Side???
ー???sideー
ついにこの日がやってきた。
長く空席となっていた“七つの大罪”最後の一人がやっと産まれる。
これによりダンジョンでの戦いは激化するだろう。
なんせ七つの大罪が直接管理するダンジョンで得ることができるものは別格だ。
そんなことを考えながら扉を開き部屋の中央へ歩みを進める。
ダークレッドのベッドに置かれたタマゴこそ最後の大罪、怠惰。
小さな揺れと音がするようになってからそろそろ一日経つ。
タマゴに触れると確かな振動と微かに温かさが伝わってくる。
「早く産まれてこい」
彼女から託されたタマゴがまさか最後の大罪だとは。
呼び出されて行った先で知り、本当に驚いたのだ。
あの時を思い出してつい苦笑がこぼれたその時。
ビキッ
ピシッ!!
触れていたタマゴから響いた音に息を呑む。
産まれると分かってはいたが。
待ち望んでいた存在の誕生ともなると少しは緊張するようだ。
ゆっくりと。
しかし確実に広がる亀裂から目が離せない。
ピキピキッ!ピシリッ!!
一際大きな音と共に剥がれた殻。
殻のあった部分にできた小さな穴からオレンジ色の嘴が飛び出す。
ピッタリと嘴が嵌ったままタマゴが揺れる。
まるでその小さな穴から出ようとしているように。
……。
………まさかな。
まさか、その小さな穴から出ようとなんてしていないよな?
この子の種族はある程度の知能が備わった状態で産まれる。
だからそんな無謀なことはしないはずだ。
嵌った嘴をそのままにピタリと動かなくなったタマゴを見つめる。
「どうした。穴はあいたんだ、あと少しだぞ」
ピクリと反応はしたがやはり動かない。
本当にそこから出ようとしていたのか?
この子が怠惰を司るとはいえ産まれる前からこれ程とはな。
だとしたら……。
「流石にその穴からそのまま出るのは無理だ。出てきたら専用に用意してあるふかふかな寝床があるからもう少しだけ頑張れるか?」
「……」
「そこより寝心地はいいと思うぞ」
「………ぴぃ」
小さな返事の後、ゆっくりと嘴が中に引っ込んだ。
歴代ベルフェゴール達の大半が寝るのが好きだったらしいからな。
この子もきっとそうなのだろう。
コッコッと嘴で突きながら穴を広げていく。
同時にタマゴ全体に亀裂が走る。
「ピィ!」
最後というように声を上げて、ついにその子は産まれた。
紅蓮の美しい羽根。
宝石のような金色の瞳。
疲れたのかベッドに倒れこむその子に苦笑してサイドチェストに置いてあった専用寝床を取り出す。
保温性・通気性抜群で質の良い毛皮を持っており肌触りも優れている魔獣バフィウル。
その一番柔らかい腹部分の毛を使用したオーダーメイド品だ。
ちなみに同じ素材の毛布も用意している。
脱力しているその子をそっと持ち上げ寝床の上に寝かせると、鳥の姿だというのに分かるくらい顔が溶けていた。
幻獣フェニックス。
希少種でもあるそれがこの子の種族だ。
読んで下さりありがとうございます!
気づけば年単位で投稿していなかった私ですが気長にお付き合い下さると嬉しいです。
誤字等ありましたら優しく教えてくださいませ。