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007 不可逆のレベルダウン

「つまり、ユキムラ。お前の「堕落<フォーリンダウン>」は、自分の近くにいる人間のレベルを、自分のレベル、つまりレベル1まで引き下げることができる……ってことなんだな?」


「……はい。そうです」


 リョウの問いかけに、ユキムラは申し訳なさそうに答えた。

 モニカは、自分の身体に起きたレベル変動にショックを受けて気絶してしまったようだ。


 無理もない。天才のモニカでさえもレベル200に到達するまでに、10年近くかけている。それが一瞬でなかったことになったのだ。気絶ぐらい当然するだろう。


「一応、聞かせてくれ。その下がったレベルはもとに戻ったりしないのか?」

「……しません。今までそんなことは一度もありませんでした」

「……そうか。一からやり直しってことなのか……」


 リョウが小さくつぶやくと、ユキムラは頭を地面に激しくこすりつけながら大声で謝った。


「ごめんなさい! 生きててごめんなさい! 存在してごめんなさい!!」

「いや、やっちまったことは仕方ねえよ。俺らもお前の能力をきちんと聞いてなかったのが悪いんだ」

「ごめんなさい! 酷い能力でごめんなさい!! 汚い声で叫んでごめんなさい!!」

「いや、だから、もう謝んなくていいぞ? むしろこれからどうすればいいか考えないと……」

「ごめんなさい!! 謝りすぎてごめんなさい!! 口、臭くてごめんなさい!!」

「際限ないな……。最後のは今回のこととは関係なく気をつけろよ……」


 ユキムラにはひどい謝り(くせ)があるようだ。一度謝り始めると、しばらく立ち直れないらしい。ユキムラは頭を地面につけたまま動かなくなってしまった。


「ん……」


 リョウとユキムラの声で、モニカが目を覚ましたようだ。


「リョウ……。私、ひどい夢を見たみたい。自分のレベルが1に戻るっていうひどい夢よ。疲れてるのかしら」


 寝ぼけた声で、目は虚ろである。いっそ寝たままの方が幸せだったかもしれない。


「モニカさん、申し訳ないけど、それは夢じゃない。あなたのレベルは今初期値だ」

「……まだ夢の中みたいね。お休みなさい……」

「頼む。そろそろ正気に戻ってくれ……」


 リョウは、再び現実逃避をしようとするモニカの肩をたたいた。

 渋々、といった感じでモニカは身体を起こした。


「……何が起きたか、説明してもらえるかしら」

「いいですけど、覚悟してくださいよ? 全部聞いても自殺とかしないでくださいよ?」

「ふん。するわけないじゃない、自殺なんてそんなの弱者がすることよ」


 呆れたような顔をするモニカ。ジト目である。

 リョウは恐る恐る状況を説明した。


 すべてを説明し終わった時……


「なるほど、分かったわ」

「お、おう。案外冷静ですね? 流石、モニカさん」


 もっと取り乱すかと思っていたが、モニカは淡々と状況を受け入れように見えた。流石に一国を背負う聖剣士の精神力は相当なものだとリョウは内心感心した。


「じゃあリョウ、あそこの剣、拾ってくれない?」

「ええ、どうぞ」

「ありがと。じゃあサヨナラ」


 そう言うとモニカは虚ろな目のまま、剣を首筋に当てようとした。


 全然立ち直れてなかった。


「待て待て待て!! 早まるな!!」

「やめて!! 死なせてよ!! 力のない私なんて生きる意味無いもの!!」


 リョウがモニカの身体を抑え込む。モニカはいやいやと抵抗するが、その力は依然とくらべものにならないくらい弱弱しく、かつての聖剣士としての力は完全に失われていることが実感できた。


「自殺なんて弱者がすることじゃなかったのかよ!!」

「だって、今の私は弱者じゃない!! レベル1じゃない!!」


 身体全部を使ってじたばたするモニカを必死で引き留める。何か色々柔らかかったりいい匂いがしたりした。リョウは、邪念を振り払うために叫んだ。


「ええい、鬱陶(うっとう)しい!! モニカ!! 落ち着け!!」


 リョウはモニカの首筋にチョップを繰り出した。以前のモニカなら蚊がさした程度の衝撃だったろうが、レベル80に到達しているリョウの一撃は、今の彼女にとっては結構なダメージだった。モニカはまたしてもガクンとそのまま気を失った。


「こうなったら仕方ないな……おい、ユキムラ! いつまで頭下げてんだ!!」

「ご、ごめんなさい……」


 リョウとモニカのやり取りの最中も、ユキムラは頭を下げ続けていたようだ。

 リョウの声にびくっと身体を起こした。


「ともかく、状況を王に報告しないといけねえ。お前も王都まで来い。説明責任だ」

「へ、へい……承知しやした……」


 ビビりすぎて、ユキムラは妙な口調になっていた。

 気絶したモニカを背負って、リョウは一番近くの集落を目指して歩き始めた。

 ユキムラはおどおどとそのあとをついていった。


「どーすりゃいいんだ……」


 リョウは悲し気なつぶやきは、空気の中に混ざっていった。

ダレ場、と言うかあんあまり話進まなくて申し訳ないです。次回は王都「エイナル」の王様が登場します。

ファンタジーってボケにくいですね……。難しい……。


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