表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/23

序章-1:優しさの代償

書き溜めていたのを放出してます。

序章:優しさの代償


ある日の午後、空には薄い灰色の雲が広がり、街は少し冷たい空気に包まれていた。

結城優都ゆうき ゆうとは、バイトを終え、いつもの帰り道を歩いていた。特に特徴のないスウェットと、肩から提げたリュック。歩き慣れたアスファルトの感触に、今日一日の疲れが少しずつ押し寄せてくる。


繁華街の喧騒から少し離れた交差点に差しかかると、信号が赤に変わった。優都は歩みを止め、ぼんやりと目の前の人々を眺めた。忙しそうにスマホを操作する会社員、友達同士で笑い合う学生、子供の手を引く母親。そこにはそれぞれの生活があったが、優都にとってはどこか遠いもののように感じられた。


「……俺の人生、これでいいのかな」


そんな思いがふと胸をよぎる。5月、18歳、独身、ついこの間、高校を卒業後フリーターとして働いている。特に不満があるわけではないが、特別な満足感があるわけでもない。友達の中には彼女がいる者もいれば、仕事で成果を上げて昇進するために奔走する奴もいる。

だが優都は、出世や成功といったものに執着がなかった。ただ静かに、平穏に生きていければそれでいい。自分が損をしても、それで誰かが喜んでくれるなら、それで十分だと思っていた。


信号が青に変わり、人の波が一斉に動き出した。優都も何気なく足を踏み出したが、その瞬間、視界の端に違和感を覚えた。


一人の女性が、慌てて鞄をかき回しながら道の真ん中にしゃがみ込んでいる。彼女の手元には、化粧品や財布、小物が散らばっていた。通り過ぎる人々はちらりと視線を向けるが、誰も足を止めない。


「……大丈夫ですか?」


自然と声が出ていた。優都は急いで女性の元に向かうと、散らばった荷物を拾い始めた。女性は驚いたように顔を上げ、申し訳なさそうに言う。


「あ、すみません!ありがとうございます……」


「いえ、気にしないでください。急いで拾っちゃいましょう」


優しい声でそう言いながら、優都は次々と荷物を手渡した。しかし、彼女の鞄の口が完全に閉じきらないまま、次の瞬間、彼の耳にけたたましいクラクションの音が響いた。


振り返ると、交差点の先から猛スピードで突っ込んでくるトラックが目に入る。どう見ても止まる気配はない。暴走しているのは明らかだった。


優都はすぐに状況を理解した。女性の真横にしゃがみ込んだままだった自分たちは、トラックの進行方向にいた。間に合うかどうかはわからなかったが、咄嗟に女性の腕を掴んで声を張り上げた。


「危ない、早く!」


優都は立ち上がり、女性の身体を後ろに押しやった。同時に、彼の身体は交差点の中央へ大きく投げ出された。

その一瞬の行動が、彼女を危機から救ったことを確信する間もなく、目の前に迫った巨大なトラックのヘッドライトが眩しく光る。


「……あぁ、これ、ダメか」


優都の頭に浮かんだのは、意外にも後悔ではなかった。代わりに、女性が無事だったことにほっとする気持ちと、自分がこれで終わるのなら、それも悪くないかもしれないという奇妙な安堵感だった。


突然、耳鳴りがした。轟音とともに衝撃が全身を襲い、視界が白く染まる。身体の痛みも、時間の感覚も消えていく。意識が薄れていく中、彼は最後に微かに笑った。


「やっぱり……俺、普通の人生だったな」


次に目を覚ましたとき、優都を待っていたのは、もう一つの世界だった。

初めてですがよろしくお願いします。

この世界の情報

なし

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