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序章-8:メイドとの出会い

「……疲れたけど、賑やかな子だな」


ユウトは椅子に腰掛け、先ほどまで部屋にいたルティナとのやり取りを思い返していた。生意気な態度に振り回されつつも、その純粋さや明るさに少しだけ癒された気がしている。


「さて……少し部屋を出て、気分転換でもするか」


立ち上がり、廊下に出たユウトは、しんと静まり返った館内の雰囲気を感じながら歩き始めた。広い廊下は豪華な装飾に囲まれ、どこか気後れを感じるほどだった。しばらく進むと、ふと角を曲がった先に小さな人影を見つけた。


廊下の端で一心不乱に棚を拭いている少女の姿があった。肩にかかるブラウンの髪が軽やかに揺れ、丁寧な動作で布を動かしている。額には少し汗がにじみ、その真剣な様子にユウトは思わず足を止めた。


気配に気づいた少女がこちらを振り向くと、驚いた表情を浮かべ、慌てて動きを止めた。そしてスカートの裾を掴んで深々と頭を下げる。


「ユウト様……おはようございます!」


「あ、どうも……おはよう」


突然の挨拶に少し戸惑いながらも、ユウトは軽く手を挙げて返事をした。


「君は……?」


「失礼いたしました。リーデンハイル家に仕えるメイドのミレーヌと申します。ユウト様のことは、リュシア様からお伺いしております」


「俺のことを?」


「はい。森でリュシア様に助けられた異邦人(イストリア)の方だと伺いました。改めて、お会いできて光栄です」


控えめに微笑むミレーヌの態度は、どこかぎこちなさを感じさせるものの、その礼儀正しさには好感が持てた。


「そうか。よろしくね、ミレーヌさん」


ユウトが笑顔で答えると、ミレーヌは少しだけ頬を赤らめ、小さく頷いた。


「朝から忙しそうだね。こんなに広い館を掃除するのは大変そうだ」


ユウトが話しかけると、ミレーヌは布を持った手を少し休め、控えめに笑った。


「ええ、確かに広いですけど……リーデンハイル家の方々がとても優しいので、私たちも頑張れます」


「そうなんだ。確かにみんな優しいよな」


「はい。皆様、私たち使用人にもいつも気を配ってくださいます。それに、リュシア様が調停役としてお働きになる姿を見ると、私ももっと努力しようと思えるんです」


ミレーヌは、少し照れくさそうに視線を落とした。その言葉に、ユウトはリュシアの人柄の良さを改めて実感する。


「リュシアは、本当に慕われてるんだな。俺も……彼女に少しでも恩返しできるように頑張らないといけないな」


ユウトがそう言うと、ミレーヌはふっと柔らかい笑みを浮かべた。


「ユウト様なら、きっとリュシア様のお役に立てると思います。それに、異邦人(イストリア)であるあなたは、きっとこの世界に必要とされて呼ばれたはずです。」


その言葉に、ユウトは少し恥ずかしそうに頭を掻いた。


「ありがとう。必要とされているか……」


ミレーヌの優しい言葉に、ユウトは思わず肩の力が抜けた。


「それじゃあ、掃除の邪魔しちゃ悪いから、そろそろ行くよ。ミレーヌさんも頑張ってね」


「ありがとうございます!ユウト様もどうぞお身体に気をつけて」


ミレーヌは丁寧に頭を下げ、再び掃除に戻った。その真剣な姿をちらりと見て、ユウトは歩き出しながらつぶやいた。


「真面目でいい子だな……こういう人たちがいるから、この家が成り立ってるんだな」


彼女との短いやり取りに、不思議と心が軽くなった気がした。リーデンハイル家の人々や使用人たちの優しさが、少しずつユウトの心をこの世界に馴染ませていく。

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