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どこかの異世界のメカバトル

作者:

 のどかな田舎道――


 どこを見渡しても、畑が広がり、澄んだ青空が広がっている。


 雲がゆるやかに流れ、穏やかな陽光が地面に降り注ぐ田園風景。


 そんな中、一風変わった旅人が重厚なゴーレムを操り、荷馬車を引いていた。


 そのゴーレムは、一般的なものとは明らかに異なっていた。


 立ち上がれば三メートルほどの体躯。光を受けると金属のように輝く。


 だが今は、膝が逆関節のように折れ、足元の駆動系が展開されている。

 ホイールが回転し、低く唸るような音を立てながら移動していた。


 名称は――『タクティカル・ストライカー』――


 正真正銘の人型機動兵器。


 通称――『T.S GXT-X01型』


 どの時代に作られたのかは定かではない。


 少なくとも、現代の技術を遥かに超えた、未知の技術で作られたものだろう。


「エリス、どうだ? 何か変化は?」


「なーんもなくて、退屈っ! あーあ、平和すぎて乱れないかなぁ!」


「何言ってんだ。何もないのはいいことじゃないか。のんびり行こうぜ」


「……そら、なんもしてないフィルはいいよね。私はずっと周囲警戒してるんですけどぉ?」


「はは、感謝してるよ。エリスさま」


「もう……調子いいんだから」


 フィルと呼ばれた若者――正式には『フィルレンシャル・ブッシュボーン』。


 ダイナミシスト帝国の片田舎に生まれた、貧乏貴族の三男。


 家の長男は騎士の称号を受け継ぎ、七メートル程の魔装兵器『グリムヘッド』のキャリバー(搭乗者)となった。


 その結果、次男とフィルは家を出ることになり、次男は家のつてで商売を、フィルは今では気楽な冒険者となっている。


 そんなフィルと会話している『エリス』は、二十センチほどの妖精だ。


 スプリガン――妖精の中ではやや大きめの種族。


 本来、妖精たちは自国に引きこもり、外界にはほとんど姿を現さない。


 だが、エリスはちょっとした問題児だった。


 いたずらが過ぎて国を追放され、今ではフィルと共に旅をしている。


(エリスについては……まぁ、もう少し説明が必要だが、それは後にしよう)


「ストライカー、停止」


「どうした?  エリス?」


「五百メートル先、グリムヘッド六騎確認。解析します」


「……なんだ?  なぜこんなところにグリムヘッドが?」


「……一騎が五騎に囲まれています。解析中」


 フィルは眉をひそめた。


 こんな辺鄙な田舎道で、グリムヘッド同士の戦闘が起きる理由がない。


「マイスター、どうします?」


「……気づかれないところまで近づいてみるか。」


「了解。荷馬車を切り離し、物陰まで移動。その後、光学迷彩を展開します」


「了解」


 そう言うと、オレはハッチから操縦席へと乗り込んだ。


 そして、シートに座り込み、VR型のヘッドマウントを装着する。

 

 エリスはオレのシート後方、カプセル状の同調装置へと入る。


 ――シュゥゥ……ガチャンッ。


 カプセルの扉が静かに閉まり、エリスとストライカーのリンクが始まった。


 


「クァンタムジェネレーター、起動――エネルギーフロー安定!」


 ――ヴゥン……ゴォォォォ……!


「ミューオン電子制御板、正常稼働!」


 ――ピピピッ……キィィン……!


「アクチュエーター、高分子ゲル、ボロフェンナノヘキサジン人工筋肉、全系統リンク!」


 ――ガシュンッ……ゴギンッ!


「超伝導フレーム、異常なし! タキオンセンサー、スキャン開始!」


 ――ヒュゥゥゥゥン……シュゥゥ……!


「ジャイロスコープ、同期完了!」


 ――シュィィィン、カチッ、カチッ……!


 


 ―――全システム――オールグリーン!―――

 



「……よし、行くぜ」


『タクティカル・ストライカー、起動――!』


『ストライク・プロトコル・アクティベート!!』


 ――ゴゥンッ!!


