1話ずつ別のバトルが始まっていく話
「ようやく、決着をつけることができるな」
「この日を何度待ち望んだことか……亮!」
「あぁ、こんな神聖な戦いに無粋な真似はしたくねぇ、お前ら、手を出すなよ!」
「で、っでもアニキィ、今回の仕事は……」
「……すまねぇなタク、これは譲れねぇんだ、男と男の、約束、だからな」
「でもっ……いや、分かりましたぜ、アニキ、ご武運を!」
「……別れの挨拶は、終わったようだな」
「あぁ、ま、たった数時間の別れの、だけどな?」
2人の口元に大きく歪んだ、だが隠しきれない喜びを表す唇があった。
現在地はとある大規模とは言えない小規模から中規模ほどの港、その海が近くにある貿易物の受け渡しが行われ、その貨物であるコンテナが積み上げられ、周囲からは死角となった場所にいる。
普段は誰も寄り付かない、そしてそんな場所にいま、2人の男が立っていた。
1人は先程2人の男にアニキと呼ばれていた金髪で白いスーツを身にまとったもの、
1人は30cmはあろうという歪な形をしたナイフ、それを右手で持ち、黒色のカードを全身に貼り付けた目元も分からないような、闇に紛れてしまえば二度と見つからなさそうなもの。
2人は動かない。
まるでこの状況をより味わうために、料理を食べる前に匂いを嗅ぐように。
今まで待ち望んでいたことが起こる喜びに、自身が飲み込まれないために落ち着かせるように。
2人は動かない。
足先一つ、指先一つ、体の芯も、口も、目も!
風が吹いているのに、髪先ひとつさえ、動かないでいるような感覚に襲われる。
そのいつまでも続くようで、驚くほど簡単に崩れるその均衡が、開戦の狼煙を上げたのはたった数滴の水しぶき、
一際大きな波、それが陸のコンクリートにあたり、それが2人の目の前まで水滴を飛ばす。
そして
それが
地面と
触れた。
──────ギャグ─────
その時に打ち上げられた1匹だろうか、小魚が1匹、打ち上げられ……たと思った瞬間にイルカが海から飛び出してくる。
そしてその尻尾には千匹の鮫が無くなった頭から血を吹き出しながらスクリューのように回転していた。
やがてそのイルカは大きな鮫へと進化する。
それは悪魔か魔王か、額に白く光る歪な紋様を浮かび上がらせ、魂の奥まで揺さぶりをかけてくるような不快な鳴き声を叫ぶその怪物は、まるで宇宙をかける彗星の如き熱さと冷たさを持ち合わせるまさインフェルノ、見たものを一瞬にして虜にするまさにボディービルダーの如き肉体美。
新たなる扉を開いてしまいそうなその鮫を見てしまったあなた方はSANチェック、成功で20d100、失敗で100d100を振ってください。
あなたは発狂してしまい、叫び声を上げます、その声を聞いたのかその鮫は小魚からこちらの方へと頭を動かし……その頭を消滅させられる。
消滅させた事の主はたった今空から舞い降りたピンクのドレスと100本の先にハートがついた杖をもつ虹色の触手生物。
ただそのステッキから幾何学模様を浮かび上がらせ、炎や氷を飛ばし、鮫を塵も残さないように戦闘している様はまるで天から舞い降りた救世主。
まさに太陽ここにあり、といったところであろう。
ところで君はこんな言葉を聞いたことはあるだろうか。
深淵をのぞく時、深淵もまた、こちらを見ているのだと。
その声が耳に届いた瞬間、目の前に深く、何一つ先が見えない闇が空間を割いて来たように現れる。
そこから現れたのは頭部を無限の顔を彷彿とさせる、だが何も見えないような矛盾を抱えたもの。
全身には男のようでも女のようでもあり、人間のような、また別の生き物のような、違和感しか持つことの出来ない生物が這い出てくる。
そしてそれは自身に色を纏わせ、不定形だったその肉体を型にはめ込むように形どっていく。
現れたのは、……トランプだった。
……ストレス貯まってんのかな、俺。
だれか心配してちょーだい。