14.ミチを探して
安子叔母さんは、日葵の携帯の画面をジッと見つめていた。
日葵はそんな叔母さんの様子と携帯を交互に見ている。
その間も携帯のライン通知が絶え間なく鳴る。
みんなからの情報がグループラインに入り乱れているのだろう。
「居なくなったのは、学校を出てからよね?」
「うん、学校には来てたから」
叔母さんは、目を閉じたり開けたりして画面の中のミチの顔をもう一度見たりしている。
まるでミチの頭の中のデータを送ってもらっているみたいだ。
「皮膚科から出て、クスリをもらう為に調剤薬局に寄ってる。時間は17時30分…それから電車に乗ってるわ。最寄り駅で降りて…一番近くのコンビニに寄ってる。そこでチョコレートの新作の札を見て手に取ってレジに持って行って…でも…何かさっきからおかしいの、駅に着いてから何故かずっと周りの様子を気にしている」
「どういう意味…?」
叔母さんは戸惑う表情で日葵を見た。
「私は、ミチさんの頭の中を覗いているの。だから自然とミチさんが見たモノが頭に浮かんでくる。ずっと…何かを気にしている感じがするわ。駅から歩いていても後ろを振り返ったり、そう、誰かを気にしている」
「それってミチが誰かにつけられてるってこと?」
「その可能性が高いわね。もう少し待って」
叔母さんはまたミチと交信を始めた。
「会計をしようとして携帯画面を見せたら、その若い店員に何か話しかけられて…えっ、携帯を取られたわ。何でこの店はこの店員しかいないのかしら?ミチさんが抵抗して携帯を返すように手を伸ばしたけど、何か言った店員の顔を確かめる様に見て、後ろを振り返った、背の低い男の人が見える。そのままゆっくりコンビニを…後ろに居た男と一緒に店を出ている。まっすぐ道路に出て停めてあった車の後部座席に乗って…車のナンバーは見てない。真っ暗になった。目隠しされたんだわ」
「えっ!」
一気に落ち着かなくなる。
「どうしよう、叔母さん…」
ドキドキしてジッとしてられない。
「日葵、爺さんに電話して。私は美子に連絡するわ。あの2人が居れば、何か解決できるかも」
*****
コンビニに向かっている途中で、三宅から電話が入った。
「斎藤、今どこに居る?」
細かい事を話す訳にもいかず、ミチの家近くに向かっている事を伝える。
「実は、…ミチから聞いてたんだ」
「えっ?」
「しばらく前からつけられてるような気がするって。笑って話すからオレも本気にしてなくて…ミチの勘違いじゃないか、でもなるべく誰かと一緒に帰る様にしろよって言って念の為、位置情報のアプリも共有して終わったんだけど…今さらだけどもうちょっと真剣に聞いてやれば良かった」
「ミチ、私には何にも言ってくれなかったんだけど…」
「勘違いだったら申し訳ないから、女友達には言えないって言ってた。余計な心配もかけられないって」
就寝していたお爺ちゃんを、有無も言わさずに強制的に車に乗せ、途中で美子叔母さんを拾った。
安子叔母さんから簡単に事情は説明されていたが、改めて道中で美子叔母さんに話をする。
お爺ちゃんは、耐えきれず助手席でコックリコックリと船を漕いでいた。
「爺さんは、出番の時だけ起こせばいいから」
安子叔母さんの言葉に従い、そのままそっと寝かせておく。
コンビニから直接見えない位置に車を停めた安子叔母さんは、そっと運転席から降りた。
すでに日は変わっていて、辺りは静かだ。
「あの店員が居るかどうか見て来る」
ゆっくりと歩いていき店の外からさりげなく店内を覗いている。
そしてそっと車へ戻って来た。
「あの店員だ。間違いない」
「携帯を取り上げたって事は、あの店員も何か関係してるってコトよね?」
美子叔母さんの質問に、2人で頷く。
そして作戦を立てる。
「まずは私と美子で店に行ってくるわ」
「お互いにあの店員の素性を探って、急いでミチが今どこに居るかを手繰りよせよう」
叔母さん2人が車を降りた後、祈るような気持ちで待つ。
(今、私が出来るコト…)
三宅からラインが入っている。
三宅もこの近くの駅からミチの家までを自転車で探しているみたいだ。
すぐ近くを通っているかもしれない。
三宅にラインをする。
〝三宅、ミチと位置情報共有してるって言ったよね?〟
〝してるけど、オフになってるよな?〟
〝私も近くに居る。また進捗連絡する〟
叔母さん2人が急ぎ足で車に乗り込んできた。
そして2人同時に一気に話し出すから、頭を追いつかせるのに必死になる。
「主犯格はあのコンビニの男よ!ミチさんの後ろに並んでいた男にお金を払っている過去が見えたわ。
そしてもうすぐ勤務時間が終わる、勤務表が午前2時までだった」
すぐに時計を確認すると、あと15分だ。
「ヤツはバイクにのって古いアパートに向かう。そこで、安子姉さんの言う男と合流するわ。そこでもお金を渡していた。入ってすぐの押し入れを開けて、閉じ込められているミチを見た。大丈夫、目隠しはされているけれど、危害は加えられてない。私が見る未来は、断片的にしか見れないけど、安全に早くミチを助け出してあげないと」
「相手はバイク。ミチの居場所を確実に相手に分からない様に特定出来る方法…」
「車でも細心の注意を払って追いかけるけど、相手はバイクだし、絶対に見失わないと言う保証がない」
「過去も未来も、あの店員の行く住所とか特定の場所がわかる手がかりは?」
2人は頭を振った。
「もう少し時間があれば遡れたかもしれないけど、今の会計の時間だけじゃ…」
「未来もアパートの外観は浮かんだけど、細かい住所までは…。でもアイツの頭の中を追跡していけばある程度は追える」
「そうね、私もヤツが見たものの過去を見れば少し遅れるけど追えるわ」
「今出来ることで、叔母さん達の力が及ばなかった場合の保険は…一刻を争うし出来れば人数がいた方がいい…よしっ!」
日葵はお爺ちゃんを強く揺すって無理矢理起こした。
「お爺ちゃん起きて!出番だよ。帰りに牛丼奢ってあげる!!」
「えっ、牛丼!?」