 駆動系が唸りを上げ、シートがわずかに揺れる。


 計器の光が一斉に輝き、視界には機体のセンサーデータが流れ込んできた。


 ホイールは内側に収納され、立ち上がった姿は某アニメのスコー○ドッグと某ゲームのア○ァームドの中間のような姿だ。


「これだ……! この感覚……!」


 フィルはヘッドマウントディスプレイの奥で、わずかに口角を上げた。


 映像の全てはこのVRに映りこんだ……というより、TSの各所にある光学センサーにより光の情報を読み込み、それを演算処理された映像を直接脳に送り込んでいる。


 そして、操縦桿はまるで某ゲームのツインステックのような物を握り、足にはフットペダルがある。


 そして、今はエリスが細かな操縦をサポートしていた。


「光学迷彩展開、目標、百メートルまで接近します」


 ――フュオオォォォ……!


 惑星の磁場を利用し、ストライカーの足元の超伝導システムが作動。


 マイスナー効果が発生し、地表との摩擦がゼロに近づく。


 ストライカーは重力から解放されるかのように浮き上がり、緩やかな田舎道から荒れた荒野を滑るような動きで前進を始めた。


 ――バシュンッ!(圧縮空気噴射、加速開始)


 次の瞬間、脚部のエアスラスターが解放され、空気が爆発的に噴き出す。


 推進力を得たストライカーは、低く滑るような軌道で音もなく目標へと迫る。


 一定距離まで接近すると、ストライカーは静かにシステムを停止した。


 音を殺し、慎重に様子を伺う。


 ――何かを話しているのか?


 視線の先、赤と黒のコントラストが美しく、指揮官機であろう頭の兜に束になっている赤い毛が風に揺れているグリムヘッドが倒れ、黒い五騎のグリムヘッドに取り囲まれている。


 敵機の装甲には、帝国の紋章――立ち上がるトカゲが何かと戦っている姿を模したエンブレムが刻まれていた。


 その構図は、まるで獲物を仕留めるためにじわじわと追い詰める捕食者のようだった。


「ここまで、我々から逃れたのは賞賛に値する……だが、『ルガリスリッター(雷光の騎士)』と呼ばれた貴様も、ここまでのようだな。おとなしくアリスティア姫を引き渡すのならば、貴様の罪も不問とし、原隊復帰を認めよう」


 指揮官は下卑た笑みを浮かべながら続けた。


「だが、断るのならば容赦はしない。ここで貴殿には死んでもらう。姫は……言わずもがな。うわっはは。さぁ、どうするかね?」


「く……わかった……アリスティア姫、どうやらここまでのようです……わたしの力不足で申し訳ございません……」


「ガルファング……いえ、あなたはよくやってくれました……わかりました。あなたたちに従います。ですので、ガルファングを許してください」


「姫っ……」


 そういうと、ガルファングは姫を機体から地上へと降ろした。


 少し離れた場所で、黒い機体から兵士たちが降りてくるのを待っていた。


 そんな様子を眺めながら、黒い機体の隊長らしき人物がニヤリと笑いながら口を開く。


「我々に課された任務は、逃亡した騎士と王女を連れ帰ることだけだ。はは。これがどういうことかわかるか?」


「どういうことだ……」


 ガルファング・シュトレーゼマンは嫌な予感を覚え、冷や汗をかきながら厳しい表情を浮かべる。


「つまりな。ははは。貴様たちの生死は問わないということだよっ! あっははは」


「ぐっ! 貴様っ! なら何故、さっさと倒さなかったっ!」


「そんなもん、決まってるじゃないか。弱いものをいたぶるのが楽しいからだよっ! うわっははは」


 しばらく笑い続けた隊長が、さらに口を開く。


「いいか、これが最後だからよく聞けよ。まずはお前の目の前で、ここにいる兵士たちで姫を……回すっ! お前の悔しがる顔を見ながらなぁ。わはは。どんな顔を浮かべてくれるのだろうなぁ。それと姫さまも、どこまで自我が保てるのだろうなぁ。わぁははは。ああ、想像するだけで堪らんっ!」


