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第二話:揺れる馬車と初任務

馬車の車輪が柔らかな土の道を踏みしめる音が規則正しく響く中、ユウトは窓の外をぼんやりと眺めていた。草原がどこまでも広がり、風が心地よく馬車の中に吹き込んでくる。


「なあ、リュシア。今回の話、もう一度教えてくれるか?ドワーフがどうとかって話だったよね?」


隣に座るリュシアはその声に微笑み、小さく頷いた。


「ええ。目的地はテルマリックという街です。そこはドワーフたちが築いた鉱山都市で、鍛冶がとても盛んです。テルマリック鉱山から採れる特殊な鉱石が街の生命線とも言えるものなんです。」


「その鉱石が原因でトラブルになってるって話だったよな?」


「そうです。『アルガナイト』という名の鉱石で、高い熱伝導性と強度を持ち、武器や装備、工業用途に幅広く使われています。でも最近、その品質が急激に低下してしまっているんです。」


ユウトはその話に興味を引かれ、身を乗り出した。


「品質が落ちるって……それって具体的にどういうことなんだ?」


「例えば、以前なら1回の精錬で強度が十分な製品を作れたのに、今は3回も4回も手をかけないと完成品の基準に達しないとか。また、完成品の耐久性が明らかに劣るという報告もあります。」


「なるほど……それは商人たちも怒りそうだな。」


「そうなんです。テルマリックと取引している人間の商人たちは、納品された鉱石に不満を抱え、原因を追及しています。でも、ドワーフ側も『我々に問題はない』と主張していて、双方が平行線をたどっている状況です。」


ユウトは腕を組み、考え込んだ。


「ただ鉱石を採るだけならドワーフたちに悪気はなさそうだな、品質が落ちた理由は何なんだ?」


リュシアは少し表情を曇らせた。


「それが分かっていないのが一番の問題です。商人たちは『不純物を混ぜているんじゃないか』とか『鉱石を偽装しているんじゃないか』といった疑念を抱いていますが、ドワーフたちはそのような不正は一切していないと断言しています。」


「疑われる方も辛いだろうな……でも、品質が落ちたこと自体は確かなんだよな」


「はい。ですから、調停役として私たちは、まず両者の話を冷静に聞き、原因を探る必要があります。そして、その場で解決ができそうなら解決し、調停管理局に報告します。それでも無理な場合は、その状況を報告して、次の解決のための指示を仰ぐことになります。」


「……そっか。もっと戦争時代のいざこざを想像してたけど、こういう仕事上のトラブルも調停役の仕事なんだな。」


ユウトがそう言うと、リュシアは小さく頷いて微笑んだ。


「ええ。戦争絡みの大きな問題が発生した場合は、私だけではなく、父のような経験豊富な調停役が派遣されます。ただ、今回のような日常的なトラブルも重要な仕事の一つです。」


「そっか……それにしても、原因が分からないってのは厄介だな。現場に行ってみれば、何か見えてくるかもしれないけど。」


「その通りです。現場での視察も今回の調停の一環です。テルマリックの鉱山は複雑な地形なので、まずは鉱山の管理者や職人たちから話を聞き、現場を見て状況を把握する必要があります。」


馬車は揺れながらも順調に進んでいる。遠くには山の稜線が見え始め、目的地が近づいていることを告げていた。


「俺に何ができるか分からないけど、とにかくリュシアの邪魔にならないようにするよ。見て学ぶことから始めるさ。」


「ユウトさんなら大丈夫です。きっと、あなたにしかできないこともあるはずです。」


その言葉に、ユウトは少し照れくさそうに笑いながら窓の外を見つめた。不安と期待が入り混じる胸の内を抱え、馬車は目的地へと向かって揺れ続けた。

この世界の情報

テルマリック:ドワーフたちが住む街。

アルガナイト:テルマリック鉱山で採れる鉱物。武器に使用されることが多い。

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