第0話:始まり
「全てお前が招いたことだ。そしてここですべてが終わり.....同時に、ここからすべてが始まる」
敵は人間に近い姿をしていた。背丈も普通、どこにでもいそうな外見だが、その目には冷酷さと底知れぬ力が宿っている。武器は持たない。
ただの素手。しかし、その存在が放つ圧迫感は、ただ立っているだけで周囲を威圧するほどだった。
ユウトは荒い息を吐きながら、それでもなお敵を睨みつける。全身には無数の傷が刻まれており、膝が崩れそうになるのを懸命に耐えている。
「そうだ.....だから、ここで俺が止める」
低く押し殺した声に、彼の決意が滲む。
「お前を.....お前だけは……!」
敵は肩をすくめ、冷ややかな笑みを浮かべた。
「その身体で、何ができるというんだ?立つのもやっとじゃないか」
ユウトは答えなかった。ただ目を閉じ、深く息を吸い込む。そして、低く呟いた。
「.....力を貸してくれ、アヴィス」
その瞬間、部屋全体が影に覆われた。床から湧き上がるように広がった闇は、月光すら飲み込む。その影はユウトの体に絡みつき、彼の輪郭を包み込むように形を変えていく。
「…黒」
その言葉が静かに響いた瞬間、影はさらに濃密になり、彼の体を包み込む。その瞳は深い漆黒へと染まり、瞳孔が闇に消えた。
「…刻」
床に広がった影が一点に集まり、形を変え始める。ユウトが手を伸ばすと、黒いが音もなく形作られ、その手に馴染むように収まった。その刃は光を吸い込むような漆黒で、空間そのものを裂きそうな冷たい輝きを放っていた。
「ほう.....」
敵は笑みを浮かべたまま、ゆっくりと一歩前に進む。その足音が重く響くたびに、瓦礫が微かに揺れる。
「先の二の舞だな。それで何ができる?」
ユウトは黙ったまま刀を構え、敵を睨みつける。
その眼差しには、もはや迷いや恐れはなかった。
ただ、鋭利な覚悟と冷たさだけがあった。
「来い」
次の瞬間、二人の姿が一瞬にして消えた。
ガキン!
鋭い音が室内に響く。空気が切り裂かれる音と、衝撃が交錯する音。
静寂の中、ただ重い音だけが室内に反響する。
第0話:始まり