「貴様っ! 貴様っ!! 絶対に許さんっ!!!」


 ガルファングは機体を無理にでも動かそうとするが、マギナ・コアリアクターが虚しく唸るだけだった……


「くそっ! くそっ!」


「おお、こわっ! 雷光さまがお怒りだ。だが、こうなるとその名声も虚しいものだな」


 ―――百メートル後方。


 その会話を百メートル後方で集音して聞いていたフィルたちが苛立っていた。


「……クソ野郎どもめ。胸糞悪いな」


「同感です、マイスター! やっちまいますか? やっちまいましょう!」


 ―――


 黒い機体の隊長の笑いが響き、それに同調し隊員たちも低い声でくくくと笑いだした。


「そして、我々が楽しんだ後、姫が不慮の事故ってことで処理しておけば問題なんてない」


 そんな隊長の冷徹な言葉が響き渡る。


 その間もガルファングは顔を真っ赤にして怒りをあらわにしたが、愛機は動かない。


「くそっ! くそっ! うごけよぉぉぉぉ!!!」


「さて、そろそろ、そんな動かない機体はいらないな。切り刻んでお前をそこから引きずり出してやろう」


 ――シュキンッ。


 隊長が剣を鞘から引き抜き、周囲の空気が一層冷たくなる。


 剣を振りかぶり、そのまま地面を切り裂くように振り下ろした――その刹那。


「ヴォォォン……!」


 突如、唸りを上げる駆動音。


 ストライカーが音もなくその場に現れ、敵部隊へと猛然と突撃を仕掛ける。


 フィルの冷徹な声が響いた。


「もう遅い、よ。」


 光学迷彩が解除されたストライカーは、閃光のごとき速度で一気に敵騎士たちに迫る。


 ――シュバッ!!!


 眩い閃光が走り、次の瞬間、黒い剣は真っ二つに切り裂かれ、破片が宙を舞う。


「なっ……!?」


 その光を放ったのは、目にも留まらぬ速度で突撃したストライカー。


 エアロジェットが噴射され、機体が空気を裂くように滑りながら進む。


 エリスの補正によって、完璧に調整された動きが敵の視界を撹乱し、その反応速度を圧倒的に凌駕する。


 ダッシュから一気にジャンプ――ズバァン!!


 分子間の結合で強化された超高周波ブレードが、敵の剣を一瞬で断ち切る。

 その鋭さと破壊力で、黒い剣はまるで紙のように裂け、ストライカーは宙を舞いながら着地へと移行する。


 ジャイロスコープが唸りを上げエアロジェットを細かく噴射し、機体の姿勢を瞬時に制御。


 そして、ストライカーが地面へと降下する。


 ――ゴォォン……カシィィン……!


 超伝導システムとエアロジェットが負荷を分散し、ショックアブソーバーが衝撃を吸収する。


 地面に突き刺さるような重厚な着地ではなく、滑らかに吸収された精密機械の動き。


 その動きを可能としているのが、次世代生体量子型AIだ。


 この時代、この世界ではないストライカーが運用されていた世界で星間戦争中に禁忌とされたデザイナーズベイビーと呼ばれた幼児の生体の一部を移植してあるのだ。


 それは、道徳的に許される行為ではないが、それほどまでに星間戦争は苛烈だった。


 その事実は、エリスも主人公も知らないことだ。


 そして、もう一つ完璧に制御している装置があった――


 着地と同時にエアロジェットが噴射、ストライカーは地上を滑るように旋回しながら敵へと向き直る。


 その姿は、まるで“閃光”そのものだった。


 「さて……ここからが本番だ」


 フィルがそう余裕の様子を見せていたときに、グリムヘッドの隊長は唖然としていた。


 隊長だけではなく、他の兵士も呆然としていた。


 そんな中、自分を取り戻した隊長が部下に状況の説明を求める。


 そして、地上に降りている兵にも機体に戻るように指示する。


 地上に居る姫もガルファングも、他の兵と同じように呆然としていた。


 そして、兵の一人がストライカーを見つけた。


「右前方に……なんだあれは? なんか小さいグリムヘッド? を確認……はは、なんだあれは? ちっさ。あはは」


 その笑いを聞いたほかの兵もその菅を目にし、笑い出す。


「ほんと、なんだあれ? オレらの機体の半分もないぞ。あはは」


「あんなのが相手なら、簡単に潰せるんじゃないか? わはは」


「「「わははは……」」」


「そ、そうだよな。はは……さっきのは偶然だ。あんな機体が、あんな事が出来るはずがないっ! よしっ! お前ら、アイツを包囲して叩くぞっ!」


些かな不安を抱えたまま、そう命令を下した瞬間だった。


 左にいたはずのグリムヘッド二体が瞬く間に倒れる。


 ―――ゴウンッ!


