表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

第八話:王都とお守り


「なんだったんだ?人間か、それとも魔族なのか……」

屋根の上で剣を構えたまま、ユウトは息を整えながら呟いた。


「わからない。ただ何か良くないことが起きそうなのは間違いないわ」

リュシアは目を細めながら、男が消えた空間をじっと見つめている。


「それより、村人たちは……?」

ユウトが下を覗き込むと、先ほどの狂気に満ちた村人たちは地面に倒れ込んでいた。


「みんな……眠ってるみたい。意識を失ってるだけのようね」

リュシアが慌てて屋根から飛び降り、村人たちの様子を確認する。倒れている者たちの顔は平静を取り戻しており、あの狂気が嘘のように感じられる。


「良かった。怪我はないようだ」

レイドはユウトを連れ、地面に降り、村人たちをざっと見渡しながら低く呟いた。


その時、遠くから部下たちの慌ただしい足音が聞こえてくる。


「分隊長、王都より急報です!不穏な人物が現れたとの情報で、すぐに戻るよう命令が下っています!」

敬礼しながら伝える部下の声に、レイドは眉をひそめ、考え込むように顎に手を当てた。


「王都で……?」

彼の顔に浮かぶ険しい表情が、事態の深刻さを物語っている。


「わかった。すぐに戻る準備を整える」

短く答えたあと、レイドはユウトとリュシアの方に振り返った。


「お前も異邦人イストリアで、不穏な人物がお前に興味を示している以上、ここでリュシアから離れろと言いたいところだが……」


「俺はついていく」

ユウトはきっぱりとそう答えた。その瞳に迷いはなく、リュシアも驚いたように彼を見た。


「……まあそうだよな」

レイドは苦笑を浮かべながら、腰のポーチを探り、何かを取り出した。


「わかった。ならせめてこれを持っておけ」

彼が差し出したのは、小さな金属製のプレートのついたネックレスだった。丸い形状で、中心には奇妙な模様が刻まれている。


「これは?」

ユウトはそれを受け取り、じっと眺めた。


「大したものじゃない。ただのお守りのようなものだ」

レイドはそう言って軽く肩をすくめた。


「お守りって……そんなもの――」

言いかけたユウトだったが、レイドの真剣な表情を見て言葉を飲み込む。


「……ありがとう。大事にする」

ユウトはネックレスを首にかけ、軽く礼をした。


レイドは一度息をつき、リュシアに視線を向ける。その瞳はどこか兄のような暖かさと、不安を隠しきれない鋭さが混じっていた。


「リュシアが簡単にやられるとは思わないが、とにかく気をつけてくれ。何かあれば、とにかく逃げることを最優先に」


「ええ、レイドも気をつけて」

リュシアは穏やかに微笑み、しっかりと頷いた。


「じゃあな。お前たちの旅路が無事であること、無事に調停できることを祈ってる」

レイドは部下たちを引き連れ、村を後にする。その背中は頼もしくも、どこか寂しげだった。


「ユウトさん。私たちも、テルマリックへ向かいましょう」

リュシアの言葉に、ユウトは小さく頷きながら歩き出す。


首にかけたプレートが、ほんのりと暖かさを持っているような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