

「ありがとうございます!」

ミチは日葵の腕をつかんだ。

「日葵、今日一緒に帰ろう」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