 と地面にうなり声を上げながら、崩れ落ちた。


「うっ……! な、何が起こったんだ…?!」


「こ、こいつ…! どうなってる…!?」


 兵士たちの間に、動揺と疑念が広がる。


 ―――


「あいつら、笑ってますよ。マイスター。ムカつきました! やっちゃいますねっ! まずは右の二体っ!」


「お、おい、まてってぇぇぇ! おおおっ! ぐへっ!」


 エアロダッシュにより、爆発的な噴射で一気にグリムヘッドに近寄り、一騎の足を切り落とす。


 兵士たちはその動きに圧倒され、息を呑んで見守った。


 ―――切り落とすとジャイロスコープとエアロジェットを駆使して機体を制御し二体目に迫る!


「うそだろ……」


 兵士たちの声がかすかに震える。


 だが、足を切り落とされたグリムヘッドが反撃を試みるも、すでに遅かった。


 その動きを見る間もなく、二体目のグリムヘッドも足を切り落とされ、地面に倒れ込んだ。


 その瞬間、兵士たちは完全に言葉を失った。


 「ち、違う…これは…」


 「ありえない…」


 ―――ありえない状況、ありえない機動力、ありえない破壊力。


 兵士たち全員が固唾を呑み、目の前の光景に目を見開いた。


 隊長が焦ったように、魔術砲撃の命令を下した。


「氷弾チャージ! 撃ちまくれっ!」


 しかし、その命令が響いた瞬間、グリムヘッドの中央にあるコアリアクターが異常な光を放ち、まるですべてを覆い尽くすように、冷徹な光が隊員たちを圧倒した。



 そして、腕に備えている三連砲撃砲から氷の弾丸が連射される!


 ―――ドガガガガッ!


「撃ってきた。撃ってきた。どうしますか、マイスター? こっちも撃っちゃいますか? 撃っちゃいましょう!」


「……まて、エリス、対兵器 タキオンセンサー始動だ」


「ええ……いやっ!」


「おぃ……いやって……そんな、嫌いなものを食べるのを拒否するみたいに……頼むよ」


「いやだよ! あの感覚が本当に嫌いなんだから!」


「おいおい、我儘言うなよ……後でお前の好きなチーズ菓子山ほど食わせてやるから、頼むからやってくれよ」


「……ほんとに? ……仕方ないな、じゃあ、約束だからね! でも……十分が限界だからねっ! そこはわかってねっ!」


「ああ、分かってるさ。いつも悪いな、エリス。お前はいい女だよ。ははは」


「も、もう……それじゃあ、始めるね」


「ああ、たのむ」


 エリスが渋々承諾すると、その瞬間、彼女の体はわずかに震えた。


「対兵器 タキオンセンサー始動します。情報処理をわたしに、機体のコントロールをフィルに。同時にわたしが観る映像もフィルに送ります……」


 エリスは目を閉じ、深い呼吸をした。


 その瞬間、脳裏に急速に鮮明な映像が流れ込み、未来の一幕が生きたように浮かび上がる。


 それは、まるで自分の体が別の存在に操られるかのような感覚だった。


 「うぅ……この感覚、嫌い……でも……」


 エリスは、目の前に迫る状況を必死に処理しようとした。


 その瞬間、時間が歪むような感覚が彼女を包み込み、未来が確実に目の前に姿を現す。


 これが完璧に機体の制御が出来る答えだ。


 タキオンセンサーによって、未来の三秒先を先読みしているからだ。


 タキオンは光より速い粒子、それを感知できるということは未来の情報を見れることになる。


 だが、無制限に未来を見れるわけではない。


 確定していない未来、その時々の選択によって未来は変わるからだ。


 だからこそ、タキオンセンサーが見せる未来は確率波、最高確率の未来を選んでいるだけ。


 ストライカーはその未来を元に完璧に動いている。


 だが、三秒が限界。その後、演算の負担が重くなりすぎて、システムがフリーズする危険性がある。


 未来の情報処理は、無限に使えるわけではないのだ。


 さらに、敵の未来を計算し、同時に自機を演算するなんて、膨大な情報量だ。


 これ以上は限界を超えて、脳に大きな負担がかかり、最悪、廃人になる。


 実際、この装置は、命を削るような危険なものだ。


「いくぞっ! エリス! まずはうるさい右の機体からだっ!」


「ターゲット・インサイト!」


 タキオンセンサーで未来を直視しながら、機体を操り、砲弾を避けながら、グリムヘッドに迫る。


 相手は焦ってくる。


 当然だ、照準をつけて砲撃した時にはもう、相手の回避は済んでいるのだから。


 どんどん迫る、ストライカーに狙われたグリムヘッドのキャリバーは見る見る顔色が悪くなる。


 まるで、幻影を相手にしているかのようだからだ。


「なんなんだ! なんなんだよっ! おまえはぁぁぁ!」


「エンゲージ!」


 エリスがそう叫んだ瞬間――ドォォオン!!


