過去
■第二十六話:【過去】
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これは少し前に起こったことを
思い出して、
多少、はしょっている。
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―――――・・・
そのあとだけど、ビセラに天の審判があった。
生き残った。
そして小魔女から”白魔女”に昇格をした。
白魔女:シロマジョ→善き眷属の魔女
つまり日頃の行いがよくて、
昇格でパワーが上がるために
いったん身体ごと眠ったらしい。
近くにちょうど療養にいい温泉宿があるのを知って、
なんだか、何かに導かれてる気がする。
自分勝手かもしれないが、
頃合いを見計らって、
この記述書を見て欲しいとビセラに示した。
そして彼女は、
パーティーを組んだ夜、
君は自分から読んでくれ、って
少し私に記述書見せたんだよ、と
言われて、
驚いていると、
だからパーティー組もうと思ったし、
なんだったら君、
アミノっていういいなずけのこと少し語ったよ、と
続けられ、
唖然としてしまった。
誰にも言うつもりはなかったのに。
ビセラはゆっくりと吟味するように、
記述書の最初から最新更新までを
読んでくれた。
「君は物書きの才能を嫉妬されたひと。
それを誤魔化すために里が勇者候補にした。
だから、結羽の検診が必要だった。
そして私はアリアスの姪として、
君を選び肩を並べたいと思った。
だからパーティーに誘われて、嬉しかった。
君に兄やオジの影をみて、
正直、自分らしくあって好いてもらおうと
思ったんだよ。
今、君とのパーティーを解散かどうか、
君に決めてもらいたいと思っている。
それくらいには、君に惚れてる。
君だったら別にいいやとか、
ささげてもいいかも、って思ってたからね。
ただ、アミノさん・・・
その件について、言いたいことがある」
しばらくの間があって、
ビセラは細く少し長く息を吐いた。
「アミノさんを、許してあげてよ。
君の女になれなかった、アミノさんを。
その件で追悼か供養をしてあげて。
そして、君、自分のことも許してあげて。
アミノさんを許す自分を、許してあげてよ。
パーティー解散かどうか、自分で決めて。
私、アミノさんに恥じたくない。
君を好いている者として・・・」
彼女は「着替えて来る」と言って、部屋を出た。
多分、温泉で身体を癒してくるのだろうから
ここ四つの温泉は一日に一種分しか
入浴できない決まりになっているので、
しばらく療養予定のビセラは、
おそらく、四日間は一緒にいてくれる。
俺に残された時間は、
長いのか短いのか分からない。
扉が閉まる音が
なぜかいつもの音癖と
変わらなく聞こえて、
それが妙に印象的だった。




