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カウボーイハット〈1〉
【第六話:カウボーイハット】
これはすでに、街に着いてから書いたものだ。
森林地帯を抜けて視界が拓け
斜面は石垣の段畑で、
遠くに人影、さらに遠くに街並みがある。
黒いゴシックドレスの
灰色ロングカールツインテ―ルヘアー。
このままでは挨拶をするのか迷うくらい、
ひとけがまだない。
だんだん近づいて来る距離に
緊張なのか胸元をリボンで縛られてく感じだ。
お互いが意識しあって、
すれ違う寸前。
坂下から強い風がいきなり吹いて、
彼女はスカートを押さえて
俺はその彼女のおかしな悲鳴に少し驚いた。
風で飛んだ俺の帽子を見つけ、
彼女はなぜか楽しそうに笑い出した。
「いい風吹いてるね」
つんけんしたひとなのかと思ったら、
とても気さくひとだ。