 またしても、足を切られてグリムヘッドは崩れ落ちた!


「次っ! くっ、気持ち悪い……」


「それは、わたしもなんですけどねっ!」


「くっ……残り二騎……あれを使うぞ!」


「……はいはい、ミューオン誘導レーザーね。腕部ミューオン砲撃砲展開、それに伴いエネルギー接続開始」


 エリスがストライカーに指示すると、腕部が開きミューオン砲撃砲が展開され、その後ろにピンコードが放出。それを、腰にある超高圧縮コンデンサーに接続する。


 ストライカーの出力は基本的にクァンタムコンバーターとジェネレーターの組み合わせで量子を変換してエネルギーを得ている。


 だが、それ以外にも、レーザーや超電導に必要な電力はこの超高圧縮コンデンサーでも賄っている。


 電子基板に使われていたミューオンが崩壊したときにでるエネルギーと電子とニュートリノに分かれたエネルギーをも超高圧縮コンデンサーに蓄えられ、必要に応じで供給されている。


 そして――


「やられた……ヤツらもバカじゃない。いつの間にか十字砲火に誘われてしまった。残り二騎だと油断してたわっ」


「もうフィン……そういうところよ! で、どうするの?」


「飛ぶぞっ!」


「えっ……あれは、飛ぶとかじゃないよっ! キャー!」


 オレはペダルを踏み込み、超伝導とエアロジェットで飛び上がる!


 そして、イオンクラフトでホバリングし、上空でジャイロスコープとエアロジェットで制御する。


「これなら、二騎捉えれるだろ。エリス」


「もうっ! 無茶しないでよっ! ほら、砲撃が来てるじゃない! もう、こっちは大変なんだからねっ!」


 と、いいながらでもエリスはタキオンセンサーを駆使しながら避けている。


 向こうも相当に焦り出していた。


 これだけ十字放火を浴びせているのに一発も当たらない……焦らないほうが不思議なのだ。


「なんで当たらないんだっ!! くそっ! 魔力が切れるまで撃ちまくれっ!!」


 隊長の焦りが極限にまで迫るっ!


「あたれよっ! くっそぉぉ!! どうやってあてりゃいいんだよっ!!!」


 部下の表情はもう涙目だっ! 無駄だと思っても当たることを願わずには居られなかった。


 その間もエリスは照準を合わせていた。


「目標確認、固定します。エネルギー充填まで、後5秒……2……1。ミューオン誘導レーザー発射!!」


 その瞬間、無数の光の刃がグリムヘッドを襲う!


 それは、様々なところに避けようとしているグリムヘッドだが、避けれない!


 何故なら、タキオンセンサーで未来を見ているからだ。


 云うなれば、照準に合わせた敵を撃っているわけではなく、敵が動いたところに撃っているからだ。


 つまりは、相手に向かって打つのではない、打ったところに相手が来るのだ。


「ば、ばかなっぁぁぁ!!! なんなんだよっ! おまえはっ!!」


 隊長が絶叫したときに黒いグリムヘッドは沈黙する。


「……死神だよ。あんたらに取ってはね」


 そして、二騎ともコアリアクターに命中し、その騎士たちは動かないオブジェを化すのだった。


「状況終了、全システムオールダウン。冷却プロセス開始、システム最適化中」


 ――バシュゥゥゥ。


 ストライカーの装甲の一部が開き、熱を逃がしだした。


「ふぅ……ぎもち゛わる゛い゛い゛ぃぃぃ」


「それは、わたしよっ! ああ、頭がいたいぃぃぃ。フィル約束忘れないでよっ! ううう……」


「しっかし、あの誘導ってどうなってるんだ? よくわからんぞ!」


「ああ、それはね、ミューオン誘導レーザーは、ミュー粒子の崩壊を利用している。ミューオンは短命な粒子で、非常に高いエネルギーを持っているため、わずかな時間で大きな力を発揮できるんだ。通常のレーザーよりも、はるかに高いエネルギー密度を持つ」


 エリスは冷静にそのメカニズムを説明するが、キョトンとしていた。


 そんなフィンを他所にエリスの得意げな説明が止まらない。


「そんでね、レーザー光線の中で、ミューオンが崩壊するとき、そのエネルギーが急速に放出され、波動として伝播する。そのエネルギーは一瞬で目標に届き、まるで光の刃のように目の前の障害を切り裂く」


