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序章-10:お昼の食卓

部屋で少し休んでいたユウトの耳に、廊下から軽快なノックの音が聞こえた。その後に続いて、リュシアの柔らかな声が届く。


「ユウトさん、お昼の準備ができました。ご一緒にいかがですか?」


ユウトがドアを開けると、リュシアとルティナが並んで立っていた。リュシアはいつもの穏やかな笑みを浮かべ、ルティナは少し得意げな表情をしている。


「お昼ごはん、一人で食べる気?せっかくだから一緒に来なさいよ。早く早く」


「もちろん行くよ。でも、そんなに急がなくても……」


ユウトが苦笑しながら答えると、ルティナは軽くため息をついている。


「お姉ちゃんもせっかくみんなで食べるんだから、早く。ほら、冷めちゃう、行くよ」


「ルティナ、そんなに焦らなくても大丈夫よ」


リュシアが優しくたしなめると、ルティナは小さく肩をすくめながら走っていく。。


食堂に入ると、テーブルにはシチューのようなスープ、焼きたてのパン、そしてサラダが並べられていた。温かみを感じる洋食のようなお昼ご飯だ。


「みんなで食べましょう。」


リュシアが微笑みながら席を勧める。ユウトはその言葉に頷き、椅子に座った。


「すごく美味しそうだな……」


「当たり前でしょ。ライラが作ったんだから」


ルティナがスープをよそいながら言ったその時、食堂の扉が静かに開いた。


「褒めてもらえるのは嬉しいけど、食べてから言ってくれる?」


落ち着いた声とともに、栗色の髪を緩く束ねた女性が現れた。どこか優雅な雰囲気を纏ったその姿に、ユウトは少し圧倒される。


「ライラさん……」


リュシアが軽く笑みを浮かべながら女性を見やる。ライラはユウトに視線を向け、軽く頭を下げた。


「初めまして、異邦人イストリアさん。私はライラ・エヴァレット。この館で料理を作ってるわ」


「は、はじめまして。ユウキ・ユウトです。料理、本当に美味しそうで……ありがとうございます」


ユウトが慌てて礼を言うと、ライラは肩をすくめながら笑った。


「まあ、それが私の仕事だから。でも、そうやって素直に喜んでもらえると悪い気はしないわ。冷める前に食べちゃって」



ユウトがスープを一口飲むと、口の中に広がる優しい味わいに、思わず笑みがこぼれた。


「美味しい……これ、すごく落ち着く味ですね」


その言葉に、ライラは満足そうに頷いた。


「ありがとう。これくらいはら、ユウトにも作れるわよ?」


「いやいや、俺には無理ですよ……料理って難しそうですし」


「ふふ、意外とやってみると楽しいかもよ?」


ライラの冗談交じりの言葉に、ユウトは苦笑しながらスープを飲んだ。




「ねえ、ライラ。このパン、今日の新作?」


ルティナがパンをちぎりながら尋ねると、ライラは軽く頷いた。


「ええ、少しだけ風味を変えてみたわ。どう?気に入った?」


「うん、すごく美味しい!これ、お姉ちゃんも好きでしょ?」


「ええ、とても美味しいですね。パンの香りが豊かで食欲をそそられます」


リュシアが微笑みながら言うと、ライラは満足げに目を細めた。


「ありがとう。次はさらに少し工夫してみようかしら」


「どこを工夫するんですか?これで十分美味しいのに」


ユウトが不思議そうに尋ねると、ライラは涼しげな笑みを浮かべた。


「料理に終わりなんてないのよ。どんなに美味しくても、もっといいものを目指したくなるもの」


「……ライラさん、すごいですね」


その素直な感想に、ライラは肩をすくめた。


「そんなに褒めても何も出ないわよ。でも、楽しみにしてて」



食事を終えた後、ユウトは軽く息をつきながらスプーンを置いた。


「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです」


「ふふ、そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるわ。次も期待しててね」


ライラが手を軽く振りながら厨房へ戻る後ろ姿を見送り、ユウトは楽しそうにお喋りをするリュシアとルティナを眺めていた。


「ここにいると、本当に優しい人たちばかりだな……」


そう呟きながら、ユウトはこの館の温かさを感じていた。


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