16.ミチの救出
「お前さん達…」
お爺ちゃんが話しかけると、振り返った2人のうちバイクの男は声にならない声を上げた。
「…さっきの爺さん!なんでここに…?」
「よく覚えとったな…いやぁ、実は孫があんたに話があるって言うから」
「はぁぁ?何言ってんの」
日葵は、一歩前に出る。
「あんた、私の友達の居場所を知ってるでしょ?」
「はぁ〜?」
あからさまにバカにしたような態度を取り、そのまま小さい男に目配せし、階段を上がろうとする。
「じゃあ今から携帯鳴らしてみよっと」
日葵はこれ見よがしに三宅達に携帯画面を見せ、ミチの表示を確認させ、連絡をする。
着信音がバイクの男のポケットから鳴っているのは、一目瞭然だった。
ヤツがポケットの上から押さえつけて必死に隠そうとしても、最大音量の着信音は鳴り響く。
こんな派手な着信音、ミチ位しか使わない。
「何でミチの携帯をお前が持ってるんだ?」
三宅が一歩前に出た。
「ミチは今どこに居る!」
一段と大きくなった三宅の声をはね返す様に、バイクの男は言った。
「知らねぇなぁ」
小さい男が、松本クンに近づく。
胸ぐらを掴むと、
「うるせぇ事言ってないで、お子様は早く帰って寝ろ!」
と凄む。
日葵はヒヤヒヤするも、松本クンは涼しい顔だ。
そのまま胸ぐらを掴まれた腕を取ると、華麗に背負投を決めた。
「えぇぇ~!!」
驚く日葵の横でお爺ちゃんが拍手をする。
「令和の姿三四郎クン、お見事っ!」
三宅はバイクの男から、ミチの携帯を取ろうとし、同じく腕に関節技をかけている。
大の大人に負けずに、攻撃を続ける2人に安心感さえ生まれる。
「日葵、ここは2人に任せて、ミチさんを救出に行ってきなさい。2人がケガをしないようにお爺ちゃんが見守ってるから大丈夫だよ」
どっちかというと、2人より犯人達の方がケガをしそうだ。別にそれは一向に構わないのだが…
日葵は、隙間をくぐって階段を急いで上る。
一番手間の扉を開けて
「ミチ!」
と大声で叫んだ。
入ってすぐの部屋の押し入れを開ける。
手足を縛られたミチを見つけ、すぐに目隠しと口のタオルを外す。
「大丈夫?」
ミチは2.3度まぶしそうに瞬きをした。
「日葵、遅いよ!あぁ~怖かった」
一気に力が抜けたようだ。
そのまま手足を開放させて、押し入れから出させた。
まだ支えてあげないとしっかりと歩けない。
「怖かったぁ…」
ミチはそのまま日葵に抱きついた。
「もうダメかと思った…」
静かに泣いているミチの背中を優しく撫でる。
「大変だったね…もう大丈夫」
遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
「あのサイレンはこっちに向かってるのかも」
日葵は一旦外の様子を確認しようと、そっとミチから体を離して玄関に向かい勢いよく扉を開けた…途端に扉に衝撃が走り、一瞬扉が戻される。
「えっ?」
すぐに顔を出して確認する。
「斎藤ナイスタイミング!」
扉にぶつかったバイクの男が、顔を押さえてうずくまっていた。
すぐに三宅が背中から馬乗りになって、バイクの男を動けない様にする。
「サイレンの音で急に逃げ出したんだ」
日葵の後ろから、ミチも顔を出した。
「…三宅?」
「ようミチ!」
「ねぇ、あっちも見てみなよ」
日葵の指す方向に、ミチが視線を移すと眼下には人だかりが出来ている。
「みんなミチを探してたんだよ」
「あれ、ミチだ!」
「無事だぞ!」
ザワザワと声が上がっている。
こっちに向かって手を振る同級生達。
泣き出すミチの手を握ると、まだその手は震えていた。日葵は強くその手を握った。