 その言葉通り、レーザーは刃のように鋭く、グリムヘッドの装甲を引き裂いていた。


 だが、フィルは何を言っているのか理解してはいない。


 そして、エリスの独壇場がまだまだ続く。


「でね、でね。この誘導方式は、ターゲットが予測できない動きをする場合でも、完全に追尾して命中させることができるんだ。タキオンセンサーとの相性も抜群。未来を見越して、最も高確率でヒットする位置を予測し、撃ち出される。わかった?」


「……うん、理解出来ないと言うことだけはわかった。まぁ、超強いレーザーってことね」


「ちょっと! 折角、説明したのに意味がないじゃない。あいたた……」


 エリスはまだ頭を抱えだした。


 それほど、タキオンセンサーは脳に負担をかけたのだ。


「でも……」


 オレは周りを見渡し、何も動いたないのを確認する。


「まぁ、なんとかなったな」


「当然よっ! この子は超強いんだからねっ! 変な粒子さえなければもっと……重力だって使えるのにね……あの粒子のせいで本来の四割位の性能しか出せてないんだから……」


「そ、そうか……」


 あれで、四割とか……本来はどれだけなんだよ。


 オレは、その話に驚愕するしかなかった。


「そもそも、この子は小型ハイパワーで長時間運用をコンセプトに作られ、ナノマシンで自己修復も可能になっているの。それから、ストライカーの重力子共鳴モジュールを使って、重力子の閉じた紐の振動をいじって、ディラックの海にちょっかいかけるの。するとね、仮想粒子たちが『あれっ!?』ってなるでしょ? そこに干渉すると、真空のエネルギー分布がズレて、カシミール効果が発生するってわけ。この効果を利用すると、ちょっとした"負のエネルギー場"を作れて……」


 エリスは一気にしゃべりすぎて、一旦息を整える。その後、またしゃべりだした。


「まぁ簡単に言うと、『慣性とか運動エネルギーとか、ちょっとズルできる』ってこと! 応用すれば、局所的なワープみたいな機動もできるし、高エネルギーカシミール場を一点に収束させれば"量子崩壊ビーム"だって撃てちゃう」


「へ、へぇ……」


 オレは何を言ってるのか、さっぱり理解できなかった……


「その顔は何もわかってないわね……いいわ、簡単に言うわね。例えば、推進力に使えば、慣性無視のスーパースピードで動けるし、シールドに使えば攻撃を曲げられるし、うまく収束させれば敵の装甲を"真空ごと"引き裂く砲撃も撃てる。私たちはただの機械じゃなくて、"真空の波を操る"ってことよ! けど、今は出力がまったく足りないから出来ないの……まったく、あの粒子さえなければねぇ……」


 と、エリスの話が終わる頃、外から声が聞こえてきた。


「あ、あの……」


 ダレだ? この女の子は?


 ひょっとして……姫とか呼ばれた人か?


 けど……こんな姫様は帝国の城に招集で親に連れられて行った時にも見たことはないぞ。


 取り敢えず、オレはハッチを開放してこの子と話すことにしてみた。


「初めまして……あの……わたくし、アウトゥーラ国の第一王女のアリスティアと申します。この度は危ないところを助けていただき、ありがとうございました。えっと……」


アウトゥーラ? もしかして最後まで併合を拒んでいた国か?


