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第五話:小さな村とレイド


テルマリックへの旅の途中、ユウトとリュシアは小さな村で馬車を止め、休憩を取っていた。広場には村人たちが行き交い、のどかな雰囲気が漂っている。


「こういう村、いいよな。日本にも、こういう静かな場所がもっとあったんだろうな」

ユウトが周囲を見渡しながらつぶやくと、リュシアは微笑んで頷いた。


「穏やかな場所ですね。でも、こういう場所ほど些細な争いが起きることもありますから、調停役の仕事が必要になるんです」



二人がそんな話をしていると、遠くから兵士たちの行進する音が聞こえてきた。赤いマントを羽織った青年が先頭に立ち、威風堂々と歩いてくる。


「リュシア!こんなところで会えるなんてな!」

青年――レイドが大きな声でリュシアに呼びかけると、彼女は驚きつつも親しげに微笑んだ。


「レイド!久しぶりね。相変わらず元気そうね」


「元気がなきゃ軍人は務まらないだろ。それにしても、お前がこんな村にいるなんて珍しいな」

レイドは近づきながら視線を隣のユウトに向けた。


「で、そっちの男は誰だ?護衛か?執事か?」


リュシアが答える前に、ユウトが慌てて手を振った。


「いや、護衛でも執事でもなくて……調停の仕事の同行だよ」


「調停の同行?」

レイドは眉をひそめ、リュシアに視線を戻す。


「おいおい、リュシア。お前が調停に行くってのに、護衛も連れずにこんな頼りない奴を連れてるのか?」



「ユウトさんはただの同行者ではありません。この方は異邦人(イストリア)です」


リュシアが毅然とした口調で説明すると、レイドは目を見開いた。


異邦人(イストリア)……だと?」

一瞬驚きの表情を浮かべたレイドだったが、すぐに鼻で笑った。


異邦人(イストリア)……文献で聞いたことはあるが……確か、世界に特別な力をもたらす存在だろ?……それが、こんな頼りなさそうな奴だって?」


ユウトは肩を落としながら、苦笑いを浮かべた。


「俺も何がなんだか。ただ、この世界に来たばかりで、どうすればいいのかも分からなくて……」


その言葉を聞いたレイドは、呆れたようにため息をついた。


「力のない異邦人(イストリア)?おいおい、それじゃただの一般人、いや一般人以下じゃないか。リュシア、本当にこんな奴を連れて平気なのか?」


「レイド、失礼ですよ」

リュシアが鋭く咎めるが、レイドは肩をすくめて続けた。


「なら証明してもらおうじゃないか」

レイドは腰から剣を抜き、地面に軽く突き刺した。


「どうだ、異邦人(イストリア)。この剣で一撃でも俺に当ててみろ。それができたら、俺も少しは認めてやる」



「ちょっと待てよ!俺、剣なんて握ったこともないし、戦えるわけがないだろ!」

ユウトが全力で拒否するが、レイドは余裕たっぷりの笑みを浮かべたままだ。


「だったら練習だと思えばいいさ。俺だって手加減くらいはしてやる」


「レイド、本当にやめなさい!ユウトさんを困らせる必要はないでしょう!それに、レイド相手に一撃なんて……」

リュシアが制止するが、レイドは振り返り、真剣な目で答えた。


「困らせてるわけじゃない。リュシア、お前を守るためだ。調停は甘い世界じゃない。覚悟も何もないこいつが何もできないままついていく方が、よっぽど危険だろ」


リュシアは一瞬、言葉を詰まらせる。そして、ユウトに申し訳なさそうな目を向けた。


「ユウトさん、無理をしなくてもいいんです。」


「おいおい、ビビってるのかよ?」

レイドが挑発的に笑い、剣を指差す。


「お前が一撃でも俺に当てられたら、認めてやるが、一撃も入れられなかったら……そうだな、軍に入隊しろ。俺たちが鍛えてやる」


「軍に入隊……?」

ユウトは目を丸くしてレイドを見た。


「ああ、それならお前も鍛えられるし、リュシアも安心だろ?俺たちの訓練は厳しいが、やる価値はあるぜ」


「……マジで言ってるのか」

ユウトはげんなりしながら剣を手に取った。



「俺は真剣だ。準備ができたら始めるぞ!」

レイドが剣を構え、挑発するように笑う。その余裕たっぷりの姿に、ユウトの手には自然と汗が滲む。


(本当にやるのか……?)

ユウトは内心で不安を抱えながらも、剣を握り、一歩を踏み出した――。

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