表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/23

第十話:宿と村の食事


宿の部屋に案内されたユウトとリュシアは、広々とした空間に少し驚きながら荷物を置いた。ベッドは二つあり、それぞれがきちんと整えられている。壁の木目が暖かみを感じさせ、外の街灯が窓越しに薄明かりを差し込んでいる。


「意外と……いい部屋だな」

ユウトが呟くと、リュシアは軽く頷きながら荷物をベッドのそばに置いた。


「そうですね。村にこんな素敵な宿があるなんて、少し驚きました」


「で、これからどうする? お腹空いたよな?」


「ええ。せっかくですし、外で食事を取りましょうか」


二人は宿を出て、村の中心にある簡素な飲食店に向かった。店先では香ばしい匂いが漂っている。


「なんだか、雰囲気のある場所だな」

ユウトが店内に足を踏み入れると、気さくそうな店主が笑顔で迎えてくれた。


「いらっしゃい! こんな時間に珍しい客人だね」


リュシアが軽く一礼しながら答える。

「お世話になります。今夜のおすすめはありますか?」


「今夜はシチューとサラダ、それにパンだよ。良かったら、自家製のハムもつけようか?」


「ぜひお願いします」

リュシアの頼みに、店主はにっこり笑い、カウンターの向こうで準備を始めた。


出された食事は、素朴ながらも温かみのあるものだった。ホカホカのシチューには大きめに切られた野菜がゴロゴロと入っており、焼きたてのパンはほんのり甘い香りがした。


「なんかこういうの、懐かしい感じがするな」

ユウトがパンをちぎりながらシチューにつけて食べる。リュシアも静かに口を運び、ふと口を開いた。


「急な宿泊でしたが美味しい食事ですね。普段はどうしても忙しくて、簡単なものになりがちですから」


「簡単な食事といえばインスタントラーメン。ぜひ食べて欲しいよ」

昼に話したラーメンの話をする。


「インスタントラーメン…お湯だけで食べられるなんていささか疑問ですがぜひ食べてみたいですね」


そんな何気ない会話を続けながら、二人は穏やかな食事の時間を楽しんだ。



夜、宿に戻ると、カウンター越しに宿の主人がニヤニヤと笑いながら待っていた。


「どうだった、村の飯は?」


「素朴だけど、美味しかったですよ」

ユウトが答えると、主人はさらに顔をほころばせた。


「そりゃ良かった。んで、どうだい、部屋の方は?」


「部屋も広いし、問題ないです」


「はは、そりゃ良かったな。ま、若い二人がゆっくりできりゃ、それが一番だ」

主人の意味深な笑みに、ユウトは苦笑いを浮かべながら挨拶を済ませ、部屋へと戻る。



部屋に入ると、ユウトは荷物を整理しながらリュシアに声をかけた。


「先にシャワーを使ってくれよ」


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えますね」

リュシアはタオルを持ち、静かにバスルームへと向かった。


一人になった部屋で、ユウトは何とも言えない気まずさを感じながらベッドに腰掛けた。シャワーの音が微かに聞こえてくる。


(……二人きりの部屋って、やっぱり緊張するな)


どうにも落ち着かず、ユウトは下の階にあるロビーへと向かうことにした。


ロビーのソファに腰掛け、適当に時間を潰そうとしていると、宿の主人がふらりと近づいてきた。


「あれ、何してんだい? もう部屋に戻ったらいいだろうに」


「いや、ちょっと……まあ、色々あって」

ユウトが曖昧に答えると、主人は目を丸くしてからすぐににやりと笑った。


「なんだい、二人きりだと恥ずかしいのかい?」


「そ、そういうわけじゃ……」

ユウトが言い訳をしようとするが、主人は愉快そうに肩をすくめた。


「意気地のねえやつだなあ。若いんだから、もう少ししっかりしな!」


「しっかりって、何の話だよ……」

ユウトは頭を抱えながら、主人の笑い声を背にして、ソファで時間を潰すことにしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