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チョコレートローズ
【第五話:チョコローズ】
昔水脈でもあったのかと思わせた
稲妻柄の筋がある緑の山々。
坂道を降りていくと稜線が
木々に隠れてきて、
今度は足元の木漏れ日を
見つけていたことに気づく。
快晴。
日の光は暑くて、影は湿っぽい。
そこにきて木漏れ日のトンネルは
案外と楽しい。
ガレージセールを、
なぜこんなところでしているのかと
近づくと、
『魔法使いのひとはこいち』だよ、と
美しいひとに穏やかに言われた。
本当に魔法使いなのかは分からないが、
カウボーイハットは売り物なのか聞いた。
ヒモの部分の金属飾りまで好みだ。
気に入ったなら、
安価でゆずってあげようと言われた。
2000シューイーズ。
本当はいくらするんだ、
このいい感じの帽子は?
なんだか木漏れ日の舞に酔ってきた。
チョコレートの匂いがする
薔薇の花をすすめられた。
一本500シューイーズ。
高いのか安いのか分からない。
とりあえず匂いと形が溶けだす前に、
宿に着きたいだけだ。