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第十三話:ドワーフと調停

ユウトとリュシアが村を出発し、馬車はようやく険しい山道を越え、ドワーフの街「テルマリック」の入り口に辿り着いた。


「ここがテルマリックか……すごいな」


目の前に広がるのは岩山に囲まれた巨大な街。入り口には頑丈な鉄製の門がそびえ立ち、その向こうからは、金属を打つ音や力強いハンマーの音が絶え間なく響いてくる。街全体が鍛冶の町であることを物語っていた。


「これだけ大きな街なのに、外から見るとあまり目立たないでしょう? それがテルマリックの特徴よ。自然と調和しつつ、自分たちの居場所を守ってきたの」


リュシアの説明に、ユウトは感心したように頷く。


「なるほど……でも、なんか空気が重い感じがするな」


ユウトが周囲を見回すと、門番として立つドワーフの兵士たちは厳しい顔つきでこちらを見つめていた。明らかに警戒心を持っている。


「調停役のリュシア・リーデンハイルです。お約束通り、調停のために伺いました」


リュシアが丁寧に名乗り、調停役の証である紋章を差し出すと、門番たちは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに敬礼をして門を開けた。


「お待ちしておりました、リュシア様。どうぞお入りください。ただし……」


門番の一人がユウトに視線を向ける。


「その方は……?」


「私の同行者です。問題はありません」


リュシアの毅然とした態度に、門番たちは小声で何かを話し合った後、渋々と道を譲った。


「なんか、俺だけ明らかに警戒されてる気がするんだけど……」


ユウトが小声でぼやくと、リュシアが微笑みながら答える。


「仕方ないわ。戦争以降どの民族も他民族へは警戒してしまうの。特にドワーフ族は基本的に外部の人間に対して厳しいの。でも、ちゃんと話をすれば分かってくれるはずよ」


街の中へ足を踏み入れると、さらに活気ある光景が広がっていた。金属を叩く音、鋳造された武器や装飾品を並べる店、熱気に満ちた空気がユウトを圧倒する。


「……すごいな。本当に鍛冶の街なんだな」


「ええ、テルマリックはラディナでも最高峰の鍛冶技術を誇る街よ。その中心にいるのが、今回調停をお願いされたうちの1人、鉱石の精製加工を行っているガルドルさん。まずは彼のところへ向かいましょう」


リュシアは手にした地図を見ながら、ガルドルの住む場所を目指して歩き出した。



テルマリックの中心に位置する鍛冶場の奥に、ガルドルの工房があった。鍛冶場の中は、高温で赤く輝く窯や巨大な金属加工機械が並び、職人たちが黙々と作業を続けている。


「リュシア様、お待ちしておりました」


中年のドワーフが出迎え、ガルドルの部屋へと案内した。奥まった部屋に入ると、頑丈そうな机の向こうに、厳しい顔つきをしたドワーフが座っていた。彼がガルドルだ。


「お嬢ちゃんか。噂は聞いている。リーデンハイル家の血筋ってのは、本当に器量がいいもんだな」


ガルドルは威圧感のある声で言いながらも、リュシアをじっと見つめた。


「初めまして、ガルドル殿。今回遅れてしまって大変申し訳ございません。調停役のリュシア・リーデンハイルです。今回の問題解決のために伺いました」


リュシアが頭を下げると、ガルドルは軽く頷き、視線をユウトに向けた。


「道中トラブルがあったようだな。まぁ、仕方ない。で、そっちは?」


「ユウトと申します。彼も調停に同行しています」


「人間の坊主か。まあ、余計なことをしなきゃ構わんがな」


ガルドルは短くそう言うと、椅子に深く座り直した。


「さて……今回の件だが、俺たちは断じて不純物を混ぜるような真似はしていない。これは誇りにかけて言えることだ」


その声には揺るぎない自信が込められていた。


「その話については、依頼書を通して把握しています。ただ、改めて双方の意見をきちんと聞いた上で解決策を模索したいと考えています」


「そうか。なら、とことん話を聞いてくれ。ただし、俺たちの誇りを傷つけるような真似だけはするんじゃねえぞ」


険しい表情を浮かべるガルドルの言葉に、ユウトは緊張を覚えつつも、この問題の真相を突き止めるべく心を決めた。


(この街で、何が起きているんだ……?)


熱気に包まれたテルマリックの空気の中で、ユウトは胸に静かな決意を抱いていた。

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