「あっ……これはご無礼を申し遅れました。わたしはダイナミシスト帝国のブッシュボーン家三男、フィルレンシャル・ブッシュボーンと申します。以後、お見知りおきを」


 と、元貴族らしく挨拶をしてみた。


「帝国……」


 オレが帝国出身の貴族の一人だと知ると、彼女は一歩後ずさり、警戒の色を強める。


「あ、えっと、オレは家を出てるから、帝国とも家とも関係はないよ。その証拠に帝国のグリムヘッドと戦っていたじゃないか」


「なに、どうしたの?」


 と、何もなければ自分で何かを起こし、何かあれば勝手に騒ぎに首を突っ込むのが大好きな厄介な精霊がやってきた……


「なんでもない……」


「なによ、その言い方っ!  っと、だれ?  この人?」


「妖精……初めて見ました。……かわいい」


 そう言うと、アリステアは両手でエリスを捕まえた。


「ぐえっ! ちょ、ちょっと、もっと丁寧に扱ってよねっ!」


「きゃー、しゃべってる。かわいい!」


 そう言いながら、エリスを顔に近づける。


「ちょ、ちょっとフィル!  見てないでなんとかしなさいよっ!」


「え、ああ……」


 めんどくさい……面白いからちょっと放っておこう――。


 ――しばらくして。


「も、申し訳ございません。取り乱しました」


「ほんとにねっ! もう、勘弁して欲しいわっ! 今度やった……」


 仕方なくエリスをなだめ、姫の話を聞くことにした。


 気づけば、姫の隣には一人の男が立っていた。


 ――「ガルファング・シュトレーゼマン」、『ルガリスリッター(雷光の騎士)』。


 さすがにオレでも名前くらいは知っている。


 昔、アウトゥーラ国で暴れていた龍を単騎で仕留めたという逸話を持つ伝説的な騎士だ。


 彼の愛機は『ボルテック・アンバー』――あそこに倒れているのがそれか?


「………」


 いや、それよりも話を聞こう。


 姫の話をまとめると、こうだった。


 帝国に併合を迫られたアウトゥーラ国は、降伏か消滅かの選択を迫られていた。しかし、王はわずかでも時間を稼ぐために籠城を続け、姫を母方の出身国である西の連合国・アラバ国へ救援を求めに行かせた。


 だが、その動きを帝国に察知され、姫は囚われかけた――そこに偶然オレが通りかかり、助けたというわけだ。


 話が終わると、姫はまっすぐにオレを見つめ、少し震える声で言った。


「どうか……わたくしをお守りくださいませんか?」


 その言葉には、迷いがなかった。


 そして、隣に立つガルファングも静かに口を開く。


「……オレからも頼む。どうか、引き受けてくれないだろうか? わたしの愛機はあのザマだ……あれでは、守りきれるかわからぬ。今一度、動かせるか試してはみるつもりだが……」


 ガルファングは己の愛機へと視線を向けた。


 伝説の騎士と王女に頼まれてしまっては、正直断りづらい。


 オレはのんびり生きるつもりだったのに……。


 そんなオレの様子を見たエリスは、どこか楽しそうに言う。


「いいじゃない、引き受けちゃいなさいよ」


 悩んだ末……


「わかりました。でも、アラバ国までの護衛だけですよ……」


 そう言うと、姫様の表情は明るくなり、ガルファングも肩の荷が下りたように安堵していた。


「キミのグリムヘッドなら、必ず守りきれるだろう。オレも安心できる。姫様を頼む」


 伝説の騎士にそこまで言われると、悪い気はしない。


 あと、グリムヘッドじゃないんですけどね。


「それで、今からどうしますか?」


「オレはもう一度、コイツが動くか試してみる」


 あの状態で動くのか……?


 そう思った瞬間、彼はコクピットへ乗り込み、慎重にシステムを再起動させた。


「……!」


 機体がわずかに揺れ、関節部が軋みながらも、ゆっくりと立ち上がる。


 まだ動くのか。


 しかし、彼は苦々しく言った。


「……動くことは動くが、移動は厳しいかもしれんな」


「この辺りに修理できる場所なんてないぞ……」


 どうしたものかと悩んでいると、倒れていたはずの隊長機のグリムヘッドが、低く不気味な起動音を響かせた――。


 倒れていたはずの隊長機のグリムヘッドが、不気味な駆動音を響かせた。


 ――まだ動けるのか!?


 次の瞬間、機体のハッチが軋みながら開き、隊長が姿を現した。


 血に塗れながらも、なお立ち上がるその姿に、思わず息を呑む。


「……作戦が失敗したとなれば、帝国に、もはや私の居場所などない」


 低く、どこか諦めたような声だった。


 そして、隊長はグリムヘッドの制御パネルに手を伸ばし、何かを操作する。


 ――マズい!


 コクピット内のモニターに、警告が表示される。


 《サブコアリアクター・暴走開始》


 こいつ、自爆する気か――!?


 その瞬間、隊長が手にした魔術の杖が紫電を纏い、こちらへと振りかざされた。


「死ぬならば、道連れだ!」


 雷撃が迸る。しかし――


 フィルのブラスターがそれよりも速く、隊長の腕を正確に射抜いた。


「ぐっ……!」


 隊長は膝をつくが、すでに自爆シークエンスは止まらない。


「チッ……! ここから離れるぞ!」


 機体を起動させ、全速で離脱を試みる――だが、警告音が鳴り響く。


 間に合わないかもしれない……!


