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15.あなたの出番

細かいお菓子を入れる専用の小さい籠が山盛りになってる。

それを見て、あからさまに例の店員は嫌そうな顔をした。怖いのは、犯罪に関わりそうな見た目をまったくしてない事だ。

その店員の今の心の声をオモテに出すのなら、

「なんでこんな終わり際の時間に、こんなちまちま細かい菓子ばっかり持ってくるんだよ、爺さん!」

そんなトコだろう。


お爺ちゃんは、のらりくらりと勝手に話し出す。

「孫がお菓子が大好きでねぇ。これが無いとテスト勉強が進まないって言うから、こんな夜中なのにねぇ」

「お爺ちゃん、コレも買ってぇ」

日葵は横から、10円単位のガムを5つ程追加する。

「1時間に1個ずつ食べるからね」

店員が籠からすべてお菓子を取り出して種類別に並べだした時、日葵は少し離れた本棚のコーナーへ足を運び、店員から離れた。


次の瞬間、手には携帯が握られていた。

もちろんこれは日葵の携帯ではない。

機種が同じ、ミチの携帯だ。

(お爺ちゃん、探し当てたんだね。ちゃんとケースの色から伝えておいて良かった)


日葵はすぐに携帯の電源を入れ、着信音を消し、バイブ機能をオフにした。

これで相手が気付かれなければ、位置情報は共有できる。

携帯をそっと隠して会計を待つお爺ちゃんの手にそっと携帯を渡した。

「お爺ちゃん、お菓子沢山買っちゃったね」


次の瞬間、お爺ちゃんの手からは携帯が無くなっていて、店員はやっと集計を終えた。

「1230円です。現金のお支払いで?」

「あぁ、そうしておくれ」

「お爺ちゃん、ありがと」


車に戻り、あの店員が帰宅するのを待った。

その間に日葵は三宅にラインする。


〝ミチの携帯の電源が入ったよ。位置情報を確認して追いかけます。ストーカーが持っている可能性が高いからくれぐれもバレない様に〟

しばらくして三宅から返信があった。

〝了解。オレも追いかける〟


相手はバイクで通勤している位だから、きっとそれなりの距離があるはずだ。

だから自転車の三宅は、そのままでは追いつくのに時間がかかる。

同じくらいの位置から出発するのであれば、車の日葵達の方が絶対に早い。


「あっ、出てきたよ!」

安子叔母さんが車のエンジンをかける。

お爺ちゃんはあの男の印象に残ってしまっただろうから、と後部座席へ移動して、助手席には美子叔母さんが座った。

また船を漕ぎ出したお爺ちゃんの横で、日葵はガムを噛んだ。まだ睡魔に負けるわけにはいかない。


安子叔母さんは、バイクと適度な距離を取りながら跡を追った。

信号が赤になって離されても、安子叔母さんがヤツの過去を念じ、位置情報と照らし合わせて追いかけた。


「日葵、爺さんを起こして降りる準備しな。もう少し先で検問をやってる未来が見える。バイクのヤツは脇道に入るわ」

「えっ?」

「車では入れない脇道よ。ここからは歩くしかない。それにおそらくミチまでも遠くない」

「分かった!」


お爺ちゃんを起こし、車から降りる。

ミチの携帯の位置情報を元に道なき道を歩き出す。

その時、バイクの音が聞こえた。

「お爺ちゃん、隠れて」


民家の塀に沿って身を隠した横を、あのバイクが通っていく。ヤツのヘルメットだったから間違いない。

そして、身を隠したすぐ先で、キッとブレーキの音と赤いランプが光った。


日葵はお爺ちゃんに合図する。

お爺ちゃんは、楽しそうにフフフと笑った。

ヤツが金属の古びた階段を、カンカンと上り始めた時、ガタンと音がしてバイクが倒れた。

気付いたヤツは、バイクを起こす為にまた階段を降りる。


直し終え、携帯を見ながら階段を上り、2階まで上り切った時、一瞬でまた1階に逆戻りしていた。

(お爺ちゃん、あの人担いで降りたのかな…?)


さすがにオカシイと思ったのか、ヤツは周りをキョロキョロと見渡して自分の顔を叩いた。

今度は携帯を見ずに、確認するように1段1段階段を上っていく。

2階まで上りきってホッとしたのもつかの間、次の瞬間はバイクの横の駐車場で寝そべっている。

挙句の果てに、停めてあった車の盗難防止装置が作動し、クラクションが鳴り響いた。


ヤツはすぐに起き出し、逃げるように階段をかけあがる…もすぐに足の違和感に気付き、靴底を見た。

両足にべったりとガムがくっついている。


ガチャっと音がして、1階の住人が車のクラクションを止めに出てきたのをヤツは階段の陰に隠れるようにして、やり過ごしている。

そして、その様子を日葵は物陰からこっそり観察する。

(時間稼ぎは出来ている。三宅が来たらお爺ちゃんと3人で突撃しよう。時間を止められるお爺ちゃんが居れば無敵だ。それに私の位置情報を確認して、安子叔母さん達が警察を呼んでくれているはず)


1階の住人が無事に音を止めて、室内へと入って行った。ヤツは物音を立てないようにしばらくそのまま動かずに待機している。

その時、2階の一番階段側の扉が開き、1人の小柄な男が階段下をのぞいた。


次の瞬間、

「わぁぁ」

という声が聞こえ、小柄な男が階段を転げ落ちた。

ちょうど階段を上り始めたバイクの男とぶつかり、2人で階段下まで落ちる。


さっき出てきた1階の住人が、物音でまた出てきた。

「こんな夜中になんの騒ぎなんだ!」

男達は、素直に頭を下げ謝った。


この騒がしい中、ちょうどいいタイミングで自転車のライトが見え三宅が来るのが分かった。日葵は、すぐに近づき静かにするようにジェスチャーする、

驚いたことに、三宅は1人ではなかった。


「松本クン…?」

松本クンは静かに

「はい」

と答えた。


「三宅どうして松本クンと?」

「すぐに分かるよ。それよりストーカーは?」

日葵は、塀越しの2人の男を指さした。

手前の塀にはお爺ちゃんが男達の様子を隠れて見ている。

「あの背の高いヤツが主犯格で、小さい男が協力者」


「間違いってことはない?」

「今から証明するから2人はお爺ちゃんの隣で様子を伺って」

日葵は2人を誘導し、一歩後ろに下がった。


次の瞬間、手には携帯が握られる。

お爺ちゃんとの打ち合わせ通りだ。

携帯を操作して、さりげなくお爺ちゃんの隣に移動してお爺ちゃんの手の中へ返す。

…これで準備は整った!





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