 しかも、ガルファングが……


「……少年。姫を頼む! ここはわたしがなんとかする!」


 彼のグリムヘッドが、隊長機の前に立ちはだかる。


「ガルファングさんっ!」


「行け!! 少年!! 姫様を頼んだっ!」


 彼は叫ぶ。そして、最後に姫へと向き直り――


「姫様……最後までお供出来ず、申し訳ございません……道半ばで果てるわたしを、お許しくださいっ!!」


 轟音。


 彼の機体が隊長機に覆いかぶさり、二機がもつれ合うように倒れ込んだ――


 ガシャァァァン!!


「ガルファングゥゥ!!」


 姫の悲痛な叫びが響く。


 彼のもとへ駆け寄ろうとする姫を、オレはストライカーのコックピットのシートに座り、オレの膝の上に無理矢理乗せ、その場を全速力で駆け抜けた。


 エリスも、余計なシークエンスを飛ばし、緊急脱出に集中する。


 姫の視線が痛い……。


 涙に濡れた瞳が、オレを鋭く睨みつけてくる。


 たぶん、姫もわかっているのだろう。それでも、引き離されたという現実に耐えられないのかもしれない……。


 見殺しにした、と思っているのかもしれない……。


 ――オレだって、嫌だっ!!


 こんな形で、別れるなんて――!


 でも……仕方ないじゃないかっ!!


 どうしようもないじゃないかっ!!


 そのとき、オレたちの後ろで爆発の轟音が響き渡った……


 それは、ガルファングさんとの永遠の別れを告げられたのと同義だった……


 ――爆発から、逃れ馬車の中で……。


 爆発の衝撃から逃れたものの、沈黙が支配していた。


 姫様は暗い表情のまま、膝の上に手を握りしめたまま動かない。


 オレは、何を言えばいいのかわからなかった。


 何を言ったところで、逆効果にしかならない。


 それだけは分かっていた。


 そんなオレに、姫様が静かに口を開く。


「……なぜ……なぜ、助けてくれなかったのですか……?」


 かすれた声。それでも、揺るぎない問いかけ。


 オレは息を呑んだ。


 姫様の瞳から、涙がこぼれる。


「あなたの……あなたの機体ならば、助けられたのではありませんかっ!?」


 切なく、苦しげな表情のまま、涙を流しながらオレを責める。


 オレは、何も言えなかった。


 言葉にしたところで、全てが言い訳にしかならないことがわかっていたからだ……。


 そんなオレの表情を察したのか、姫様は小さく息を呑み、さらに口を開いた。


「……ごめんなさい。酷いことを言いましたよね。わたし……でも……」


 そう言いかけると、姫様は声を押し殺し、肩を震わせながら涙を流した。


 この様子だけで、どれほど彼女にとってガルファングさんが大切な存在だったのかが伝わってくる。


 ――もし、オレがエリスを失ったら?


 きっと、誰かに当たり散らさずにはいられないだろう。


 だけど、姫様は違う。


 彼女は、あの状況ではどうしようもなかったことを理解している。


 だからこそ、オレは誓うしかなかった。


「アルバ王国には、必ず送り届けてやる。絶対にだ。オレは約束を破らないっ!」


 オレの拳がギュッと握りしめられる。


「……それが、彼がオレに託した願いなのだから……」


 だから――安心しろ。


 その一言で姫様は本格的に泣き出した。


 オレはエリスに後を頼み、外に出た。


 空は雲一つない満点の星空。


 オレのゆくべき星はどこなのだろうと、星空を眺めながらぼんやりと考えるのだった。

メカもの書いてみたくて書いてみました。


色々と名前とかシステムとか色んなメカ物が混ざっています。


まずは、バーチャロン、スコタコに、モーターヘッドにがガルガンディアに、ほんといろいろです。

あと、レイフォースとかRタイプとか。


理論とかは原理だけがなんとなく分かるくらいの知識です。

あまり深く突っ込まれると、困ります。

とにかく、それっぽい嘘理論ですので軽~い感じで読んで下さい。

ちょっと長いですが……


帝国や国や逸話は世界観に合わせて、てきとーに作っています。

もし、作者が書きたくなった、もしくは読んでみたいと思える人がいるなら、設定を考えてみます。

ただ単に、ストライカーという機体を動かしたかったので作ってみました。


拙いですが、おもしろければ星などおねがいします。

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